口振くちぶり)” の例文
わたし公爵夫人こうしやくふじんになつたら』とあいちやんは獨語ひとりごとつて(はなは得意とくい口振くちぶりではなかつたが)『まつた厨房だいどころには胡椒こせうかないことにしやう、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
彼女は大事なものでも保存するような口振くちぶりでこう答えた。健三は彼女の所置をとがめもしない代りに、める気にもならなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼奴きゃつ何を立腹したか今に見ろと言ふアノ口振くちぶりではお紺とやらの居所でも突留たかなナニ構う者かお紺が罪人で無い事は分ッて居る彼奴きゃつそれと知らずに
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
とりよろこすがりしかば皆一同に惘果あきれはてたるばかりなり時に大岡殿申さるゝは此彦兵衞儀白状は致せしかど其口振くちぶりと云ひ人體じんていと申しうたがしく思ひ外に罪有る者牢死せしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「なんで、そない鹿児島がお嫌ひだんね。」興行師しうちはよなひで済む事なら、済ませたいやうな口振くちぶりだつた。
みんなさわぐをるばかりでは美登利みどりさんだとて面白おもしろくはあるまい、なんでもおまへものにおしよと、おんなの一むれはまつりをきに常盤座ときはざをと、いたげの口振くちぶりをかし
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
身を入れて其話を聞いてゐた智恵子は、謹慎つつましいお利代の口振くちぶりの底に、此悲しきひとの心は今猶その先夫の梅次郎を慕つてゐる事を知つた。そして無理もないと思つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と青い帽子をずぼらにかぶって、目をぎろぎろと光らせながら、憎体にくてい口振くちぶりで、歯磨を売る。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へえ、どうかと思って私は心配しておりました」と岸本は兄の話を受けて、「姉さんの口振くちぶりではあまり家も気に入らないような話でしたが、引越して住んで見れば悪くもありませんかナ」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
十歳とをの時、別れた姉のやうな口振くちぶり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
妻君「お登和さんの口振くちぶりでは兄や親の都合次第でどうなるか分らんとお言いでしたから先ず中川さんに話して中川さんが御承知なさればいてイヤともおっしゃいますまい」大原「強いてイヤとも言うまいなんぞははなは心細こころぼそい。それでは ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
小六ころく幾分いくぶん安之助やすのすけ利害りがい代表だいへうしてゐるやう口振くちぶりであつた。それから三にんあひだに、しばらく談話だんわ交換かうくわんされたが、仕舞しまひ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
女の一むれは祭りを抜きに常盤座ときはざをと、言ひたげの口振くちぶりをかし、田中の正太は可愛らしい眼をぐるぐると動かして、幻燈にしないか、幻燈に、己れの処にも少しは有るし
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
どうやら半分は、私に対して八郎が心づかいをしたのを呑込んだらしい口振くちぶりだ、と思うとはたせるかな、盆に、一銚子、で、雪代が絵姿のように、薄面影を暗い茶の間から、ほんのりとあらわれて
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私費で洋行を思立った留学生が日本を出る動機の中には、すくなくもその若い夫人との関係が潜んでいるらしい口振くちぶりであった。その夫人の妊娠ということにも留学生はひどく頭をなやましていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
襲われる事を予期して、あんにそれを苦にするような健三の口振くちぶりが、細君の言葉を促がした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
心配しないでまじなひでもして待つがいさと慰めるやうな朋輩ほうばい口振くちぶりりきちやんと違つてわたしには技倆うでが無いからね、一人でも逃しては残念さ、私しのやうな運の悪るい者には呪も何も聞きはしない
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私に対して、値の押問答をするのがきまりが悪くもあったらしい口振くちぶりで。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「三拾円」と女が金高きんだかを云つた。あたかも毎日銀行へかねりに行きけた者に対する口振くちぶりである。幸ひ、三四郎はくににゐる時分、かう云ふ帳面を以て度々たび/\豊津とよつ迄出けた事がある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
心配しんぱいしないでまじなひでもしてつがいさとなぐさめるやうな朋輩ほうばい口振くちぶりりきちやんとちがつてわたしには技倆うでいからね、一人ひとりでもにがしては殘念ざんねんさ、わたしのやうなうんるいものにはまじなひなにきはしない
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その口振くちぶりは、ややこのうつわれたもののようでもある。
Kは行きたくないような口振くちぶりを見せました。無論彼は自分の自由意志でどこへも行ける身体からだではありませんが、私が誘いさえすれば、またどこへ行っても差支さしつかえない身体だったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さも喧嘩の相手があるような口振くちぶりだね。とうてきは誰だい」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
馬鹿らしいという気が幾分か彼の口振くちぶりに出た。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)