うつたへ)” の例文
をとつひの夜平山が来て、用人ようにん野々村次平に取り次いでもらつて、所謂いはゆる一大事のうつたへをした時、跡部は急に思案して、突飛とつぴな手段を取つた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
たゞしあらためあしき御政事おんせいじ當時は何時にても此皷このつゞみうち奏聞そうもんするにていたとへば御食事おんしよくじの時にてもつゞみおとを聞給ひたちまち出させ給ひ萬民ばんみんうつたへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
時々とき/″\とほくから不意ふいあらはれるうつたへも、くるしみとかおそれとかいふ殘酷ざんこくけるには、あまりかすかに、あまりうすく、あまりに肉體にくたい慾得よくとくはなぎるやうになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
次第に通るうつたへの筋を、三つ股の源吉も、見廻り同心も、無視するわけには行きません。其場で繩を打たれて、お菊殺しの下手人は、これで三人になつたのです。
平貞盛等のうつたへによりて、かねて知れて居るところへ、経基が此言によつて、今までのさま/″\の事は濃い陰影をなして、新らしい非常事態をクッキリと浮みあらはした。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
其方共儀むこ夫等をつとら災難さいなんを歎き艱難辛苦かんなんしんくの上公儀巡見使じゆんけんしうつたへ出申立明了あきらかなるにより善惡判然と相あらはれ九助の寃罪ゑんざいそゝぎし信義しんぎ貞操ていさうの段厚くほめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
恐ろしい勢ひで八丁堀の組屋敷へ駈込みうつたへをしたのは、目のさめるやうな美女——それは一しきり江戸中を騷がせた兇賊きようぞく黒雲の彌十郎の娘。おいくといふ二十四五の凄い女でした。
御互おたがひ御互おたがひきるの、物足ものたりなくなるのといふこゝろ微塵みぢんおこらなかつたけれども、御互おたがひあたまれる生活せいくわつ内容ないようには、刺戟しげきとぼしい或物あるものひそんでゐるやうにぶうつたへがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうして見れば、堀の手紙によつて得た所は、今まで平山一人のうつたへで聞いてゐた事が、更に吉見と云ふものの訴で繰り返されたと云ふに過ぎない。これには決心をうながす動機としての価値はほとんど無い。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ね親分、相手がいやな事をしあがると、此處から眼と鼻の間の龍の口御評定所へ驅け込みうつたへをするからさう思へ——と言つて下さい。源太郎は取つて七十一、もう惜しい命ぢやねえ
自分じぶんいま腹痛ふくつうなやんでゐる。その腹痛ふくつううつたへいだいてると、豈計あにはからんや、その對症たいしやう療法れうはふとして、づかしい數學すうがく問題もんだいして、まあこれでもかんがへたらからうとはれたと一般いつぱんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さて捕方とりかたの事を言ひ付けると、三人共思ひも掛けぬ様子で、やゝ久しく顔を見合せて考へた上で云つた。平山がうつたへはいかにも実事じつじとは信ぜられない。例の肝積持かんしやくもちの放言をに受けたのではあるまいか。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
小間物屋與兵衞こまものやよへゑうりたるよしかれ金屋かなやへ持行しより此事顯れ則ち利兵衞與兵衞兩人うつたへたりかゝたしかなる證據しようこあるうへは少しも包む事なく白状はくじやういたせとまをされければ吉三郎思ひもよらぬ事の糺問たゞしあきはてけるが屹度きつと思案しあんするにこれかならずものゝ間違まちがひならんとつゝしんでかうべ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「縛らなくつてさ。これから南の御奉行所へ驅け込みうつたへだ」