マイル)” の例文
速力も一時間二百マイルくらい出るので、たとえば水底をくぐってわずかの間に太平洋横断ができるという、まことに恐るべき発明であった。
危し‼ 潜水艦の秘密 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
谷は東西半マイル、長さ十四哩、隅から隅までうろついたところが、足の疲れるおそれはあるまい、雪の日の外、室に拘禁されぬかぎり
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
私たちの耳をろうするのは、灯のつきそめた裏街をいたずらに震撼する、無意味な、そして愉快に執拗な金切り声の何マイルかにすぎない。
「チャリング・クロスの周囲三マイル以内の地にのみ、文学は在り得る。サモアは健康地かも知れないが、創作には適さない所らしい。」
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
英国政府が二十マイルや三十哩の土地を失って、そこへ城を建てさせて置いたところが別段威厳を損するというような事はもちろんない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「それが殆んど四マイルも向うの、ウ※トクロス・ブラウのずつと上なんでございますよ。そして、ずつと沼地や荒地だらけの道です。」
谷の周囲は一マイルの四分の一位である。四方には景色の好い丘陵がある。市に住んでゐる人に、誰一人敢て丘陵のいたゞきに登つたものが無い。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
汽車の窓からも、その中の最大(といっても長さは二マイル半位しかないが)のホイットニイ氷河が、銀流しに光っているのが見える。
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
してゐる。しかし僕はら々々するのだ。それはロツクの目から見れば、或は一歩の差かも知れない。けれども僕には十マイルも違ふのだ。
河童 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おまけに舶来の絹巻線きぬまきせんが気に入らないと云って、自分で器械を作って絹巻線を製作しては切りて、作っては切り棄てる事二万マイル
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
或日ガスケル兄弟は商用で三十マイル計り離れた市へ出掛けていったが、その帰途に兄は進行中の列車から墜落して惨死してしまったのさ。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
踊り場からようやく初めて二マイルも踊子を連れて来て、与えた花束の大きさを較べられては、甲谷とて発奮せずにはおられないのだ。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
青年は泳ぎが非常にまずくて、殆ど腰ほどの深さのところばかりに立っているのに、彼女は五マイル遠泳位はやれそうな腕前なのでしたから。
(新字新仮名) / 渡辺温(著)
第一へばってからだって今になおる、今になおるとだけ考えて林町のあのひどいのべマイル数を上ったり下ったりしていたのだから。
と毒づいてあったので、剛毅な善兵衛も色を失った、消印を見ると三十マイルばかり隔た□□市から速達便で郵送されたことが判った。
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
くだるわ、/\、/\。ながれは何處どこまでつてもきないのかしら?『いままでにわたしいくマイルちたかしら?』とあいちやんは聲高こわだかひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
なるが、このうちビッグ・ベン線は延長四分の一マイルに過ぎず、軌条レールは発掘されたる石炭の山のほとりにて尽き、途中に何ものをも見ず。
この人煙皆無の地に——最も近き土人部落すらも、九百マイルの重畳たる密林の幾峻嶮を越えたビイサウの町のみであるこの人跡未踏の地に
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
空の高さ断崖だんがいの大きさ地球の重さがある。モネの海はその地平線まで何マイルかある。本当に船を走らす事が出来るだけの空間を持っている。
油絵新技法 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
流程二千三百マイル、広々と流れる大河のさまは大陸的とでも云うのであろう。一行は汽船へ乗り込んだ。セミパラチンスクまで行くのである。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さすれば自分は救助船に載せられて、北へも南へも僅か三マイルほどしかない、手に取るやうに見えるむかうの岸にあがる事が出来やう。
黄昏の地中海 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
全長二十一マイル三十五のベンゲット道路が開通したのは、香港丸がマニラへ入港してから一年四ヶ月目の明治三十八年一月二十九日であった。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
二千六百マイルもアラスカの奥へ入りこんでしまえば、六カ月のシイズンが終るまではどんなことがあってもアメリカへ帰れない。
南部の鼻曲り (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そしてこの城の四方に、何マイルとなくひろがる黒い松林が孤巌こがんを取巻く黒い海のようにごうごうと吠えているのを彼等はきいた。
小山を三つ越えて大河を一つわたりて二十マイル先の夜鴉よがらすの城に居る。夜鴉の城とは名からして不吉であると、ウィリアムは時々考える事がある。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
遺骸むくろを奉じて埠頭ふとうを去る三マイルなるパセパンシャンの丘巓きゅうてんに仮の野辺送りをし、日本の在留僧釈梅仙を請じてねんごろに読経供養し
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
だから南北約六マイル有料道路ペイ・ロードは独立した一個の私線路であって、十国口と箱根口との両端に二ヶ所の停車場スタンドがあるだけで枝道一本ついてない。
白妖 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
僅か角砂糖かくざとうほどのものを崩壊することによって生ずるエネルギーで、わが国の全艦隊を天空てんくうマイルの上へまで吹き上げることが出来るのである。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで食事を一食八銭にきりつめ、そのためには非常に遠い食堂へ行き、通学に四マイル歩き、そうして貯金を始めたのである。
勉強記 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あの地平線の所までは、確かに数マイルの道のりがある。本当を云えば、地平線の遙か手前に、海が見える筈ではないだろうか。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ヨブとこの三人はその社会的地位、その学識、その信仰(霊的経験)を等しくしていた。彼らは沙漠の海数百マイルを遠しとせずして来たのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
オリノコ河に接する地方の奥地では、どちらへ数百マイル行っても、一軒の小屋もなく、一匹の動物の足跡も見られない。
同機は最高速力毎時三百五十マイル、航続時間二十五時間の優秀機で、本日未明、金華山沖を東に向って飛行する同機を認めたとの報あるも、真偽不明……
木曾街道きそかいどう奈良井ならいの駅は、中央線起点、飯田町いいだまちより一五八マイル二、海抜三二〇〇尺、と言い出すより、膝栗毛ひざくりげを思う方が手っ取り早く行旅の情を催させる。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが時偶々たまたまクリスマスの季節にあたったために、手紙の配達がおくれ、僅か四百マイルを隔てたスミス博士の手に入るまでに、十日以上の日子にっしを要した。
小さな汽車が、あえぎながらやっと山のいただきから、また数マイルの谷間へ下りた所に、鉱山街、箇旧コチュウが横たわっている。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
コロムボに入港する晩僕は船長の許しを得て船橋ブリツヂに立つて居た。十マイルさきから見えたコロムボ市街の灯火は美しかつた。月が照りながら涼しい雨が降つて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
政府は近々きん/\小包郵便の料金をへるさうだが、一八四五年米国政府が、普通郵便物の料金を三百マイルまでは五セント、それ以上は十仙に規則を変へた事があつた。
船は金華山から百二十五マイルの太平洋を走っている。洋上一面の濃霧で、三、四町先も見えないくらいだ。展望がきかないから鯨はおろかかもめさえ見えないのだ。
海豚と河豚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
それには気球を用いてみたところが、上昇し得る距離は四千マイルに比してあまりに小さい。しからばどうしたらよいか。彼の想像力はまさに月に及んだのである。
科学的研究と探偵小説 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
それからおよそ七十マイルばかり疾走して、全く南洋らしいジャングルや、森林の中を行くとき、私は娘にいた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
私はある友人の紹介で、貴族エル何某なにがしの別荘へ避暑かたがた遊びに行った事がある、その別荘は倫敦ロンドンの街から九マイルばかりはなれた所にあるが、中々手広い立派な邸宅やしき
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一人は楽器を所有し、他の一人は「文明から八百マイルも遠ざかっている無人の地への移住の途中であり」
マイル離れても其響が遠くで雷の鳴るように聞える。瀑布たきの処には始終虹が吹いているから頗る奇観である。虹の外にも此近辺には見るものが多い。瀑布には四面ある。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
マイル向うとも思われる地点に着陸すると、ハッピイはほっとしたように僕のコットに腰をおろし
それにただ十六マイルだというつぎの町が、まだ一向いっこう見えても来なければ、けはいもしませんでした。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
若しダンテに大きいところがあるとすれば、スヰデンボルグが三百マイル遠方から自分の住地の火事を見とめたと同前、その肉を滿足させた仕方が、抱擁以外にあつたことだ
神秘的半獣主義 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
立花浩一と呼ばるる自分は、今から二十幾年前に、此盛岡と十数マイルを隔てた或る寒村に生れた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お前はまだヱネチアをること数マイルの議官アンドレア・バルヂピエロの別荘にゐるのではないかと云ふものがあつたら、己は何よりも奇怪なことばとしてそれを聞いただらう。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
落下傘は屍体のすぐ傍にあったと言うのではないのですか? 一体あの時、機の速力は時速百二十マイル位でした。だから、そうです、秒速にすれば一町ぐらいに当るのです。
旅客機事件 (新字新仮名) / 大庭武年(著)