余程よっぽど)” の例文
旧字:餘程
「助の顔色がどうも可くないね。いったい病身な児だから余程よっぽど気をつけないと不可いけませんよ」と云いつつ今度は自分の方を向いて
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ふむ。お前の故郷まで行って探した! じゃ余程よっぽど深い仲だなあ。……そうして其の人、今何処にいるんだ? 何をしているの?」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
あの按摩のうち余程よっぽど変ってるぜ、巡礼の娘を貰ったとなア、妙な者を貰やアがったなア、でも腕は余程いに違いない無闇に剣術を
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ふむ。私よりかお前さんの方が、余程よっぽど間抜なんだ。だから川西なんかに莫迦ばかにされるんです。もっとしっかりするがいんだ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ッて渋団扇であおいだのは、どういうものか、余程よっぽどトッチたようだったと、見ていたものがいうんでして、見物わッとなる騒動さわぎ
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余程よっぽどやッつけて遣ろうかと思ッたけれども、シカシあんな奴の云う事を取上げるも大人気おとなげないト思ッて、ゆるして置てやッた」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
三月の休暇やすみまでは帰って来られないんだ。けれども家にいて姉さん達にいじめられるよりか余程よっぽどましだと思う。学校には乃公位の子供も大勢いるそうだ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「今は余程よっぽど分っていなくちゃならない——ところが、君、やっぱり今でも分らないんだろう」と西が軽く笑った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何でも遅れずに歩くのは、牧野にも骨が折れたそうだから、余程よっぽど先を急いでいたんだろう。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「まだまだとても下までには余程よっぽどな距離がありそうだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おまはん余程よっぽど強そうだねえ」
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
最前から聞いて居れば手前は余程よっぽど付け上ってるな、此の町人はいわれなく切るのではない、余り無礼だにって向後きょうこういましめの為切捨きりすてるのだ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……余程よっぽど曳船へ廻りたかった。堅豌豆ぬきの精進揚か、いや、そんなものは東海会社社長の船には積むまい。豆大福、金鍔きんつばか。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
曲馬と動物園を一緒にしたようなもので、種々いろいろ珍しいけだものが来るんだ。乃公おれ余程よっぽど学問が出来るようになったと見えて曲馬の広告が半分ぐらい読める。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「お勢を疑うなんぞと云ッておれ余程よっぽどどうかしている、アハハハハ。帰ッて来たら全然すっかりはなして笑ッてしまおう、お勢を疑うなんぞと云ッて、アハハハハ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「うむ/\。そうだ。お前の言うことも、私にはよく分っている。……じゃ二人で余程よっぽど苦労もしたんだろう。」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「やい戯※じょうだんじゃねえぞ。余程よっぽど、この馬は与太馬(駑馬どば)だいなあ。こんな使いにくい畜生もありゃあしねえ」
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ひげなんかはやして、あんなものにでれでれしているなんて、お前さんも余程よっぽど薄野呂うすのろだね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
どうして兄様にいさん、十一月でさえ一月の炭の代がお米の代よりか余程よっぽど上なんですもの。これから十二、一、二とず三月が炭のさかりですから倹約出来るだけ仕ないと大変ですよ。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
兼「なんでございますねえ、本当にお堅いねえ、嬢様が余程よっぽどなんしていらっしゃいますのに、貴方お何歳いくつでいらっしゃいますえ」
これにゃ、みんな貴僧あなた茶釜ちゃがまの中へ紛れ込んでたたるとか俗に言う、あの蜥蜴とかげ尻尾しっぽの切れたのが、行方知れずになったより余程よっぽど厭な紛失もの。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寄宿舎には他に人も居るんだぜ。そこへ行って繁ちゃん見たいにあばれたら、それこそ大変だ。余程よっぽど改良しなけりゃ。あんな大きな声を出して怒鳴ったり、障子を
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「まあ、貴方あなた此地こっちへ来てから、余程よっぽど大きくなったのねえ。今じゃあたしとは屹度きっと一尺から違ってよ。」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「そんな腕を持っていながら、名古屋くんだりまで苦労をしに行くなんて、余程よっぽど可笑おかしいよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そして余程よっぽど行ってから、親方に頼んで弟子にして貰おう。一週間も習えば屹度上手になれる。すると乃公が真赤な着物を着て彼の馬の上で縄飛だの逆立だのする。見物人が手を叩くだろう。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そして聞く者よりか喋舌しゃべっている連中の方が余程よっぽど面白そうであった。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しながら稼ぎに来る女はいかい事ありますが、くれえなのは珍らしい女で、丁寧で口が利けねえのは余程よっぽど出がいんですねえ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところでその金屏風の絵が、極彩色の狩野かのう何某なにがし在銘で、玄宗皇帝が同じ榻子いすに、楊貴妃ようきひともたれ合って、笛を吹いている処だから余程よっぽど可笑おかしい。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「叔母さん達も、最早余程よっぽど行ったわなアし」とお延は、叔父の傍へ来て、旅の人達の噂をした。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何となく祖母を味方のように思っているから、祖母が内に居る時は、私は散々我儘を言って、悪たれて、仕度三昧したいざんまいを仕散らすが、留守だと、萎靡いじけるのではないが、余程よっぽど温順おとなしくなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
わたくしうちなんざアね此方こっちむと彼方あっちが上り、彼方あっちを蹈むと此方こっちが上りね、どうして海の方が余程よっぽど平らさ、あゝい心持ちだ、どうもい景色だ
私からげようとしたので、目を隠したのは、見まい見せまいじゃあない。蚊帳を覗くためだったのだから余程よっぽど変です。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余程よっぽど自分の子供は嬉しがるかと思って上京したのに、案外で失望した、もう子供に逢いに行くことはりた、と言ってお父さんが嘆息して姉に話したということを思出した。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
吃驚びっくりして振反ふりかえると、下女の松めが何時いつ戻ったのか、ともないつら罅裂えみわれそうに莞爾にこつかせて立ってやがる。私は余程よっぽど飛蒐とびかかって横面をグワンと殴曲はりまげてやろうかと思った。腹が立って腹が立って……
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
どうも余程よっぽど惚れてますよ、私が浮世の義理に一寸ちょっと逢って来ますから、あのなに、はなさん、若旦那をお連れ申しておくれ
懺悔ざんげをするがね、実は我ながら、とぼけていて、ひとりでおかしいくらいなんだよ。月夜に提灯が贅沢ぜいたくなら、真昼間まっぴるまぶらで提げたのは、何だろう、余程よっぽど半間さ。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あの時分から見ると、余程よっぽどこれでも楽に成った方だよ。もう少しの辛抱だろうと思うね」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「妻君の妹です……内で見たよりか余程よっぽど別嬪べっぴんに見える」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
善「是は感心、うまい考えだ、成程宜かろう、何か粉炭ばかり売るも宜しいが、余程よっぽど貯ったかえ、直ぐに売り切れるようではいかんがどうだえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこで、その小豆を喰いながら、わたいらが、売女なら、どうしよってんだい、小姐ちいねえさん、内々の紐が、ぶら下ったり、爪の掃除をしない方が、余程よっぽど汚れた、頽れた、浅ましい。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「叔父さんが仙台に被入いらしった時分、宅のことで書いて寄して下すった手紙が、昨年でしたか出て参りましたっけ。あれなぞを見ましても、余程よっぽど宅は皆さんに心配して頂いた人なんですネ」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
知慧もあり剣術も出来て余程よっぽど賢い奴だ、其の荷を拵えた工合ぐあいは旨いもので、動けない様にする工夫がうまいものじゃアないか
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
別嬪べっぴんが二人、木曾街道を、ふだらくや岸打つ浪と、流れて行く。岨道そばみちの森の上から、杓を持った金釦きんぼたん団栗どんぐりころげに落ちてのめったら、余程よっぽど……妙なものが出来たろうと思います。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「高輪に居た時分から見ると、余程よっぽどこれで違って来ましたよ」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お年はお十七とのこと、これが若様なれば余程よっぽどよろしゅうございますに、お武家様にお嬢様はくそったれでございますなア
私も余程よっぽど寝苦しかったと見えます——先にお話しした二度めに目を覚ましますまで、ものの一時間とはなかったそうで——由紀の下階したからとおして見たのでは——余り判明はっきり見えるので
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
枯らしちゃ成らんなんて……余程よっぽど主人思いだネ
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
孝「何も疑ぐりはしませんのに、疑ぐると思うのが余程よっぽどおかしい、夜夜中女ばかりの処へ男が這入り込むのはうもおかしいと思ってもかろうと思います」
いや、いつかの間淵の話じゃないが、蟻の細工までにも到らない、箸けずりの木彫屋が、余五将軍をのみなかまに引込んだ処は、私も余程よっぽど酔いました。——ま、ま、あなたへ、一杯ひとつ
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気の利かないだよ、藤川さんだよ、無闇に上げちゃアいけねえなア………この節は何うもいけない、余程よっぽどいけねえ、様子の悪い、それを無闇に上げてさ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)