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佇
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た
ふりがな文庫
“
佇
(
た
)” の例文
暖かそうな黄八丈の丹前を着た師匠の圓生が、朱いろの日の中に朝酒で染めた頬をかがやかして、さも面白そうに笑って
佇
(
た
)
っていた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
母親は、そう言うたときに父親が
佇
(
た
)
っている窓口を見た。ふたりは
微笑
(
わら
)
いあったが、どの微笑いも満足そうな色を漂わしていた。
後の日の童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彼女はそこに
佇
(
た
)
っていた。熊太郎というのは、半兵衛が栗原山に閑居していた頃から召使の
童子
(
どうじ
)
として年来側近く育てて来た家来である。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに丈の高い
女郎花
(
おみなえし
)
に似た黄色い草花の目ざましさは。私はまた
佇
(
た
)
ち停って、これらの初めてみる樺太の景趣に目を円くした。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
倅が兵隊服を着て、あのまん丸な若々しい顔に人懐っこい
微笑
(
えみ
)
をうかべながら
佇
(
た
)
っている姿が、今もまざまざと見えるようだ。
情状酌量
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
▼ もっと見る
わたしは一秒間ほど、これが一体どうなるだろう、取り返しがつくだろうかと思って、ぼんやり身動きもせず
佇
(
た
)
っていました。
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
少女はやゝ黄味がかつた銘仙の
矢絣
(
やがすり
)
の着物を着てゐた。襟も袖口も帯も
鴾色
(
ときいろ
)
をつけて、同じく鴾色の覗く八つ口へ白い両手を突込んで
佇
(
た
)
つてゐた。
小町の芍薬
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして
不図
(
ふと
)
気
(
き
)
がついて
見
(
み
)
ると、
見
(
み
)
も
知
(
し
)
らぬ
一人
(
ひとり
)
の
老人
(
ろうじん
)
が
枕辺
(
まくらべ
)
に
佇
(
た
)
って、
凝乎
(
じっ
)
と
私
(
わたくし
)
の
顔
(
かお
)
を
見
(
み
)
つめて
居
(
い
)
るのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
燃えるような
眸
(
まなざし
)
で、
馬道裏
(
うまみちうら
)
の、路地の角に
在
(
あ
)
る柳の下に
佇
(
た
)
ったのは、
丈
(
せい
)
の高い歌麿と、小男の亀吉だった。亀吉は麻の葉の手拭で、
頬冠
(
ほおかぶ
)
りをしていた。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
つた つたと来て、ふうと
佇
(
た
)
ち止るけはい。耳をすますと、元の
寂
(
しず
)
かな夜に、——
激
(
たぎ
)
ち
降
(
くだ
)
る谷のとよみ。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
ぼくは、その中に
佇
(
た
)
つて、本堂に懸つた額に目を
凝
(
こら
)
した。……“瑠璃殿”と辛うじて読めた。
にはかへんろ記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
栄介は道の真中に
佇
(
た
)
って、その建物を観察した。酒粕のにおいが、かすかにただよっている。彼の小学校の友達に造酒業の伜がいて、二、三度その家に遊びに行ったことがある。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
いつものように、宵闇に
紛
(
まぎ
)
れて、
折助
(
おりすけ
)
すがたに
装
(
つく
)
った辰馬が、ぼんやり
佇
(
た
)
っていた。
元禄十三年
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
淋しい夕暮の港に
佇
(
た
)
って、遠ざかってゆく汽船を見送る時に、誰もが味うような、核心のない侘しさを感じていたのである。その寂しさの奥に倫敦の紅い灯火が滲んでいた。そこにはモニカがいる。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
扉の外に
佇
(
た
)
っていたパイの
跫音
(
あしおと
)
も聞えない
奪われてなるものか:――施療病院にて――
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
その橋の上流は藪につづいた外は、
一望
(
いちぼう
)
の白い石ばかりの川原と土手との続きであった。かれら姉弟は橋の袂にぼんやり
佇
(
た
)
ちつくしていた。
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そして長いことそこに
佇
(
た
)
って、
莞爾莞爾
(
にこにこ
)
して子供等の遊びに見とれていたが、ふと気がつくと、眼をかくして逃げるようにそこを駆けだした。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
今、惣領の宗時に、その一つを
託
(
たく
)
し、召使たちの右往左往している廊を真っ直ぐに通って、わが室の
辺
(
ほと
)
りまで来て
佇
(
た
)
つと
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ピューピュー筑波ならしの吹く寂しい四谷の大通りに
佇
(
た
)
っていて、小圓太はつくづく杉大門の主を怨みにおもった。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
年齢
(
とし
)
の
頃
(
ころ
)
はやっと
十歳
(
とお
)
ばかりの
美
(
うつく
)
しい
少女
(
しょうじょ
)
が、七十
歳
(
さい
)
位
(
くらい
)
と
見
(
み
)
ゆる
白髪
(
しらが
)
の
老人
(
ろうじん
)
に
伴
(
ともな
)
われて
佇
(
た
)
っていました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
つた/\と来て、ふうと
佇
(
た
)
ち止るけはひ。耳をすますと、元の寂かな夜に、
激
(
たぎ
)
ち降る谷のとよみ。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
腰かけられる石台が三つ四つ、青
楓
(
かえで
)
の大樹が地に届くまで繁った枝を振り冠っていた。京子は
茲
(
ここ
)
へ来て
佇
(
た
)
ち止ると、片手で息せく加奈子の手を持ち、片手で繁る楓の枝を
掴
(
つか
)
んだ。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
子供がひとり、つッと
此方
(
こちら
)
を見て
佇
(
た
)
った。浜辺は昆布が散らかってる。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
もの倦く一夜を
佇
(
た
)
ち明かし
飢えたる百姓達
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
そしてこれが自分の庭だとしたら、終日あほらしい顔をして此処に
佇
(
た
)
つて、水の動いて流れるのに倦きることはないだらう。
名園の落水
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
彼を
橋袂
(
はしたもと
)
へ
佇
(
た
)
たせておいて、河原を
覗
(
のぞ
)
いていた加賀四郎は、そういいながら、
堤
(
どて
)
の細道を探して自分が先へ降りて行く。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
母親はこの物音を聞きつけて奥から駆けだして来たが、子供の姿はなくて、亭主が独り凄い眼つきをして戸口に
佇
(
た
)
っているのを見ると、仰天して喚きたてた。
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
梅
(
うめ
)
の
精
(
せい
)
は
思
(
おも
)
いの
外
(
ほか
)
わるびれた
様子
(
ようす
)
もなく、
私
(
わたくし
)
の
顔
(
かお
)
をしげしげ
凝視
(
みつめ
)
て
佇
(
た
)
って
居
(
お
)
ります。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
佇
(
た
)
ちて見ていよよ歩まぬこれの子を甘菜吸ひほけ遊ぶ子らはも
風隠集
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
わたしが
佇
(
た
)
っている間に、れいの露西亜人のギタアを弾く男の子供が、汗をながして自転車に乗ることを稽古していた。
ヒッポドロム
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
信盛は、しばらく外に
佇
(
た
)
っていた。雪にでもなりそうな空もよいである。昼ながら南禅寺の山陰はしんしんと寒かった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
槇
(
まき
)
もやや光る葉がひを
秀
(
ほ
)
に
佇
(
た
)
ちて青鷺の群のなにかけうとさ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
私はそこでしばらく
佇
(
た
)
ちながら、すやすや眠っているらしい女に、私がそうやって佇っていることを知らすまいと、
凍
(
こお
)
った
閾
(
しきい
)
の上に音もなく雨戸を閉めた。
童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
廻廊の東西、両隅に
佇
(
た
)
っていた
螺手
(
らしゅ
)
が、貝の口を唇に当てて、細く高く長く短く、貝の音を吹き鳴らした。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
槙
(
まき
)
もやや光る葉がひを
秀
(
ほ
)
に
佇
(
た
)
ちて青鷺の群のなにかけうとさ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
横町へまがってしまったのに、まだ車が走っているような幻影が、私をして永く
佇
(
た
)
たせた。私は涙ぐんだ。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
すると、彼方の麦畑のそばにある梅の木の下に、ぽつねんと
佇
(
た
)
っているひとりがあった。鼠色の着物を裾みじかに着て、わらじ
穿
(
ば
)
き、そして
天蓋
(
てんがい
)
を
被
(
かぶ
)
っている。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
泉石
(
せんせき
)
のここだあかるき
真日照
(
まひでり
)
に青鷺が
佇
(
た
)
てり
泛
(
う
)
く鴨のあひだ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
眠元朗は全く
明瞭
(
はっきり
)
すぎるくらい明らかな
寂漠
(
さび
)
しい
風表
(
かざおもて
)
に
佇
(
た
)
っているような顔をしていた。——しかしかれは黙ってむしろ気難しそうに口をゆがめて返事をしなかった。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
佇
(
た
)
ったまま、懐紙にさらさらと筆を走らせる。彼の文字は流達で、文辞には才気があった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はるばるとわたる月夜のうろこ雲
現
(
うつ
)
しき母の子をかかへ
佇
(
た
)
つ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
松岡はうつらうつらした時分に急に誰かが襖のそとに
佇
(
た
)
っているような気がした、そして起き上ると、曾つて一度も覚えたことのない恐怖に充ちた気もちで、襖のそとを窺うた。
三階の家
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「勝敗歴然と見えてからは、小高い所に
佇
(
た
)
って、黙然と、ただ眺めていた」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
はるばるとわたる月夜のうろこ雲
現
(
うつ
)
しき母の子をかかへ
佇
(
た
)
つ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
やがて話がほかにそれると、
侍座
(
じざ
)
に
佇
(
た
)
っていた
楊曁
(
ようき
)
はどこかへ立ち去った。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふかみどり
櫨
(
はじ
)
の木かげに
佇
(
た
)
つ見れば
童女
(
どうによ
)
は
愛
(
かな
)
し母によく似て
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
母は、いつも永く門のところに
佇
(
た
)
って見送っていた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
寒
(
かん
)
の土に
佇
(
た
)
ちつくしつつかそけさよ冬は螢も飛ばぬものをよ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
古い土塀門の外に
佇
(
た
)
って、母は時折、微笑んでくれた。
剣の四君子:03 林崎甚助
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寒
(
かん
)
の土に
佇
(
た
)
ちつくしつつかそけさよ冬は蛍も飛ばぬものをよ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
佇
漢検1級
部首:⼈
7画
“佇”を含む語句
佇立
立佇
佇止
佇徊
佇立所
佇立瞑目
御佇