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低声
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こごえ
ふりがな文庫
“
低声
(
こごえ
)” の例文
旧字:
低聲
「
俺
(
おいら
)
あ
可厭
(
いや
)
だぜ。」と押殺した
低声
(
こごえ
)
で
独言
(
ひとりごと
)
を云ったと思うと、ばさりと
幕摺
(
まくず
)
れに、ふらついて、隅から
蹌踉
(
よろ
)
け込んで見えなくなった。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それからかれこれ一時間も引き留められたが、
暇
(
いとま
)
を告げる時、お作は
低声
(
こごえ
)
で、「お産の時、きっと来て下さいよ。」と幾度も頼んだ。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
伝三郎もぽかんともしていられず、おっさん一杯といわれると、
低声
(
こごえ
)
でヘイと返事し、兄の手つきを見習って、コップにあめを盛った。
俗臭
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
紀久子はそれでも、周囲に気を配るようにしながらも
低声
(
こごえ
)
にそう呼んだ。しかし、その部屋の中からは物音の気配さえしてこなかった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
と菅は
低声
(
こごえ
)
で捨吉に言った。基督教界にはああいう人もあるかと、捨吉も眼をかがやかして、沈着な学者らしい博士の後姿を見送った。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
低声
(
こごえ
)
でこんな唄を
謳
(
うた
)
いながら、お葉は
微酔
(
ほろよい
)
機嫌で
門
(
かど
)
に出た。お葉は東京深川生れの、色の
稍
(
やや
)
蒼白い、
細面
(
ほそおもて
)
の、眉の長い女であった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ちらちらと若松屋惣七のほうを見ると、若松屋惣七は、血の黒く固まった眉間の傷を見せて、何か
低声
(
こごえ
)
に龍造寺主計と話しこんでいた。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
真実の二人になり切ろうと全能で脈搏しているほど、そのつよい
低声
(
こごえ
)
が、武蔵の耳以上へ
滲
(
し
)
み
徹
(
とお
)
っているか否かはわからなかった。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
足は機械的に母親の
室
(
へや
)
の方へふらふらと行って、戸のハンドルに手をかけたとき、老女中がそっと追かけて来て、
低声
(
こごえ
)
でいった。
父
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「あなた、私に詩を教えて下さい。私詩が好きよッ。」と、言って自分で頼山陽の「
雲乎
(
くもか
)
山乎
(
やまか
)
」を
低声
(
こごえ
)
で興の無さそうに口ずさんでいる。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
枕頭
(
まくらもと
)
に端座して
低声
(
こごえ
)
で読経をつづけたが、やがてよして窓を開けた。静な月の下に筧の水音ばかりが
四辺
(
あたり
)
の静寂を破っていた。
轆轤首
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
立松は何気なく鳥籠を抱え屋上庭園へ昇りかけたが急に思い出してそれを杉山に渡し、自分は人目につかないところに立って
低声
(
こごえ
)
で合図をした。
鳩つかひ
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
私が隅っこに寄せかけてあった籐椅子をひきずり出して腰をかけようとすると、彼女はあわてて、
低声
(
こごえ
)
で私に言いました。
アパートの殺人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
渡邊の耳元へ
低声
(
こごえ
)
で
咡
(
ささや
)
いておいて、自分独りで二階へあがっていった、軈て低い春日の声に混って、
主人
(
あるじ
)
の太い声が
断片的
(
きれぎれ
)
に洩れて聞えてくる。
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
「アメリアさん。」と、セエラは
低声
(
こごえ
)
でいいました。「あのミンチン先生が、とめてみてもいいと仰しゃいましたので。」
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
小歌をと思切って言うか
言
(
いわ
)
ぬに、はいと婢は畏まって
楼下
(
した
)
へ降行き、小歌さんをと高く呼んで、そして
低声
(
こごえ
)
に気のつまる方と朋輩に囁いて居た。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
彼女はつとめて微笑をしながら、私に聞えるか聞えない位の
低声
(
こごえ
)
で言った。私は黙ったまま、ベッドの縁に腰をかけた。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そして毛ぶかい
頤鬚
(
あごひげ
)
や
口髭
(
くちひげ
)
をブルブルふるわせながら、
低声
(
こごえ
)
の皺がれ声で何かブツブツいっていた。どうやら警官の取扱いに憤慨しているらしかった。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
前部砲台の
方
(
かた
)
より士官
二人
(
ふたり
)
、
低声
(
こごえ
)
に相語りつつ艦橋の下を過ぎしが、また陰の暗きに消えぬ。甲板の上
寂
(
せき
)
として、風冷ややかに、月はいよいよ
冴
(
さ
)
えつ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
人が
低声
(
こごえ
)
で話しているとほとんど聴こえない。響きのほうは聴こえるが言葉が聴こえないのだ。しかも誰かが叫び声を立てると、それが僕には耐え難い。
ベートーヴェンの生涯:04 ベートーヴェンの手紙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
、
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
、
フランツ・ゲルハルト・ヴェーゲラー
、
エレオノーレ・フォン・ブロイニング
(著)
女の人が引っ込んでいって、
低声
(
こごえ
)
で何か
囁
(
ささや
)
きあっているのが、心臓の高鳴りはじめた木之助の神経を
刺戟
(
しげき
)
した。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
低声
(
こごえ
)
できくと相手は、白い上ッ張りの
紐
(
ひも
)
をのろのろと結びながら、無感動な調子の大きな声で答えるのだった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
一同が部屋へ寝に引上げてしまうと、彼女の話でその静かな心を乱された、でッぷり肥った一人の猟人が、隣にいた男の耳に口を寄せて、
低声
(
こごえ
)
でこう云った。
寡婦
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
右の踏みならされた細道を進んでいる永井がその時、
低声
(
こごえ
)
に云った。ロシアの女を引っかけるのに特別な手腕を持っている永井の声はいくらか
笑
(
えみ
)
を含んでいた。
パルチザン・ウォルコフ
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
誰かが急病!——と、
咄嗟
(
とっさ
)
の職業的意識に
狼狽
(
あわて
)
て
撥
(
は
)
ね起きたドクタアと、今にも彼のベッドへ這入りこみそうな彼女とは、早速こんな
低声
(
こごえ
)
のやりとりを開始した。
踊る地平線:11 白い謝肉祭
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
娘は蓮葉な声で笑いかけたのを周章てて呑み込むと、居住いを直しながら、
低声
(
こごえ
)
で私に注意した。
風船美人
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
二人はそんなことを
低声
(
こごえ
)
に云い交しながら、お化けや幽霊に出くわすとは、立止り立止り、歩いている内に、やがて竹藪の迷路を抜けて、
黒板塀
(
くろいたべい
)
のようなものに突き当った。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「今一人来てるんだよ、朝っばらから何だね。それから、為さん、
鳥渡
(
ちょいと
)
顔を貸して——」土間を通って事務所になっている表の入口へ出る迄、おきん婆あは
低声
(
こごえ
)
に
囁
(
ささや
)
き続けた。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
「もうすこし。お前さんも
性急
(
せッかち
)
だことね。ついぞない。お梅どんが気が
利
(
き
)
かないんだもの、
加炭
(
つい
)
どいてくれりゃあいいのに」と、小万が
煽
(
あお
)
ぐ懐紙の音がして、
低声
(
こごえ
)
の
話声
(
はなし
)
も聞えるのは
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
こちらで、大平は朝子と
低声
(
こごえ
)
で話していた。朝子は、編物を手にもっていた。
一本の花
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「えっ、やられた?」私に
忌々
(
いまいま
)
しい暗示を与えた頬の
痩
(
こ
)
けた男は腰を浮かして
低声
(
こごえ
)
で叫んだ。その拍子に膝の上の南京豆の鑵がガチャンと床に落ちた。二三人の乗客が私の方を
吃驚
(
びっくり
)
したように見た。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
と云い紛らし、また長次に向い
低声
(
こごえ
)
にて
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
左源太は、又、
低声
(
こごえ
)
になって
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
とちょっと
低声
(
こごえ
)
に呼んだ——
爪
(
つま
)
はずれ、帯の
状
(
さま
)
、肩の様子、
山家
(
やまが
)
の人でないばかりか、髪のかざりの当世さ、鬢の香さえも新しい。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今、彼のすがたがこの辺でちらと見えたのにと思いながら、前原伊助が、本堂の方を抜けて来て、ふた声ほど、
低声
(
こごえ
)
で呼んでいた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それじゃ私はまた来るから……。」と、叔父は深いパナマの帽子を
冠
(
かぶ
)
って、うとうとしている病人の
枕頭
(
まくらもと
)
へ寄ると、
低声
(
こごえ
)
に声をかけた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
顔を伏せるようにして、女は、
袂
(
たもと
)
の端を噛みながら
低声
(
こごえ
)
にいった。白粉の
匂
(
にお
)
いと温泉の匂いとが、静かに女の肌から発散した。
機関車
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
そして
低声
(
こごえ
)
で何か言うと、対馬守がほほえんでしきりに
合点
(
がってん
)
合点をしている。ひとり遅れて、平淡路守が超然と歩いて来る。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それから足早にそこをすり抜け、赤ん坊を泣き止ませようとして、昨日わが子にしたと同じように
低声
(
こごえ
)
でくりかえした。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
「そりゃ素晴らしい名案だ」と彼は
低声
(
こごえ
)
で叫んだ。「僕は実は引き受けるには引き受けたものの、どうしていいかさっぱり目やすがつかなんだのだ」
鉄の規律
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
二人は、私のために中断されたらしい話の続きを、さっきよりも
低声
(
こごえ
)
で、続け出した。それは私の知らない馴染みの人々や事柄に関するものが多かった。
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「斯うしていても
際限
(
きり
)
がないから、……私、
最早
(
もう
)
帰りますよ。じゃこれで一生会いません。」と、
傍
(
あたり
)
を憚るように、
低声
(
こごえ
)
で強いて笑うようにして言った。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
市郎は重ねて呼びながら、犬の
頸
(
くび
)
に手をかけると、お葉は
傍
(
そば
)
へ寄って来て、
低声
(
こごえ
)
で少しく
怨恨
(
うらみ
)
を含んだように
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
七月七日の夕べ、片岡中将の
邸宅
(
やしき
)
には、人多く
集
(
つど
)
いて、皆
低声
(
こごえ
)
にもの言えり。令嬢浪子の
疾
(
やまい
)
革
(
あらた
)
まれるなり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
老探偵はその甥に何かを
低声
(
こごえ
)
で囁いた。甥はいたずら小僧みたいな目をして、
悦
(
よろこ
)
んでそれを聞いていた。
断層顔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
草を踏んで近づいてくる
跫音
(
あしおと
)
が私たちをふり向かせた。さっきの切符売りの老人である。眼の蒼い、
愛蘭
(
アイルランド
)
人の微笑とともに、そっと彼の
低声
(
こごえ
)
が私たちの耳のそばを流れた。
踊る地平線:03 黄と白の群像
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
連れの芸者にはゞかるのか
低声
(
こごえ
)
で、もと紙屑屋しとったが、今はこないに出世しましてん。
俗臭
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
怒鳴りつけましたが、何を思ったのか急に
低声
(
こごえ
)
になって、こんな事を云いました。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
太い
低声
(
こごえ
)
で、運んできた負傷者に喋っていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
と云われて、おしのは
低声
(
こごえ
)
になり
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
“低声”の意味
《名詞》
低い声、小声、ささやき。
(出典:Wiktionary)
低
常用漢字
小4
部首:⼈
7画
声
常用漢字
小2
部首:⼠
7画
“低”で始まる語句
低
低頭
低徊
低音
低聲
低地
低廉
低能児
低能
低唱