呻吟うめ)” の例文
なんだか二階で人の呻吟うめくような声をきいたと思った。するとトントンと二階から一階へ降りて行く人の跫音あしおとがかすかに聴えてきた。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それ三聲みこゑめにると、くやうな、うらむやうな、呻吟うめくやうな、くるしもがくかとおも意味いみあきらかにこもつてて、あたらしくまたみゝつんざく……
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『モウ呻吟うめかんでもヨカ。御苦労御苦労。こちの方がヨッポド済まん。ところで済まんついでにチョット待っとれ。骨休めするケニ』
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
今度の驚愕おどろきは前の如きものではなく、その大きな眼を一杯に見開き、唇は痙攣けいれんして引きつり、低い呻吟うめくような声が咽喉のどから押し出されました。
鉄の処女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
お国はまだ何やら、寝ぼけ声で話しかけたが、後は呻吟うめくように細い声が聞えて、じきにウトウトと眠りにちてしまう。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
所が、しきりに子供が泣いて居る。それも病體ではあるしよほど久しく泣いてゐたものと見えその聲もすつかり勞れ切つて呻吟うめくやうになつてゐた。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
彼は独居の部屋に閉じ籠り、頭を抱えて身悶みもだえして呻吟うめくより外なかった。それでいながら経巻や仏像の影を見ることには前より一層厭嫌の感情を増した。
宝永噴火 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かなたにては暴虐しひたげ呻吟うめく處と再び合ふにいたるまで水底みなそこ次第に深くなりまさるを汝信ずべし 一三〇—一三二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
殆ど病人の呻吟うめき声かとも思われ、爾して続き方も以前ほど長くなく少しの暇に止んで了った、余の見当に由ると何うしても今の声は余の居間で発した者だ
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
さて男は其処此処そここゝと父を探して歩いた。やうやく岡の蔭の熊笹の中に呻吟うめき倒れて居るところを尋ね当てゝ、肩に掛けて番小屋迄連れ帰つて見ると、手当も何も届かない程の深傷ふかで
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
といって、それがそうならないからこそ、もろともに悩み呻吟うめくのではないか——
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
呻吟うめき苦しみながら、のた打ちまわって浮浪しようと思う——恐らく、そのような女性の片鱗をさえ仰ぐことが出来ずに何処かの野末か陋巷に野垂死をすることになるだろう——そうなったら
浮浪漫語 (新字新仮名) / 辻潤(著)
マーキュ (笑って)なんと、かう洒落しゃれのめしてゐるはうが、れたの、れたのと呻吟うめいてゐるよりはましであらうが? 今日けふこそは、つッともう人好ひとずきのする立派りっぱなロミオぢゃ、今日けふこそは正面しゃうめん
平岡は呻吟うめく様な声を出した。二人は漸く顔を見合せた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それが三声みこえめになると、泣くような、怨むような、呻吟うめくような、くるしもがくかと思う意味があきらかにこもって来て、あたらしくまた耳をつんざく……
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私とツン州と二人で感心して見ております前で、約束通りにウンウン呻吟うめきよる大惣の脈を取って、念入りに診察しますと病人の枕元で談判を初めました。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お銀が琵琶びわの葉影の蒼々した部屋で、呻吟うめき苦しんでいると、正一はその側へ行って、母親の手につかまった。その日お銀は朝から少しずつ産気づいて来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
次のボルジヤの民の呻吟うめく聲、あらき氣息いき、またたなごゝろにて身をうつ音きこえぬ 一〇三—一〇五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
私は悲しみのどん底に呻吟うめきながら、部屋の中をのたうち廻りました。
魂の喘ぎ (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
平岡は呻吟うめく様な声をした。二人ふたりは漸くかほを見合せた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
別の声が呻吟うめいた。
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
片耳ざくり、行って御覧ごろうじろ、鹿が角を折ったように片一方まるで形なしだ。呻吟うめくのはそのせいさ、そのせいであの通りだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
葉子は息も絶えそうに呻吟うめいていたが、おもて背向そむけていた庸三が身をひいた時には、すでに創口きずぐちが消毒されていた。やがて沃度ヨードホルムのにおいがして、ガアゼが当てられた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『ええ。要らん事云うな。大惣……黙って呻吟うめきよれ』
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
白墨狂士は何とかしけむ、そのままどたどたと足を挙げて、苦痛に堪えざる身悶みもだえして、呻吟うめく声ゆるがごとし。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「皆さん御苦労でしたね。」と、その口から呻吟うめくような声も洩れた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
……キャッと叫ぶ、ヒイと泣く、それ、貫かれた、えぐられた……ウ、ウ、ウーンと、引入れられそうに呻吟うめく。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一度でも忘れると、たなそこをめぐらさず、田地田畠、陸は水になる、沼になる、ふちになる。幾万、何千の人の生命いのち——それを思うと死ぬるも死切れぬと、呻吟うめいてもがく。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にぎやかに二階屋にかいやの揃った中の、一番むねの高い家へ入ったですが、私はただかすか呻吟うめいていたばかり。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またどうも呻吟うめくのが、魘されるのとは様子が違って、くるしもがくといった調子だ……さ、その同一おなじ苦み掙くというにも、種々いろいろありますが、訳は分らず、しかもその苦悩くるしみが容易じゃない。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同一おなじ処でうごめく処へ、宰八の声が聞えたので、救助たすけを呼ぶさえ呻吟うめいたのであった。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三百にんばかり、山手やまてから黒煙くろけぶりげて、羽蟻はありのやうに渦卷うづまいてた、黒人くろんぼやり石突いしづきで、はまたふれて、呻吟うめなや一人々々ひとり/\が、どうはらこし、コツ/\とつゝかれて、生死いきしにためされながら
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
枕頭まくらもとで、ウーンと呻吟うめくのが響き出した、その声が、何とも言われぬ……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山手やまてから黒煙くろけぶりを揚げて、羽蟻はありのやうに渦巻いて来た、黒人くろんぼやり石突いしづきで、浜に倒れて、呻吟うめき悩む一人々々が、胴、腹、腰、背、コツ/\とつつかれて、生死いきしにためされながら、抵抗てむかいも成らずはだかにされて
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「何だね、どうしたのさ、あれ大変呻吟うめくじゃあないか。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこか呻吟うめくような声がするよ。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)