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呆気
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あつけ
ふりがな文庫
“
呆気
(
あつけ
)” の例文
旧字:
呆氣
夜中の
喚
(
わめ
)
き
罵
(
のゝし
)
る声に驚いて雨戸まで開けた近所の人達は朝には肩を並べて牛を引いて
田圃
(
たんぼ
)
に出て行く私共父子を見て
呆気
(
あつけ
)
にとられた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
これにや一座も、
呆気
(
あつけ
)
にとられた。——とられた筈さ。そこにゐた
手合
(
てあひ
)
にや、
遊扇
(
いうせん
)
にしろ、
蝶兵衛
(
てふべゑ
)
にしろ、英語の英の字もわかりやしない。
南瓜
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それもドブンと不意に川に
陥
(
はま
)
つたやうに其話に移るので、聴手は一寸
呆気
(
あつけ
)
に取られてゐる中に、話は
一蹶
(
いつけつ
)
して向岸に躍り上つてしまふ事がある。
露都雑記
(新字旧仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
と仕打は
呆気
(
あつけ
)
に取られたやうに言つた。そして精々大石の友達ででもあるらしく、真面目に苦り切つた顔をしたが、幾らか
面附
(
つらつき
)
が歪んで見えた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
読み終つて
呆気
(
あつけ
)
に取られたやうな気がした。矢張空想だつた。しかもわるくこね廻した空想だつた。せめて、もうすこし素直であつたらばと思つた。
或新年の小説評
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
▼ もっと見る
呆気
(
あつけ
)
にとられて裸体のまゝ小屋の外に出てみると、赤黒く濁つた水がほんの僅かの間に全く川原を浸して流れて居る。
渓をおもふ
(新字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
ですから、ただ
呆気
(
あつけ
)
にとられまして、ただソーツと、父の
貌
(
かほ
)
を見上げましたが、父は嫌といふなら、いつてみよといはぬばかりの、意気込みでした。
こわれ指環
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
と
滔々
(
たう/\
)
と縁日の口上口調で
饒舌
(
しやべ
)
り立てる大気焔に政治家君も文学者君も
呆気
(
あつけ
)
に取られて眼ばかりパチクリさせてゐた。
貧書生
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
お
糸
(
いと
)
は
縮緬
(
ちりめん
)
の
風呂敷
(
ふろしき
)
につゝんだ
菓子折
(
くわしをり
)
を出した。長吉は
呆気
(
あつけ
)
に取られたさまで
物
(
もの
)
も
云
(
い
)
はずにお
糸
(
いと
)
の
姿
(
すがた
)
を
目戍
(
みまも
)
つてゐる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
車夫は
呆気
(
あつけ
)
に取られて、何かぶつ/\呟いて居た。私が金沢のものだなどと嘘を言つたのを変に思つたのであらう。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
呆気
(
あつけ
)
ない別れが
其
(
その
)
時は当然の事の様に想はれて格別何の感じも無かつたが、
後
(
あと
)
になつて考へると何だか淋しい。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
私
(
わし
)
は
唯
(
たゞ
)
呆気
(
あつけ
)
に
取
(
と
)
られて
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
ると、
爪立
(
つまだて
)
をして
伸上
(
のびあが
)
り、
手
(
て
)
をしなやかに
空
(
そら
)
ざまにして、二三
度
(
ど
)
鬣
(
たてがみ
)
を
撫
(
な
)
でたが。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
母は恥かしい父を子供たちに見せたくないやうに、
呆気
(
あつけ
)
にとられてゐる皆を促して、泣き泣き家へ帰つた。帰つてから部屋の隅で母はいつまでも
泣嗚咽
(
なきじやく
)
つてゐた。
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
友は
呆気
(
あつけ
)
にとられながら、私の顔をぼんやり見詰めた。私の顔は
岩礁
(
がんしよう
)
のやうに緊張して居た。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
そこで彼女も
呆気
(
あつけ
)
にとられ、ぽかんとした顔で、寒さに歯をガチガチと打鳴らしながら
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
真言宗の坊主の印を結ぶのを極めて
疾
(
はや
)
くするやうなので、晩成先生は
呆気
(
あつけ
)
に取られて眼ばかりパチクリさせて居た。老僧は極めて徐かに軽く点頭いた。すると蔵海は晩成先生に対つて
観画談
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
ゆき子も案外自然であつた。ゆき子は激しい息づかひで、富岡の胸に顔をすりつけて来た。
呆気
(
あつけ
)
なかつたが、富岡はゆき子の顔を胸から引きはなして、ぼつてりした唇を近々に見つめた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
「よく
怪我
(
けが
)
をしないものだね。」しばらく
呆気
(
あつけ
)
にとられてゐた重役が訊いた。
手品師
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
指環の中の
金剛石
(
ダイヤモンド
)
は眼も
眩
(
くら
)
む程美しい光りを放つたかと思ふと見る
間
(
ま
)
に灰になつてしまひました。二人は
呆気
(
あつけ
)
に取られて見て
居
(
を
)
りましたがお神さんはいきなり亭主の胸に
縋
(
すが
)
り付いて泣き出しました。
金剛石
(新字旧仮名)
/
夢野久作
(著)
心持息を
逸
(
はづ
)
ませて、
呆気
(
あつけ
)
にとられてゐる四人の顔を
急
(
いそが
)
しく見巡した。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ちよいと
呆気
(
あつけ
)
にもとられましたが、丸佐の主人の前を見ると、もう一つ紙に包んだお金がちやんと出てゐるのでございます。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
紳士は一寸帽子の
鍔
(
つば
)
へ手を掛けて挨拶した。桑原氏は
呆気
(
あつけ
)
にとられてその後姿を見入つた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
呆気
(
あつけ
)
に
取
(
とら
)
れて
見
(
み
)
る/\
内
(
うち
)
に、
下
(
した
)
の
方
(
はう
)
から
縮
(
ちゞ
)
みながら、ぶくぶくと
太
(
ふと
)
つて
行
(
ゆ
)
くのは
生血
(
いきち
)
をしたゝかに
吸込
(
すひこ
)
む
所為
(
せゐ
)
で、
濁
(
にご
)
つた
黒
(
くろ
)
い
滑
(
なめ
)
らかな
肌
(
はだ
)
に
茶褐色
(
ちやかツしよく
)
の
縞
(
しま
)
をもつた、
痣胡瓜
(
いぼきうり
)
のやうな
血
(
ち
)
を
取
(
と
)
る
動物
(
どうぶつ
)
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
皆
(
みんな
)
は
呆気
(
あつけ
)
にとられて、この小さな
拗
(
す
)
ね者の後姿を見送るだけだつた。
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
タゴールも多少
呆気
(
あつけ
)
に取られたであらうと思ふ。
スケツチ
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
金花は思はず立ち上つて、この見慣れない外国人の姿へ、
呆気
(
あつけ
)
にとられた視線を投げた。客の年頃は三十五六でもあらうか。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
番頭は
呆気
(
あつけ
)
に取られて、女客の顔を見た。そしてこの女がその晩の名高い
歌手
(
うたひて
)
である事に気が
往
(
つ
)
くと、じつと眼を皿のやうに
睜
(
みは
)
つた。——で、言はれた通りに入場料だけは
倹約
(
しまつ
)
をする事にした。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
更に又下の句などを見れば、芭蕉の「調べ」を駆使するのに大自在を極めてゐたことには
呆気
(
あつけ
)
にとられてしまふ外はない。
芭蕉雑記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
皆は
呆気
(
あつけ
)
にとられて互に顔を見合はした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
南京の基督はかう云つたと思ふと、
徐
(
おもむろ
)
に紫檀の椅子を離れて、
呆気
(
あつけ
)
にとられた金花の頬へ、後から優しい接吻を与へた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
医者は
呆気
(
あつけ
)
に取られた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
が、恐しい母の顔には
呆気
(
あつけ
)
にとられたのでございませう。ふだんは物に騒がぬ父さへ、この時だけは茫然としたなり、口も
少時
(
しばらく
)
は利かずに居りました。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それがどう思つたのか、二階の窓から顔を出した支那人の女の子を一目見ると、しばらくは
呆気
(
あつけ
)
にとられたやうに、ぼんやり立ちすくんでしまひました。
アグニの神
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
乞食は
呆気
(
あつけ
)
にとられたのか、古
湯帷子
(
ゆかた
)
の片膝を立てた儘、まじまじ相手を見守つてゐた。もうその眼にもさつきのやうに、油断のない
気色
(
けしき
)
は見えなかつた。
お富の貞操
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
婆さんは
呆気
(
あつけ
)
にとられたのでせう。
暫
(
しばら
)
くは何とも答へずに、
喘
(
あへ
)
ぐやうな声ばかり立ててゐました。が、妙子は婆さんに頓着せず、おごそかに話し続けるのです。
アグニの神
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
良秀は机の向うで半ば体を起した儘、流石に
呆気
(
あつけ
)
にとられたやうな顔をして、何やら人にはわからない事を、ぶつ/\呟いて居りました。——それも無理ではございません。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
呆気
(
あつけ
)
にとられてゐた同役は、皆互に顔を見合せながら、誰に尋ねるともなく、かう云つた。
虱
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
トルストイは
呆気
(
あつけ
)
にとられたやうに、子供たちの顔を見廻してゐた。が、昨日の山鴫が無事に見つかつた事を知ると、忽ち彼の
髯深
(
ひげぶか
)
い顔には、晴れ晴れした微笑が浮んで来た。
山鴫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
良平は一瞬間
呆気
(
あつけ
)
にとられた。
トロツコ
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
主人は
呆気
(
あつけ
)
にとられてゐる。
LOS CAPRICHOS
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“呆気”の意味
《名詞》
(多く以下の形で)驚き、呆れること。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
呆
漢検準1級
部首:⼝
7画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“呆”で始まる語句
呆
呆然
呆氣
呆痴者
呆返
呆然自失
呆痴
呆乎
呆々
呆作