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一帶
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いつたい
古い/\
昔は、この
一帶は
暖帶林の
上部から
温帶林の
下部に
屬する
樹木、すなはち
常緑の
濶葉樹や
落葉樹でおほはれてゐたのです。
東と
西と
南の
三方は
此島の
全面で、
見渡す
限り
青々とした
森つゞき、
處々に
山もある、
谷も
見える、また
逈か/\の
先方に
銀色の
一帶の
隱見して
居るのは、
其邊に
一流の
河のある
事が
分る。
天未に
闇し。
東方臥龍山の
巓少しく
白みて、
旭日一帶の
紅を
潮せり。
昧爽氣清く、
神澄みて、
街衢縱横の
地平線、
皆眼眸の
裡にあり。
然して
國主が
掌中の
民十萬、
今はた
何をなしつゝあるか。
斯程の
島だから、
何か
食物の
無い
事もあるまいと
四方を
見渡すと、
果して二三
町距つた
小高い
丘の
中腹に、
一帶の
椰子、バナヽの
林があつて、
甘美しき
果實は
枝も
垂折れんばかりに
成熟して
居る。
此の
東京の
四萬の
數は
多いやうだけれども、
其の
頃にしろ
府下一帶の
人口に
較べては、
辻駕籠ほどにも
行渡るまい、
然も
一ヶ
月税銀八匁の
人力車である。なか/\
以て
平民には
乘れさうに
思はれぬ。
此家を
去る
事十
數町の
彼方に、
一帶の
灣がある、
逆浪白く
岩に
激して
居るが、
其灣中、
岩と
岩とが
丁度屏風のやうに
立廻して、
自然に
坩※の
形をなして
居る
處、
其處に
大佐の
後姿がチラリと
見えた。