雲霞うんか)” の例文
この決死の兵法には、雲霞うんかのように寄せて来ていた、六波羅勢も恐れをなし、左右そうなく門を押し破って、乱人することが出来なかった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「新島襄何者ぞ? 彼の如きは群馬県の本領を語るものに非ず。群馬県からはもっと豪い人物が雲霞うんかの如くに輩出はいしゅつしている」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
藤吉郎は、小国の兵馬の中にばかりいるせいか、敵の大規模な兵力を見ると、よくいう雲霞うんかの如く——という言葉がそのままに思い出された。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに、裏長屋の軒並から——大江戸の隅の隅のどぶという、どぶの近所から、急に発生き出した、毒虫のように、雲霞うんかのように飛び出して来た。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
海からも山からも、座主の跡を追いかけてくる、雲霞うんかの如き衆徒の群にきもをつぶした護送役人は、座主をうっちゃって、命からがら逃げ出してしまった。
雲霞うんかのような味方の大軍に対して、戦った所が、仕方はありません。それに、烏江の亭長ていちょうは、わざわざ迎えに出て、江東こうとうへ舟で渡そうと云ったそうですな。
英雄の器 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
旱魃かんばつがあった。雲霞うんかのような蝗虫いなごの発生があった。収穫はすべて武器を持った者に取りあげられてしまった。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
第一番に偵察者がやって来て、そのあとに雲霞うんかのようにおびただしい月人隊がおし寄せるのかもしれない。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こもを抱えた夜鷹よたかむれ雲霞うんかの如くに身のまわりを取巻いていて一斉に手をって大声に笑いののしるのである。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
秋の赤蜻蛉、これがまた実におびただしいもので、秋晴あきばれの日には小さい竹竿を持って往来に出ると、北の方から無数の赤蜻蛉がいわゆる雲霞うんかの如くに飛んで来る。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「御殿を出るなとあれほど申したのを忘れたのか、ここには敵が雲霞うんかとおる、貴様その手に掴まったら」
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
幾多国政の権位にく人々を籠絡ろうらくし、大戦にあたっては、雲霞うんかのごとき大軍をすら、彼女の策謀一つで、またたく間に墓場に追いっている——というと、このマタ・アリは
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
んぬる正平しょうへいの昔、武蔵守むさしのかみ殿(高師直こうのもろなお)が雲霞うんかの兵を引具ひきぐして将軍(尊氏たかうじ)御所を打囲まれた折節、兵火の余烟よえんのがれんものとその近辺の卿相雲客けいしょううんかく、或いは六条の長講堂
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
すると其所そこには、残忍性にとめる在来の堕落霊どもが、雲霞うんかの如く待ち構えていて、両者がグルになって、地上の堕落せる人間に働きかけるから、人間の世界は層一層そういっそう罪と
そこに天然の岩の形で解脱〔仏〕母の像がありその東北に当って奇岩怪石が雲霞うんかのごとくにそばだって居る、そこに何か像のごとき天然に突兀とっこつとして突き立って居るものがある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
如何どうだ、この原書はと云ったら、塾中の書生は雲霞うんかごとく集って一冊の本を見て居るから、私は二、三の先輩と相談して、何でもこの本を写して取ろうと云うことに一決して
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
貴縉きけん紳士、夫人令嬢老若童婢と、雲霞うんかのごとく蝟集する中をよろめき歩く貸椅子屋の老婆、行列マルソウ番附プログラムを触れ売りする若い衆、コンフェッチをひさぐ娘など肩摩轂撃の大雑踏大混雑
雲霞うんかのごときわれわれに、表現を与えて呉れた作家の出現をよろこぶ者でございます。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その外を百姓や役人たちが雲霞うんかの如く取り巻いて気勢を揚げている様子だ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
番兵たちや、あらゆる町の人たちが、まるでどきどきやりながら、矢を射るあなからのぞいて見た。壁の外から北の方、まるで雲霞うんかの軍勢だ。ひらひらひかる三角旗や、ほこがさながら林のやうだ。
北守将軍と三人兄弟の医者 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
押し襲ってくる雲霞うんかの大群のふくれ雪崩なだれるような壮大な音になった。
罌粟の中 (新字新仮名) / 横光利一(著)
雲霞うんかのような騎兵は颶風ぐふうの中を駆けり、叫喚の声、ラッパの響き、至る所王位は震動し、諸王国の境界は地図の上に波動し、さやを払った超人の剣の音は鳴り渡り、そして人々は、彼が手に炎を持ち
砲手はこれだけで事足るのだが、その周囲附近には弥次馬やじうま兼援兵が雲霞うんかのごとく付き添うている。ポカーンと擂粉木が団子にあたるや否やわー、ぱちぱちぱちと、わめく、手をつ、やれやれと云う。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
われ百萬ひやくまん巨艦きよかんあり。 雲霞うんかごと將士しやうしあり。
櫓に上った村上義光は、はざまの板切って落とし、雲霞うんかのごとく寄せて来ている、寄せ手の眼前へ全身をあらわし、大音声に呼ばわった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
の大軍が、三路にわかれ、一道は曹休軍が洞口に進出し、曹真は南郡の境に迫り、曹仁ははや濡須じゅしゅへ向って、雲霞うんかの如く南下しつつあります」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秋の赤蜻蛉、これがまた実におびただしいもので、秋晴れの日には小さい竹竿ざおを持って往来に出ると、北の方から無数の赤とんぼがいわゆる雲霞うんかの如くに飛んで来る。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
んぬる正平しょうへいの昔、武蔵守むさしのかみ殿(高師直こうのもろなお)が雲霞うんかの兵を引具ひきぐして将軍(尊氏たかうじ)御所を打囲まれた折節、兵火の余烟よえんのがれんものとその近辺の卿相雲客けいしょううんかく、或ひは六条の長講堂
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
雲霞うんかのような原地人軍は、ついに前方五千メートルの向うの丘のうえに姿を現した。
さて、再び日比谷公園に立戻ると、行列は池の傍まで到着すると、雲霞うんかの如く詰めかけた群衆を前にして楽隊ジンタが浮き立つような調子で、(あなたと呼べば)という流行歌を演奏し始めた。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
市中の役人か何かは知りませぬが、市中の重立おもだった人が雲霞うんかごとく出掛けて来た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
とげ翌朝泉岳寺へ引取けるに大勢の見物は雲霞うんかの如く忽ち四方に評判聞えけりこゝに庄左衞門がいもうと美麗びれいにして三味線みせんなどよくひくゆゑ品川の駿河屋何某のもとへ縁付けるに庄左衞門が父十兵衞は古稀こきに近くこしは二重に曲居まがりゐるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山の手の遠方此方おちこちには、郷の者が戦に追われて、雲霞うんかのようにむらがっていた。秀吉は、黒鍬くろくわ(工兵)の組頭をよんで
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それと同時にその時まで雲霞うんかのように集まっていたオンコッコ軍が数を尽くしバタバタと地上へ転がった。
「殿さまも、もう幾十日、お風呂をお浴びなさらないかしれません。きっと殿さまのお肌にも、雲霞うんかのごとく、敵が立て籠っているかもしれませんよ」
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
現に盆地を巡っている丘の、すぐの向こう側にもその衆徒が、雲霞うんかのようにいるはずである。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「魏の大軍が、雲霞うんかのように見えた。あれよ、麓から三道にうしおのごとく見えるものすべて魏の兵、魏の旗だ。……」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし四方の国境には敵兵充ち充ち雲霞うんかの如しとは、笑止千万と云わなければならない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
乱箭毒弩らんせんどくどもものかは雲霞うんかのごとき大軍が一度に寄せたので、その勢力の千分の一も射仆いたおすことはできなかった。見る間に土嚢の山は数ヵ所に積まれた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さきに立ったは来島十平太で、あとに続いたのはゴルドン大佐、そうしてその後から雲霞うんかのように続々として現われでたのはゴルドンの引率した二十人の兵と、十平太の率いた二百人の武士
けれどひとたび魏のぜい雲霞うんかのごとく攻め来ったときは、五千の小勢は、到底、その抗戦に当り得ず、山上の本軍も、水を断たれて、まったく士気を失い、続々
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
有栖川宮熾仁ありすがわのみやたるひと親王を征東大総督せいとうだいそうとくに仰ぎまつり、西郷隆盛さいごうたかもり参謀、薩長以下二十一藩、雲霞うんかの如き大軍は東海東山とうかいとうざん、北陸から、堂々として進出した。そうして三月十五日を以て、江戸総攻撃と決定された。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
尾濃びのうの兵に、徳川家康の三河武士八千を加えて、およそ十万と称する軍勢が、鳰鳥におどりなぎさに遊ぶうららかな晩春四月の湖畔数里にわたって、雲霞うんかのごとく集まった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかしやや遠くは、物々し大軍です。生田の上から、湊川のかみに至るまで、およそ二万ぐらい、雲霞うんかのようにここを遠巻きに、徐々、近づきつつありまする!」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これらが蛮国王孟獲もうかくの打ち揚げた狼煙のろしによって、久しぶりに大きな刺戟を得、諸邦から軍勢をひきつれて、続々と糾合きゅうごうに応じ、たちまち雲霞うんかのごとき大軍団を成したのであった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがすべて玉砕してしまい、正行、正時、和田新発意しんぼち、そのほか附き従う一族旗本、正成いらいの旧臣たちも、すべて雲霞うんかのごとき敵中に没し去ッたきりふたたび帰って来なかったのだ。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雲霞うんかの如く寄懸よせかけたり
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)