魁偉かいい)” の例文
蝦夷のシャグシャインやツキノイ、南の小島では赤蜂本瓦あかぶさほんがわら与那国よなくに鬼虎おにとらのごとき、容貌魁偉かいいなる者は多くは終りをまっとうしなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
が、妙覚尼も云う通り図抜ずぬけて大きい彼の魁偉かいいな容貌が、その身長との不釣り合いのために一層人を威壓したことは、想像に難くない。
が、方頷粗髯の山本権兵衛然たる魁偉かいいの状貌は文人を青瓢箪あおびょうたん生白なまっちらけた柔弱男にやけおとこのシノニムのように思う人たちをして意外の感あらしめた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
人々のこうべは、一斉にそのほうへ振向いた。見ればその人は、貌相ぼうそう魁偉かいい胸ひろく双肩そうけん威風をたたえ、武芸抜群の勇将とは見られた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
亡父の事を人はよく容貌魁偉かいいというが、どちらかというと派手で、大きくて、厚肉で、俗な分子が相当あり、なかなか扱いにくい首である。
自作肖像漫談 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
笑み崩れたその魁偉かいいな顔をつくづくと眺め、十吉はふとさう思つた。そして差し出された巨きな手の平を、心から握り返した。
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
ここにつどえる将校百三十余人のうちにて、騎兵の服着たる老将官のかたちきわめて魁偉かいいなるは、国務大臣ファブリイス伯なりき。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
身の丈五尺九寸もある大入道おおにゅうどう大眼玉おおめだま。容貌いたって魁偉かいいで、ちょうど水滸伝すいこでん揷絵さしえにある花和尚魯智深かおしょうろちしんのような面がまえ。
或る箱の葭簀よしずの下では支那らんちゅうの目の醒めるようなのが魁偉かいいな尾鰭を重々しく動かしていた。葭簀を洩れた日光が余り深くない水にさす。
高台寺 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
くまのように魁偉かいいな男ではあるが、どことなくものやさしい、目は正直しょうじきそうな光をおびている、一同はかれの態度たいどになにかしら心強さを感じた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
体も大きいし容貌も魁偉かいいで声音も多いという人が、別に大きな声も出さず、僅に微笑をしたところに、かえって偉大な感じを起すのと同様である。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
とシャアは魁偉かいいな容貌を落涙せんばかりに歪めて、とある曲り角カーブへ来た時に後方から続いて来るカ氏やジャヴェリらの乗っている車を指し示した。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そうしてその容貌の魁偉かいいにしていかにも筋骨のたくましきところは、ただその禅定ぜんじょうだけやって坐って居るような人と見えないほどの骨格の逞しい人で
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
余好意を謝してその容貌を見るに、魁偉かいいにして筋骨たくましく、磊落らいらくにして豪傑肌なる快男児也。いよいよ心強く覚ゆ。
層雲峡より大雪山へ (新字新仮名) / 大町桂月(著)
容貌魁偉かいいなる田山白雲の姿の見えない代りに、短身長剣の男が一人舳先へさきに突立って、ものを言いかけましたから
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
校長は、五分刈で、顎骨の四角な、眼玉の大きい、見るからに魁偉かいいな感じのする、五十四五歳の人だった。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
魁偉かいいというと少し大袈裟おおげさで悪いが、いずれかというと、それに近い方で、とうてい細い筆などを握って、机の前で呻吟しんぎんしていそうもないから実は驚いたのである。
長谷川君と余 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その席に今一人、より魁偉かいいな、極めて彫りの深い容貌の生徒がいる。脚本が朗読されている間、彼は厳然と腕を組み、その態度を崩さない。やはり興味を覚える。
澪標 (新字新仮名) / 外村繁(著)
町家の中でこれを見ると、魁偉かいいであり、異観であったが、然し、頭抜ずぬけて美しいことが分るのだった。
日本文化私観 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
容貌は魁偉かいいでありながら色は生白かったり、新型の洋服を着ていながら猫背で腰をかがめていたり、鼻の下にひげをつけながら前垂れをかけていたり、これ等の人々は
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
万人に正確だと認められている無数の史料か、あるいは今見て来た魁偉かいいな老紳士か。前者を疑うのが自分の頭を疑うのなら、後者を疑うのは自分の眼を疑うのである。
西郷隆盛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
容貌魁偉かいいの荒武者が大蛇の口へ両手をかけて今や引き裂かんとする凄まじの光景、これがたこの絵ならすぐ売れるがと思ったくらいで、さすがに不評、まあこんなのもあった
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
そのころどこからともなく江戸に現われた修験者しゅげんじゃで、四十五六の魁偉かいいな男でしたが、不思議な法力を持つとうわさされて、わずかの間に江戸中の人気をさらい、谷中に建てた堂宇は
なかには容貌ようぼう魁偉かいいの将軍が乗っていた。日清戦争実記以来写真銅版でお馴染の痘痕面あばたづらだった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
実際家の熊城君なんぞはとうに気がついているだろうが、その二つの足型を採証的に解釈してみると、大男のレヴェズが履く套靴オヴァ・シューズの方には、さらにより以上魁偉かいいな巨人が想像され、また
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
太田町近在のある寺の住職が、容貌魁偉かいいにして、大和尚の風采ふうさいをそなえている。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
郷長さとおさ嘉門は六十歳ほどで、土着の武士であるだけに、容貌魁偉かいい風采堂々、まことに立派なものであったが、伊賀袴を穿き陣羽織を着し、自分の屋敷の母屋の縁に、寛々と腰をかけていた。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天下無双であり、ちょっと形容しがたいほど魁偉かいいな大豪傑であった。彼は前田家の勇士と試合を望み、どう断わっても承知しなかった。試合をさせないのなら城を明け渡せ、と云うのであった。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かれが天性の色の白さもきわだつのであるが、こう見くらべたところ、お十夜の色悪いろあくな、一角の魁偉かいいな、周馬のにきびだらけの面相などとは
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにつどへる将校百三十余人の中にて、騎兵の服着たる老将官のかたちきはめて魁偉かいいなるは、国務大臣ファブリイス伯なりき。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
一口につづめて言へば、魁偉かいいな風貌にちがひないのだが、しかもその逞ましさは何かもつと別の、いはば涙もろいものを秘かに含んだ逞ましさである。
春泥:『白鳳』第一部 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「接吻だけはせというが、こうしずにはいられない」と状貌魁偉かいいと形容しそうな相好そうごうくずして、あごの下に猫をかかえ込んでは小娘のように嬉しがって舐めたりさすったりした。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
と微笑みながら側に立っている容貌魁偉かいいなシャアに何か母国カッチ語で言われた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
やや魁偉かいいな風貌も限りなく親しめるものであり、楽屋で夫君の演奏の終るのを待ち構えて、抱き付くように迎える夫人の愛情の籠った態度までが、私には昨日のことのように思い出されてならない。
待つ間もなく、容貌ようぼう魁偉かいいの中老紳士が入って来て
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と、男が男のすがたに見恍みとれるほどの者もあった。わけても吉田忠左衛門、背は高く、肩の肉は厚く、容貌は魁偉かいいである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然るにいよいよ新任提調として出頭するや、一同は皆瀟洒しょうしゃたる風流才人を見るべく想像していたに反して、意外にも状貌じょうぼう魁偉かいいなる重厚沈毅ちんきの二葉亭を迎えて一見忽ち信服してしまった。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
長躯魁偉かいいで、東洋風な風貌をしているということである。
それほどにその人物は魁偉かいいな面がまへであつた。
灰色の眼の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
髪は白髪しらがになりきらず玉蜀黍とうもろこしの毛のようだし、田舎にばかり役勤めをしているせいか、皮膚の黒いことは百姓に劣らない。容貌ようぼうどことなく魁偉かいいなのである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
獅子の如き木獣、虎の如き木獣、つののあるさいの如き木獣など、どれもこれも怖ろしく大きくて魁偉かいいである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど村重は、平然と胸をらしていた。年はわずか二十二歳だというが、体躯は小さく、容貌は魁偉かいいだ。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから余り燈火あかりに近くすわると、そのうすい髪の根までがいて見えて、この体躯矮短わいたんにして胆斗たんとのごとき奇男児の風貌、いやが上にも魁偉かいいに見せ過ぎる嫌いがある。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぬッとはいってきた魁偉かいいおとこ工匠袴こうしょうばかまをはいたはなかけ卜斎である。ギョロッとなかを見まわして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また碧瞳紅毛へきどうこうもう金蜘蛛きんぐものようなこの魁偉かいい容貌ようぼうにも、呂宋兵衛の名のほうがふさわしかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
味方であった間は、さまでとも思えなかったが、こうして敵に廻してみると、何さま魁偉かいいな猛勇に違いない。姜維も並ならぬ大敵と知って、心中に孔明の霊を念じながら叫んだ。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「来訪の一行脚あんぎゃは、どう見ても出家とは受けとれません。なんとも魁偉かいいな人物です」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女ばかりはおびえがちな寮に、魁偉かいい優婆塞うばそくと美男の浪人が、果し合いの白刃を抜き交わしたので、老女や多くの侍女こしもとは唯あれあれと、一所ひとところに群れ寄って、廊下は時ならぬ花壇かだんとなる。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
脚に車を穿き、口から火煙を噴き、異様な咆哮すら発して、前へ進み、横へまわり、縦横無碍むげに馳け廻って、生ける虎、豹、狼などをも、その魁偉かいいな姿に驚殺きょうさつを喫せしめたのであった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魁偉かいいな容貌に、いやらしい笑みをニタリと見せた。二人の弟子はすぐに
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)