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雪隠
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せっちん
ふりがな文庫
“
雪隠
(
せっちん
)” の例文
旧字:
雪隱
薪
(
まき
)
や材木を積むこと、川岸に小屋や
雪隠
(
せっちん
)
を建てること、二階に灯を点けることまで禁じましたが、夜ごとの火事騒ぎは少しも減らず
銭形平次捕物控:135 火の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
七ツ半近くお前さんが土蔵の
扉前
(
とまえ
)
でウロウロしているのを
雪隠
(
せっちん
)
の窓から見かけたものがあるというんだが、それはどうしたわけなんだ
顎十郎捕物帳:18 永代経
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
間もなく、彼が
雪隠
(
せっちん
)
から出てくると、なおべつの一名は、
小柄杓
(
こびしゃく
)
に水をたたえて待ち、傍らに寄り添うて、秀吉の手へ水をかけた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
古賀は黙って
跳
(
は
)
ね起きる。紙と手拭とを持って飛び出す。これから
雪隠
(
せっちん
)
に往って、顔を洗って、飯を食って、教場へ駈け附けるのである。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お種はその果樹園の中を通って往き、裏の馬小屋と
雪隠
(
せっちん
)
の境にたてた五右衛門風呂の口で、
前
(
さき
)
に来ている三人ばかりの人の順じゅんに入るのを待っていた。
蟹の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
便所という名が不潔だから、改めたのだとの事であります。便所と云い、
手水場
(
ちょうずば
)
と云い、
雪隠
(
せっちん
)
と云い、はばかりと云う名には、少しも不潔な意味はありません。
特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
他に隠れ場があろうとも見えないが、念のためと畳を上げ、壁をたたき、
竈
(
かまど
)
の奥から
雪隠
(
せっちん
)
の中までほとんど夜っぴてのぞきまわったが、猫の
仔
(
こ
)
一匹出て来はしない。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それは兵助親分の同意を得たわけではないが、誰か近くにいた
目明
(
めあか
)
しのお目こぼしで、駕籠から出して、無論、厳重な附添の下に
雪隠
(
せっちん
)
へ案内をしたのが運の尽きでした。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
醤油
(
しょうゆ
)
のことをムラサキという。
餅
(
もち
)
のことをオカチンという。
雪隠
(
せっちん
)
のことをハバカリという。そういうことを私は素直に
受納
(
うけい
)
れて今後東京弁を心掛けようと努めたのであった。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
いや/\お梅もまさか永禪和尚に惚れた訳でも無かろう、この和尚に借金もあり、身代の為にした事かと
己惚
(
うぬぼれ
)
て、遠くから差配人が
雪隠
(
せっちん
)
へ這入った様にえへん/\咳払いして
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
帰ると
溜息
(
ためいき
)
ついて曰く、全く田舎が
好
(
え
)
えナ、浅草なンか裏が狭くて、
雪隠
(
せっちん
)
に往っても
鼻
(
はな
)
ア
突
(
つっ
)
つく、田舎に
帰
(
けえ
)
ると
爽々
(
せいせい
)
するだ、親類のやつが百姓は
一日
(
いちにち
)
にいくら
儲
(
もう
)
かるってきくから
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
以て以前邦人が香の嗜み格別で、今日
雪隠
(
せっちん
)
へ往って手を洗わなんだり、朝起きて顔を洗わずコーヒーを口に含んで、
歯垢
(
はくそ
)
を
嗽
(
すす
)
ぎ落して飲んでしまう西洋人と、大違いたるを知るべし。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
その他、俗に
雪隠
(
せっちん
)
の化け物、舟幽霊、雪女等の怪談あれども、これらはみな幻視、妄覚より起こりたるものにして、
諺
(
ことわざ
)
に「幽霊の正体見たり枯れ尾花」の類なれば、説明するに及ばぬ。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
雪隠
(
せっちん
)
通
(
がよ
)
いに
梯子段
(
はしごだん
)
を登ったり降りたりしないでも、用をたせるだけの設けもある。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
如何様
(
いかよう
)
な立派な家にも必ず
雪隠
(
せっちん
)
があると同じように、何処の国でも蓋を開けてみれば幾らかは臭いところがあるが、それを日本人は正直に台所の隅々までほじる癖があるのは、却っていけぬ。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
最敬礼のもっともきらいなのは生蕃であった、生蕃はいつもかれを
罵倒
(
ばとう
)
した。生蕃は大沢一等卒が
牙山
(
がざん
)
の戦いで一生懸命に逃げてアンペラを頭からかぶって
雪隠
(
せっちん
)
でお念仏をとなえていたといった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
又はそこいらの
地物
(
じぶつ
)
や、自分より強い者の姿に化ける……なぞ、低級、卑怯な人間のする事は皆、かような虫の本能の丸出しで、
俗諺
(
ぞくげん
)
にいう弱虫、
蛆虫
(
うじむし
)
、
米喰
(
こめくい
)
虫、泣虫、
血吸
(
ちすい
)
虫、
雪隠
(
せっちん
)
虫、
屁放
(
へっぴり
)
虫
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それからと云うものはこの家に
奇
(
あや
)
しい事が
度々
(
たびたび
)
あって
驚
(
おど
)
ろかされた芸人も
却々
(
なかなか
)
多いとの事であるが、
或
(
ある
)
時
素人連
(
しろうとれん
)
の女芝居を興行した際、
座頭
(
ざがしら
)
の
某
(
ぼう
)
が急に腹痛を
起
(
おこ
)
し、
雪隠
(
せっちん
)
へはいっているとも知らず
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
世の
諺
(
ことわざ
)
に
謂
(
い
)
う「
雪隠
(
せっちん
)
で
饅頭
(
まんじゅう
)
を食う」
料簡
(
りょうけん
)
、汚い、けちなことである。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
汝
(
なんじ
)
竹藪の奥に生れて、その親も知らず、昼は
雪隠
(
せっちん
)
にひそみて伏兵となり、夜は
臥床
(
がしょう
)
をくぐりて刺客となる、
咄
(
とつ
)
汝の一身は総てこれ罪なり、人の血を吸ふは殺生罪なり、蚊帳の穴をくぐるは
偸盗
(
ちゅうとう
)
罪なり
刺客蚊公之墓碑銘:柩に収めて東都の俳人に送る
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
十四日
雪隠
(
せっちん
)
でプラス、マイナスと云う事を考える。
窮理日記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
大将
雪隠
(
せっちん
)
へ
這入
(
はい
)
るのに
火鉢
(
ひばち
)
を持って這入る。
正岡子規
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
揚座敷のほうは、いわゆる独房で、
縁付
(
へりつき
)
畳を敷き、
日光膳
(
にっこうぜん
)
、椀、給仕盆などが備えつけてあり、ほかに、
湯殿
(
ゆどの
)
と
雪隠
(
せっちん
)
がついている。
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
闇の晩であろうが、
雪隠
(
せっちん
)
へはいった時であろうが、寝ている間であろうがつけ狙うのである。これも、その頃の兵法としては
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうだい。逸見なんざあ、
雪隠
(
せっちん
)
へ這入って下の方を覗いたら、僕なんぞが、裾の間から
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
のちらつくのを見たときのような心持がするだろうなあ」
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「この通り、たった二た間の家だ。あとは台所に、押入に、
雪隠
(
せっちん
)
、
匿
(
かく
)
す場所も、隠れる場所もあるはずはない。踏込んで、床下なり天井裏なり、勝手に捜せ」
銭形平次捕物控:068 辻斬綺談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夕方に、彼は
雪隠
(
せっちん
)
へ用を
達
(
た
)
しに行って、南側の廊下を通った。長州藩主がその日の泊まりと聞く中津川の町の方は早く暮れて、遠い夕日の反射が西の空から恵那山の大きな傾斜に映るのを見た。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
なんとやらいう土地の百姓家で、夜になると
雪隠
(
せっちん
)
のそばへ妖怪が出る。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
とつか/\と
雪隠
(
せっちん
)
へ這入り
頓
(
やが
)
て出て参って
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「そう疑い深くてもこまるな。
雪隠
(
せっちん
)
に隠れて饅頭を食うような、卑しい真似はしない。柚子なんて娘は、おれの趣味じゃないよ」
雲の小径
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「たった今、京の長谷川
宗仁
(
そうにん
)
の急使をうけ、仔細、聞いたばかりじゃ。……
不愍
(
ふびん
)
ながら、使いの男は、
雪隠
(
せっちん
)
で刺し殺した。敵へ洩れてはならぬからだ」
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
覗いたって、小判が
蛙
(
かえる
)
に化けるわけじゃあるめえ。人間気の持ちようじゃ、銭箱も
雪隠
(
せっちん
)
も覗くだろうじゃないか。それだけの事で人一人縛るわけには行かねえよ
銭形平次捕物控:101 お秀の父
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その他、俗にいわゆる
舟幽霊
(
ふなゆうれい
)
、ウブメの幽霊、
雪隠
(
せっちん
)
のバケモノ等あり。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
半蔵は仮の
雪隠
(
せっちん
)
を出てから、焼け跡の方を歩いて、周囲を見回した。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
神田佐久間町の
焙烙
(
ほうろく
)
長屋のドンづまり。古井戸と長屋
雪隠
(
せっちん
)
をまむかいにひかえ、雨水が
溝
(
どぶ
)
を谷川のような音をたてて流れる。風流といえば風流。
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
まず駅舎へついたら、土地の東西南北、
宿
(
やど
)
の
雪隠
(
せっちん
)
や裏表を第一に睨んでおくこと。
刀
(
かたな
)
脇差
(
わきざし
)
はこじりを背中で
挟
(
はさ
)
むくらいに床の下へさしこんで寝ること。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
屋根の上へ石が降ったり、女どもが
雪隠
(
せっちん
)
へ行くと、
箒
(
ほうき
)
で顔を撫で廻したり、髪の毛がサラサラと障子に触ったり——、毎晩怪談噺の仕掛のような事が起るのです。
銭形平次捕物控:049 招く骸骨
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
実をいうと
今暁
(
こんぎょう
)
の出陣は、実に急速だったので、身に具足を着ける時間がやっとあったくらいで、
雪隠
(
せっちん
)
にはいって腹工合を整える
遑
(
いとま
)
すらなかったのだ。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もっともその晩、まだ宵の内に気分が悪いと言い出して、自分の部屋へ私と母親を呼び付けて大騒動したがね。
雪隠
(
せっちん
)
へ行くとケロリと
癒
(
なお
)
ったと言うから、安心して引取ったが
銭形平次捕物控:146 秤座政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
雪隠
(
せっちん
)
でこっそりと饅頭を食うようなケチなことをしないのが安部の本領なので、おおよそ考えたって、世間でいうようなものでないことは、安部を知るくらいのものはみな承知していた。
予言
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
岡山で誰かが自動車へ入れてくれた初平の果物の
籠
(
かご
)
など開く。
倉敷
(
くらしき
)
でいちど降りてうどん屋で
雪隠
(
せっちん
)
を借りる。雨はすこし
霽
(
あが
)
りもようだが、低い山まで雲をかぶっている。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何を馬鹿なことを言うのだ。拙者の来国俊は縁側の
刀架
(
とうか
)
にあったのだぞ——その時拙者は
雪隠
(
せっちん
)
に入って居たのだ。拙者に知られずに、縁側を刀架の側まで来る工夫があると思うか」
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「馬鹿だな。お前は。三日も帰らなきゃア騒ぐのももっともだが、夕方から見えなくなったのなら、まだ一と刻とも経っちゃいめえ。今頃は
雪隠
(
せっちん
)
から出て手を洗っているよ、行ってみな」
銭形平次捕物控:017 赤い紐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
橋廊下
(
はしろうか
)
の角にある
雪隠
(
せっちん
)
の手洗所の窓からだった。嘉兵衛の顔がそこに見えた。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雪隠
(
せっちん
)
の前に用意してある
刀架
(
とうか
)
に任せて置くのですが、何やら胸騒ぎがしたものか、刀架けには長い方の来国俊ひと腰だけを任せ、短い方は手に
提
(
さ
)
げたまま便所の中に入ってしまったのです。
銭形平次捕物控:246 万両分限
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
機舎
(
はたや
)
の中で、折角、拾ってやったのに、手にも触れんで、泣いてばかりおるから、自分の
袂
(
たもと
)
に入れておいたのじゃ。……そして
尾籠
(
びろう
)
な話じゃが、
雪隠
(
せっちん
)
の中で、退屈しのぎに、
細々
(
こまごま
)
と読んでしもうた」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
引っ切りなしに飲んで食って、百万遍も
称
(
とな
)
えていたんですもの、抜け出す暇なんかありゃしません。もっとも、
手水
(
ちょうず
)
ぐらいには立ったでしょうが、どんな長
雪隠
(
せっちん
)
でも四半刻(三十分)と姿を
銭形平次捕物控:060 蝉丸の香炉
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
清麿は、よろぼいながら、
雪隠
(
せっちん
)
の横の縁側から這いあがった。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「へッ、あんまり景気の良い話じゃありませんが、
雪隠
(
せっちん
)
へお百度ですよ」
銭形平次捕物控:097 許嫁の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
父の半蔵が、
雪隠
(
せっちん
)
の窓から
呶鳴
(
どな
)
った。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
雪
常用漢字
小2
部首:⾬
11画
隠
常用漢字
中学
部首:⾩
14画
“雪隠”で始まる語句
雪隠詰
雪隠口
雪隠草履