何家どこ)” の例文
みちの両側しばらくのあいだ、人家じんかえては続いたが、いずれも寝静まって、しらけた藁屋わらやの中に、何家どこ何家どこも人の気勢けはいがせぬ。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私生児かくしごを抱えて、男から棄てられた彼女は、今さら誰に歎願してみようもなかった。何家どこの戸口を叩こうという当てもなかった。
小さきもの (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
吉良家の近習のうちでも、槍とか太刀とか把って、何家どこへ投げ出しても侍一人前で通用する人間は、そうたんとはいない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あれが宜いこれが利く、何家どこの誰が何年間肺病で寝て居て医者も手を放したのが何々を飲んでからすつかり治つたなど、種々の人が種々の療法を話した。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「早い話が、何家どこの大事な公達きんだちだツて、要するに、親の淫行の收穫よ。ふゝゝゝ」とあやふく快げに笑出さうとして
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
伯母は台所に何か働いて居つたので、自分が『何家どこの女客ぞ』と怪しみ乍ら取次に出ると、『腹が減つて腹が減つて一足も歩かれなエハンテ、何卒どうか何か……』
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
大学生はくやしがつて、何家どこの子供か知らとたづねてみると、文科大学の内藤湖南博士が秘蔵ひぞだつたさうだ。
永年ながねん連添つれそう間には、何家どこでも夫婦ふうふの間に晴天和風ばかりは無い。夫が妻に対して随分ずいぶん強い不満をいだくことも有り、妻が夫に対して口惜くやしいいやおもいをすることもある。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのは、どういうものか、乞食こじきは、何家どこへいきましても、おなじようなことをいってことわられました。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まア/\たべるのはあとにして、早く用をちまつてから、ちよいとおれいつておいでよ。亭「うむ。これから水をんでしまひ、亭「ぢアまつてるが、何家どこからもらつたんだ。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「何の用? テッ! 何の用もかんの用もあるけえ」お絃のかげに隠れるように、土間の隅に小さくなっているお妙へあごをしゃくって、「これア何家どこの娘だ、何家の。え?」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「こら、やい。この柿、何家どこの柿やと思うてけつかる。」
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
見上げて「実に不思議だ、う云う訳で誰に殺されたか少しも手掛りが無い」谷間田は例の茶かし顔にて「ナニ手掛は有るけれど君の目には入らぬのだ何しろ東京の内で何家どこにか一人足らぬ人が出来たのだから分らぬと云う筈は無い早いたとえが戸籍帳を ...
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
みち兩側りやうがはしばらくのあひだ、人家じんかえてはつゞいたが、いづれも寢靜ねしづまつて、しらけた藁屋わらやなかに、何家どこ何家どこひと氣勢けはひがせぬ。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「どこだっけ、あの男に会ったのは? ……何家どこかの客間でか? ……それとも病院であったか? ……うちの診察室か?」
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
と、往来の者も、後振り向いて、お通の代りに声を揚げ合っていたが、その時、彼方の辻から、胸に文筥ふばこを掛けた何家どこかの下郎が、牛の前に歩いて来た。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隅つこに小さくなつてゐた何家どこかの未亡人ごけさんが覚えずくすりと笑つたので、今度はその方へ捩ぢ向いた。
あのなんとか云ったっけともえの紋じゃアねえ、三星とか何とか云ういんが押して有る古金かねを八百両何家どこかで家尻を切って盗んだ泥坊が廻り廻って来てそれでまア、の親孝行な…
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
併し何家どこ老人としよりも同じ事で、親父は其の老成の大事取りの心から、且は有余る親切の気味から、まだ/\位に思つてゐた事であらう、依然として金八の背後うしろに立つて保護してゐた。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
お由が何家どこかへ振舞酒にでもばれると、密乎こつそりと娘を連れ込む事もある。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
まあ何家どこでもいいや、今晩はここに厄介になれ——。
何家どこやろ。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
一体、何家どこを捜す? いやさ捜さずともだが、仮にだ。いやさ、しちくどう云う事はない、何で俺が門をうかごうた。唐突だしぬけに窓をのぞいたんだい。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あらゆる人間の持つ——生きとし生けるものの宿命的な悩みというものがやはり何家どこうちにもあるだろう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先日こなひだもこんな事があつた。その日は博士は朝から少し機嫌を損じてゐて、何家どこかの若い夫人が診察室に入つて来た折は、まるで苦虫を噛み潰したやうな顔をしてゐた。
「なアに何家どこかかあも同じことよ。彼女あれはここへ来ても、小舎うちにいても、せっせと仕事をしているだ」
麦畑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
しかし何家どこ老人としよりも同じ事で、親父はその老成の大事取りの心から、かつはあり余る親切の気味から、まだまだ位に思っていた事であろう、依然として金八の背後うしろに立って保護していた。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何家どこのがんこだ!』『狂人ばかのよ、繁のよ。』『アノ高沼のしげる狂人ばかのが?』『ウムさうよ、高沼の狂人のよ。』『ホー。』『今朝の新聞にも書かさつてだずでヤ、繁ア死んでエごとしたつて。』『ホー。』
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
裏町の中程に懸ると、両側の家は、どれも火が消えたように寂寞ひっそりして、空屋かと思えば、蜘蛛くもの巣を引くような糸車の音が何家どこともなく戸外おもてへ漏れる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、腰をかけて、血判を戻しに来たことを、何家どこへ行っても同じ口上の通りに述べると
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石油王ロツクフエラアが、ある時自動車に乗つて出掛けようとすると、直ぐそば何家どことも知れない六歳むつつばかりの小娘が立つてゐて、この富豪かねもちの顔をしげしげと見てゐるのに気がついた。
何家どこ下僕しもべだろうか。武家の仲間ちゅうげんのようでもなし、町家の下男しもべともみえない。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(はてな? ……何家どこの子だろうか。これは、鳳凰ほうおうひなだ)そう思いながら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と聞くと、何家どこも逃げを張って、花代はなに依らず、座敷へ出てがない。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうか。通しておくがよい。——しかし何家どこのお子だ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何家どこの?」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)