)” の例文
おおせの通り掃除口の検査をしましたら、意外にも重大な手がかりを得ました。先ず第一に糞壺の中に、いた物が沢山ありました」
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「どうだかね。ああくようじゃ」と三沢は答えた。その表情を見ると気の毒というよりむしろ心配そうなある物にとらえられていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そしてすべての過去にのような不快を感じて箱ごと台所に持って行くとつやに命じて裏庭でその全部を焼き捨てさせてしまった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
北川氏は北川氏で、その野本氏の気まずさが反映して、彼のうちの敷居をまたぐとから、もうき気を催す程に不快を感じていた。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼は両眼りょうがんをカッと見開き、この一見意味のない台辞せりふきちらしていたがやがてブルブルと身震みぶるいをすると、パッと身をひるがえして駈け出した。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
食物しょくもつの消化時間は大抵たいていしってるだろう、今吐剤とざいのんでも無益だ。河豚の毒がかれるならはいて見ろといったら、三刀も医者の事だからわかって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「バレツトオ」の舞には玉の如きをさなき娘達打連れて踊りぬ。われはその美しさを見るにつけて、血をくおもひをなしつゝ、悄然として場を出でたり。
花はその重みで茎を曲げ血を半ば滑り流して、またゆらりと立ち直った。それを見ながら宇治は耳の底がうずき、そしてきそうな衝動が胸から咽喉のどを走った。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
枕元に、洗面器と水とが置いてあるのは、いたものらしい。身体に静かな風が当るので、妙に思って見ると、光丸が団扇うちわを持って、あおいでいるのだった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ドタリと音を立てて草の上にたおれると、すぐに両手を突張って起き上ろうとしたが、そのまま全身をじらしてゲロゲロ、ゲロゲロと白いものをき始めた。
童貞 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「頭が重うて、………き気がして、………手足がだるうて、………何や、重い病気になる前兆みたいな」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
邦、因って血をいて死に、同日富人も稗を夢み病死した(『還冤記』)。桃はもと鬼がいたおそるるところだが、この張稗の鬼は桃を怖れず、桃枝もて人を殺す。
十分いて胸がなおったからせっせと新銭座の宅へ帰ってまいりましたので、女房はびっくりいたしました。
梅若七兵衛 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
高熱が続いて、始めはきけにも悩まされた。けれども意識は割とすれば明瞭であった、自分が「仲屋」の奥に寝かされていることも、人の出入りもよくわかった。
七日七夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
慟哭どうこく数日、ついに血をくに至った。その有様を見ながら、李陵はしだいに暗く沈んだ気持になっていった。彼はもちろん蘇武の慟哭の真摯しんしさを疑うものではない。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
村役人が租税そぜいを催促に行って、なにか彼の感情を害すようなことを言ったので、程はあざむいてかの薬を飲ませると、役人は帰る途中から俄かに頭が痛んで血をいた。
何といういやな幇間でしょう。平次はき気を催すような心持で、眼顔で向うへ追いやりました。
食事をせずに行くと、一回目にはいた。二回目は嘔かなかった。しかし三回目には嘔いた。
たとえ操業をしていなくても、罐詰工場にはカニの臭いがしみついていて、それが鼻につくと波子はすぐき気を催した。工場に近寄らないで波子は家でぶらぶらしていた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
いわばつかえたものをきだしたり、下痢してしまったような、サッパリとしたこころもちになる。医者でいうカタルシス(陶瀉)を起して、こころが、純化され、浄化されると考えるのである。
美学入門 (新字新仮名) / 中井正一(著)
このうちとどまりて憂目うきめを見るは、三人みたり婦女おんな厄介やっかい盲人めしいとのみ。婦女等おんなたちは船の動くととも船暈せんうんおこして、かつき、かつうめき、正体無く領伏ひれふしたる髪のみだれ汚穢けがれものまみらして、半死半生の間に苦悶せり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両方ともきたくなるやうないやな匂ひを持つてゐます。
「では、それがそのお蝶さんの身体から出た胎盤だったのですか」と、私は、何だかきそうな気持になってたずねた。
狂女と犬 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
だが、職業柄、巡査丈けは、流石さすがにぼんやりしている訳にも行かず、を我慢しながら、兎も角も死体に近寄って、無惨な切口などを取調べた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あごの奥から締めつけられて、やむをえない性質たち唾液つばきが流れ出す。それにいざなわれるままにしておくと、きたくなる。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と二重あごをシャクリながらいているが、そのまま手足を長々と投出しながらスヤスヤとねむっている。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
死骸のこの緑色にひきつけられて、じっと見つめていた人々は、やがてなんとなくき気をもよおしてきた。熱帯にすむ青いとかげのことを思い出したからであろう。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
葉子はしかし結句けっくそれをいい事にして、自分の思いにふけりながら二人に続いた。しばらく歩きなれてみると、運動ができたためか、だんだんは感ぜぬようになった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
俺は酒のせいかきたい気持を一所懸命に押えていたのだ。それから次の電車に乗ってお前と会ったな。お前にあの時外套をやったのは、お前が寒そうにしていたからだけじゃない。
(新字新仮名) / 梅崎春生(著)
菊千代は馬から下りると、足がふらふらし、きけを感じたので、そのまま枯草の上へ腰をおろした……和島や師範がしきりにびを云い、そこへまた遅れた学友たちが乗りつけた。
菊千代抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その晩は非常に酔って帰って来て、前後不覚のていで門の外に倒れているのを、宿の主人が見つけて介抱して、ともかくも二階へ連れ込まれましたが、寝床へはいると無暗にきました。
あまりき目が現れない、こいさんはずっとうなりつづけに呻って身をもだえておられて、昨日から全然物が食べられず、変などすぐろい青いものをいてばかりおられ、こう苦しくてはとても助からない
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すなわち地に伏し血をいて死す。
食わせられた。きそうになるのを、むりにみこんだ。死んではならないと思ったのでね……
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
父が変な黄色いものもいた時、私はかつて先生と奥さんから聞かされた危険を思い出した。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それと一緒に、頭の中がシインと痛くなってきそうになりましたので、ひたいを押えようとしましたが、両手を押えられているので何も出来ません。その時に母は病気じゃない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
葉子ははもう感じてはいなかったが、胸もとが妙にしめつけられるように苦しいので、急いでボアをかいやってゆかの上に捨てたまま、投げるように長椅子ながいすに倒れかかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
信乃は喉へ固い物が詰ったように感じ、睡をのみこもうとして、きそうになった。
めおと蝶 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
山口屋の主人は半串ほど食うと、俄に胸が悪くなってき出してしまった。
魚妖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
色のせた古い型の長衣を着ていて、いつも口をモグモグさせては、ときどきチュッと音をさせて、真黒い唾をいた。それは多分、よほどみ煙草の好きな男なのだろう。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
激しいトレイニングの後できたくなる時のような疲れを感じて、窓の外の太陽の光が妙にきな臭くて、起き上ろうとすると眼がクラクラして堪りませんので、生まれて初めて終日
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
真鍮は真鍮と悟ったとき、われらは制服を捨てて赤裸まるはだかのまま世の中へ飛び出した。子規は血をいて新聞屋となる、余は尻を端折はしょって西国さいこく出奔しゅっぽんする。御互の世は御互に物騒ぶっそうになった。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
又四郎はそくばくの物を包んで置いて、きたいような気持でその家を出た。
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
こめかみがじんじんと痛み出して、泣きつかれのあとに似た不愉快な睡気ねむけの中に、胸をついてさえ催して来た。葉子はあわててあたりを見回したが、もうそこいらには散歩の人足ひとあしも絶えていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
いつも浮かない顔をしていて、これまでついぞないことだが皿小鉢をったり、腹ぐあいが悪いといって四五日も黙って寝ていたり、また夜中にお勝手でこうとして、いやな声をだしていたりした。
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)