ひざま)” の例文
僕はほとんど宗教心に近い敬虔けいけんの念をもって、その顔の前にひざまずいて感謝の意を表したくなる。自然に対する僕の態度も全く同じ事だ。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あたかも言附られし役目を行うが如くに泰然自若として老人の死骸のもとに行き、そのそばひざまずきてそろ/\と死骸を検査し初めぬ。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「今では、理由よりも、ただ生涯のうちに、あいつを、俺の足もとにひざまずかせてやれば、それでよい。それが、望みだ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
市郎は更にひざまずいて底を覗いたが、底はただ暗いのみで何にも見えなかった。お杉は黙って其背後そのうしろに突っ立っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
佐々村村一は懺悔台の前にひざまずいた、熱心な罪深い信者のような、恐ろしい努力で此話を続けて居る様子です。
法悦クラブ (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そうです繁青年が、魔王のような仮面を冠った、青幇の会長の前にひざまずき、嘆願しているではありませんか。
よび來り簾の左右には伊賀亮常樂院其つぎには大膳藤井左京等並居る此時越前守ははるか末座にひざまづきてお取次を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幕太郎 その代り、あなたが、足下にひざまづけとおつしやれば、僕は、よろこんでその通りにします。(大急ぎで首筋の汗を拭く)暑いですな、この部屋は……。
頼母しき求縁(一幕) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
そうしてその婦人がさっきからずっとひざまずき続けているらしいのに気がつくと、私は急にその会堂のなかのいかにも寒々としているのを身にしみて感じた。……
風立ちぬ (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
お君の振舞ふるまいはいつもとは違って、物狂わしいほどに動いてみえました。それでも入って来たところの障子は締め切って、そして能登守の膝元へ崩折くずおれるようにひざまずいて
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お咲は泣きながら、咲二の前にひざまずいて、両手を合わせた。けれども彼はけろんとしていた。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
種彦は地にひざまずいて落ちたる二つの首級を交々かわるがわるに抱上げける人に物いう如くびていると、何時いつの間にやら、お園と思ったその首は幾年か昔おのれが西丸にしのまるのお小姓を勤めていた時
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
裾湯すそゆになつてますが、おとまりやすのなら、お風呂お召しやへえな。』とひざまづいた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
昨の汝が松風名月のうらみとこしなへに盡きず……なりしを知るものにして、今來つて此盛裝せる汝に對するあらば、誰かまた我と共にひざまづいて、汝を讃するの辭なきに苦しまざるものあらむ。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
必ずひざまずいて昇らなければならないことになっているのですが、あの、急な二十八段を膝で上るのですから、洋袴スカア卜の短い、この頃の若い女などは、随分余計な苦心をしなければなりません。
踊る地平線:10 長靴の春 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
翁はまだ、死んだ如く、説教壇の前にひざまずいて祈りを捧げている。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
ひざまづき、五人の小童こわつぱ——あなあはれ!——
(二人其処にひざまずく。)
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
渇仰かつぎやうつくひざまづき
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
Druerie と呼ぶ。武夫もののふが君の前に額付ぬかずいてかわらじと誓う如く男、女の膝下しっかひざまずき手を合せて女の手の間に置く。女かたの如く愛の式を
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
横さまにひざまずいて倒れたので、左の膝を少しく痛めたが、差したることでも無いらしい。彼は疼痛いたみを忍んですぐに起きあがった。その片手には消えた蝋燭を後生大事に握っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これを例するに日本の女の物思ふ時片手の上にうなじささへ物かんとする時ひざまづきたるももの上に両手を置きややななめに首を傾けて物いふさまその消行きえゆくが如き面影おもかげのいかに風情ふぜい深きや。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
たとえ心無い嬰児あかごでも思わずひざまずくに違いない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
マカロフが名にしばしはひざまづけ。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その盾には丈高き女の前に、一人の騎士がひざまずいて、愛と信とを誓える模様が描かれている。騎士の鎧は銀、女の衣は炎の色に燃えて、は黒に近き紺を敷く。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は思わずひざまずいて、天を拝した。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鬼神もひざまづけ
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
墓の前にひざまずいて云う。この手にて——この手にて君をうずめ参らせしを、今はこの手も自由ならず。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時代には発作の起るたびに、神の前におのれを懺悔ざんげする人の誠を以て、彼は細君の膝下しっかひざまずいた。彼はそれを夫として最も親切でまた最も高尚な処置と信じていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もし世の中に全知全能ぜんちぜんのうの神があるならば、私はその神の前にひざまずいて、私に毫髪ごうはつうたがいさしはさむ余地もないほど明らかな直覚を与えて、私をこの苦悶くもんから解脱げだつせしめん事を祈る。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼等かれら自然しぜん彼等かれらまへにもたらしたおそるべき復讐ふくしうもとをのゝきながらひざまづいた。同時どうじこの復讐ふくしうけるためにたがひ幸福かうふくたいして、あいかみに一べんかうことわすれなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
彼らは自然が彼らの前にもたらした恐るべき復讐ふくしゅうもとおののきながらひざまずいた。同時にこの復讐を受けるために得た互の幸福に対して、愛の神に一弁いちべんこうく事を忘れなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
赤い花、黄な花、紫の花——花の名は覚えておらん——色々の花でクララの頭と胸と袖を飾ってクイーンだクイーンだとその前にひざまずいたら、槍を持たない者はナイトでないとクララが笑った。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宗助は敷居際にひざまずいてかたのごとく拝を行なった。すると座敷の中で
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ敷居際しきゐぎはひざまづいてかたごとはいおこなつた。すると座敷ざしきなか
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)