“裸足:はだし” の例文
“裸足:はだし”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治17
太宰治8
宮本百合子6
石川啄木5
小栗虫太郎4
“裸足:はだし”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.6%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.3%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
だんだん近くになって見ると、ついて居るのはみんな黒ん坊で、眼ばかりぎらぎら光らして、ふんどしだけして裸足はだしだろう。
黄いろのトマト (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「毎晩、足の土踏まずが、かさかさして閉口へいこうでござる。われら、今は何の慾もない。裸足はだしで土がふみとうござる」
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、」振り向いて僕を見て、少し笑い、「ぼんぼん、なにを寝呆けて言ってんのや。ああ、いやらし。裸足はだしやないか。」
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
かぞえ年十四だが、十一、二歳にしかみえない。相変らず裸足はだしで泥まみれだ。鼻をらさなくなったのもつい近年である。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糸のようにせた裸足はだしのまましきりと地上に落ちた何物かを拾い上げては限りもなくさめざめと泣き沈むありさま
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
真黒な裸足はだしで末っ子の糸坊を脊負わされて学校へ通っている卯太郎の顔が、ありあり目の前に見えて信吉は苦笑いした。
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
やっと歩きだした二人目の子供が、まだよく草履をはかないので裸足はだしで冷えないように、小さい靴足袋を買ってやらねばならない。
砂糖泥棒 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「あたしの頭のことは、ほうっておいていいの……ごらんなさい、裸足はだしなのよ。こんなかっこうで家から追いだそうって言うの?」
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
玉葱やキャベツの収穫時とりいれどきには、彼の小さな弟や妹たちまでしり端折ぱしをりをして裸足はだしで手伝ひに出かけた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
と、庭先から、誰かわめいた。新七はびっくりして、裸足はだしのまま飛び出すと、番に付けておいた小者の一人が、
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこを走って来たのか自分でもわからないが、とにかく深夜の道を、お通は七宝寺の方へ向って、裸足はだしのまま人心地もなく駈けていた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母屋おもやの裏から、迅い人影が、庭木のなかへ隠れた。伝右衛門は、とび降りて裸足はだしのまま、そこへ駈けた。
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それでゐて、うまく喰はせる事にかけたら、巴里一流のホテルや、料理屋も裸足はだしといつた所ださうですよ。」
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
立ち上るや否や、おどろの髮をふり亂して、帶もしどけなく、片手に懷中の兒を抱き、片手を高くさし上げ、裸足はだしになつて驅け出した。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
これは自分が裸足はだしであったために無意識に植込みへ踏み込むのを恐れたためかも知れぬが、いずれにしても狼狽ろうばいの結果であった。
地異印象記 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
お寿々は、かんだかい声をあげて、往来まで走ったが、すぐ人目を思って、裸足はだしで泣く泣く帰って来た。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
掘られた土は冷やりナースチャの裸足はだしの甲にかかり、あたりには暑い草いきれと微かな土の匂いとがした。
赤い貨車 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
隨分近所の子供等と一緒に、裸足はだしで戸外の遊戯もやるにかゝはらず、どうしたものか顏が蒼白あを
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ところで画家は裸足はだしで、だぶだぶの黄ばんだズボンをはいているだけだが、ズボンはひもで締められ、その長い端がぶらぶら揺れていた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
藤野さんは唯一人、戸の蔭に身を擦り寄せて立つてゐたが、私を見ると莞爾につこり笑つて、『まあ、裸足はだしで。』と、心持眉をひそめた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あんなに美しかった女性群が、たった二三日のうちに、みんな灰っぽくなってしまって、桃色の蹴出けだしなんかを出して裸足はだしで歩いているのだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
三四人が懸声を合せて、流線型をひっくりかえした。そのはずみに、自分も裸足はだしになって大いに参加していた四つの健吉が、ころんところがされた。
播州平野 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ベルナアルさんが薄褐色カルメリトの労働士の衣に藁縄の帯をしめ、裸足はだしで畑の土を踏んでいた。
葡萄蔓の束 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
たけをは炉の自在にかかっている鍋からゆっくり三膳目をよそいながら、裸石じきの流し場へ裸足はだしで立って、しきりに唾をはいているまま母にきいた。
だるまや百貨店 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
彼は身震いを一つすると一緒に、前後も見ずに裸足はだしのまま、戸外おもてへ飛び出してしまった。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
多くは裸足はだしの儘でおのがじし校庭に遊び戯れてゐた百近い生徒は、その足を拭きも洗ひもせず、吸ひ込まれるやうに暗い屋根の下へ入つて行つた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
実はかれも、こんな場所でなければ、ハゼも釣ったり、裸足はだしで土も踏んでみたかったであろう。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昼間でも草の中にはもう虫のがしていましたが、それでも砂は熱くって、裸足はだしだと時々草の上にあがらなければいられないほどでした。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
裸足はだしになつてはひらうかとも思つたが、それはN君をただ恐縮させるばかりの大袈裟な偽善的な仕草に似てゐるやうにも思はれて、裸足にもなれなかつた。
津軽 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
雨でほどよく湿度を帯びた砂に私の草履ぞうり裸足はだしを乗せてしなやかに沈んで行く。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
年中、高架線の轟音と栄養不足で痛められている、裸足はだしの子供たちがガヤつく左右の室々。
人外魔境:08 遊魂境 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
僧徒らの衣形は、誤ち求めて山に入りたる若僧を除き、ことごとく蓬髪ほうはつ裸足はだしにして僧衣よごれ黒みたれど、醜汚の観を与うるに遠きを分とす。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
ざっとした空色のワンピースに、ストッキングなし……裸足はだしで、スリッパも穿いていない。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
裸足はだしで、ちらし髪で、牝牛めうしのような乳ぶさを胸からはだけ放している女房が、
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裸足はだしあざみを踏んづける! その絶望への情熱がなくてはならないのである。
闇の絵巻 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
兄さんと二人で砂浜へ裸足はだしで飛んで出て、かけっこをしたり、相撲をとったり、高飛びをしたり、三段飛びをしたり、ひるすぎからは、ゴルフなるものをはじめた。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
裸足はだしの、二人の式部官が次第書とつき合せてみると、もうお客はこれで終っている。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
彼はちあがって中敷ちゅうじきの障子を体の出られるぐらいに開け、そこからそっと庭へおりて、裸足はだしのままで冷びえした赭土あかつちを踏んで往った。
岐阜提灯 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私は海岸へ行く道順を教わると、すぐ裸足はだしになって、松林の中の、その小径こみちを飛んで行った。焼けた砂が、まるでパンの焦げるような好いにおいがした。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
縁もゆかりもない、かうした病人のそばに、自分一人でついてゐる事にゐたゝまれなくて、都和井のぶは、さつと、裸足はだしで、雨の中を、自分の家に戻つて行つたのだ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
伊吹も見えず、野も見えず、そして丘のぐるりに、十人ほどの黒法師の影が薄く立木みたいな裸足はだし姿を立ちならべて……何か、経文きょうもんを誦しはじめている。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春作は、裸足はだしのまま、本所の家まで走ッて帰った。生きている顔いろもなかった。
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奔馬や、帝の御車や、裸足はだしのままの公卿たちや、ほこをかかえた兵や将や、激流のような一陣の砂けむりが、うろたえた喚き声をつつんで、その前を通って行った。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裸足はだし戸外そとの遊戯もやるにかゝはらず、どうしたものか顔が蒼白く
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
などときかれるのは、たまらなく口惜しい。自分の方でも避けているので、まったく独りぼっちの彼は一日中裸足はだしの足の赴くがままに、山や河を歩きまわっていたのである。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
二人はそれから田圃たんぼの中にある百姓家を訪れた。百姓家では薄汚い女房かみさんが、裸足はだしのまゝ井戸側ゐどばた釣瓶つるべから口移しにがぶがぶ水を飲んでゐた。
炉端で新聞を読んでいた平三は、裸足はだしで戸外へ飛び出して行った。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
と言いながら、按摩は裸足はだしになって後ろへ逃げようとしました。
現場の写真 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
近くの箱の上に一人の裸足はだしの男がすわり、新聞を読んでいた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
矢は尽き刀折れて、多治見国長も、ついに櫓の上で立ち腹切った。——黄煙は暁の辻をむせばせ、四条方面の炎と共に、何も知らぬ洛中の庶民は、みな裸足はだしで戸外へとび出していた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことによると其処そこ立退たちのいているかも知れないと思って、父方の親類のある郊外のY村をして、避難者の群れにまじりながら、私はいつか裸足はだしになって、歩いて行った。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
裸足はだしには小砂ざらつく絵馬殿に幼なかりける子ら遊びにき
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
お次が、裸足はだしで飛び降りて、彼女の前をさえぎった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裸足はだしで駈けて来た娘がある。末の妹のお喜代だった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は、彼の生活についていろ/\に考へながら、裸足はだしでやはらかい砂の上を歩いた。……自分の身に迫つてゐる何物をも考へないで、他人のことでも考へてゐる間が、私に取つては吉日であつた。
吉日 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
小僧の草履は尻が無いんだから、半分裸足はだしである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これに従事するとなると丁稚小僧でっちこぞうとなり自転車で走ることも、炎天えんてんのもと、裸足はだしで畑に草取りするのも、自動車で会社に出勤することも含まれ、範囲が非常にひろくなる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「ムム、なるほど、良計良計。孫子も裸足はだしだろう」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕はズボン下に足袋たび裸足はだし麦藁帽むぎわらぼうという出で立ち、民子は手指てさしいて股引ももひきも佩いてゆけと母が云うと、手指ばかり佩いて股引佩くのにぐずぐずしている。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ことにもW君が、私の家の玄関にお酒を一升こっそり置いて行ったのを、その朝はじめて発見して、W君の好意が、たまらぬほどに身にしみて、その辺を裸足はだしで走りまわりたいほどに、苦痛であった。
酒ぎらい (新字新仮名) / 太宰治(著)
吾が裸足はだしの足を立つべき芝草のしとねあり、
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
と、色を失った羅宇屋らうやの親爺が裸足はだしで外へ飛びだした途端とたんに、そこの家で、朝飯を貰っていたお三輪と乙吉が、手に持っていた飯茶碗をとり落して、ワーッと一緒に泣いてしまった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裸足はだしで渡ったんでは、渡った分だないぞ!」
橋の上 (新字新仮名) / 犬田卯(著)
それに、御車は捨ててもうないので、帝は裸足はだしのままお歩きになるしかなかった。馴れないお徒歩ひろいなので、たちまち足の皮膚はやぶれて血をにじませ、見るだに傷々いたいたしいお姿である。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「禅学者にも似合わん几帳面きちょうめんな男だ。それじゃ一気呵成いっきかせいにやっちまおう。——寒月君何だかよっぽど面白そうだね。——あの高等学校だろう、生徒が裸足はだしで登校するのは……」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「例の裸足はだしの尼僧団のことさ。裸足の上に、夏冬ともセルの服一枚で過し、板の上に眠るばかりか、絶対菜食で、昔は一年のうち八ヶ月は断食すると云う、驚くべき苦行が教則だったとか云う話だがねえ。」
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
凸凹でこぼこの激しい、まるい石畳の間を粉のような馬糞ばふん藁屑わらくずが埋めて、襤褸ぼろを着た裸足はだしの子供たちが朝から晩まで往来で騒いでいる、代表的な貧民窟街景の一部である。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ナースチャもほかの子供も裸足はだしであった。
赤い貨車 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
やがて箸と茶わんとをからりとなげ捨てると、倉地は所在なさそうに葉巻をふかしてしばらくそこらをながめ回していたが、いきなり立ち上がってしりっぱしょりをしながら裸足はだしのまま庭に飛んで降りた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼女は暴れ回った。彼女は朝田の手を引っ掻いた。彼女は朝田を突き飛ばしておいて、廊下に駆け出した。しかし、夫の姿は見えなかった。彼女は白い足袋裸足はだしのまま、すぐに夜の街上へと駆け出していった。
猟奇の街 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
早曉の急行列車に乘らうとおもひ、朝寒の東京驛前の廣場に立つてゐると、どこから起き出して來たか、もう三々伍々の浮浪兒たちが、裸足はだしの爪さきたてて、雀みたいに、そここゝを見まはしながら歩いてきた。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
こゝの女達は、いつも裸足はだしである。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
「じゃ、裸足はだしになりねえな」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでまた廊下へ出て、廊下を日本間の方へ往ったのだ、往ってみると、怪しいささやきのしていたへやの前の雨戸が五六寸いているから、それを見ると、その開口あきぐちを広くして裸足はだしで庭へおりたさ
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それがすなわちラストヘビーというもののつもりなのでしょう、両手の指のまたかえるの手のようにひろげ、空気を掻き分けて進むというような奇妙な腕の振り工合で、そうしてまっぱだかにパンツ一つ、もちろん裸足はだし
トカトントン (新字新仮名) / 太宰治(著)
足は常に裸足はだしだ。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しろ裸足はだし
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
凱旋がいせんの女王の如く、誇らしげに胸を張って、ドミチウスや、おまえの世の中が来た、と叫び、ネロを抱いて裸足はだしのまま屋外に駈け出し、花一輪無き荒磯を舞うが如く歩きまわり、それから立ちどまって永いことすすり泣いた。
古典風 (新字新仮名) / 太宰治(著)
裸足はだしである。
「あなたは、こないだから『裸足はだしの少女』を見たい見たいと言ってたでしょう? そんなに行きたいなら、行ってもよござんす。そのかわり、今晩は、ちょっとお母さんの肩をもんで下さい。働いて行くのなら、なおさら楽しいでしょう?」
女生徒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
立ち上るや否や、おどろの髪をふり乱して、帯もしどけなく、片手に懐中ふところの児を抱き、片手を高くさし上げ、裸足はだしになつて駆け出した、駆け出したと見るや否や、疾風の勢を以て、かの声無く静かに練つて来る葬列に近づいた。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
片ちんばの下駄げたをはいて出て途中で気がついて、家へ引返すのもおそろしく、はきもの屋に立ち寄って、もうこれだけしかお金が無いのだと思うと、けちになって一ばん安い草履を買い、その薄っぺらな草履をはいて歩くとぺたぺたと裸足はだしで地べたを歩いているような感じで心細く
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
裸足はだしの少年靴みがき団を筆頭に、花売り娘、燐寸マッチ売子、いかさまさいの行商人、魔窟の客引き——そう言えば、このポウト・サイドには、土人区域の市場を抜けて回教堂モスクの裏へ出ると、白昼、数時間寄港の船員や旅行者を相手にする、陰惨な点で世界的に有名な一廓がある。
すると頭の上の葉の蔭で、土蔵の窓の銅張あかがねばりの扉がパタンとまる音が致しましたから、又ギックリして振り返りますと、今度は土蔵の戸前にガッキリと鍵をかけた音が致しまして、間もなく左手に、巻物をシッカリと掴んだお八代さんが裸足はだしのまま髪を振り乱して離家の方へ走って行きました。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ふいに二、三ヵ所から火を発し、同時に、城中の味方と味方とのあいだに、すさまじい激闘が捲起まきおこされたとき、それと同時に、荒木村重の家族や女たちばかりの住んでいる一曲輪くるわのものは、たれも彼もみな裸足はだしで、着のみ着のまま、大勢が一とかたまりになって城門の方へ雪崩なだれて行った。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてそれから、薬師堂の扉を開け放して提灯を点し、目撃者を作った事は云う迄もないが、久八が通り過ぎたのを見定めると、今度は胎龍の日和下駄を履いて、坐像の屍体を玄白堂に運び入れたのだ。つまり、支倉君が少し溝が深いと云ったのは、その時の足跡なので、帰りは裸足はだしで石の上から左壁近くに跳び、その足跡をすぐ、池溝の堰を開いて消したのだ。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)