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藁屑
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わらくず
ふりがな文庫
“
藁屑
(
わらくず
)” の例文
苔
(
こけ
)
でぬるぬるした板橋の上に立って、千穂子は流れてゆく水の上を見つめた。
藁屑
(
わらくず
)
が流れてゆく。いつ見ても水の上は
飽
(
あ
)
きなかった。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その夜は月が無かつた。彼等は一たん底まで沈んだが、やがて浮き上つて来たときには泥を含んだ
藁屑
(
わらくず
)
を肩や顔にかぶつて醜くかつた。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
もっともその代りには、監獄の御飯のように虫だの石だの
藁屑
(
わらくず
)
だのは入れてなかった。野菜の煮物は監獄と同じだと言っていいだろう。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
それから俵をきちんと重ね、縄は縄、
桟俵
(
さんだわら
)
は桟俵とわけて
纒
(
まと
)
め、
藁屑
(
わらくず
)
を掃き集め、そして地面にこぼれている米を拾った。
あだこ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
玄関前に、この間引越のときに
解
(
ほど
)
いた
菰包
(
こもづつみ
)
の
藁屑
(
わらくず
)
がまだ
零
(
こぼ
)
れていた。座敷へ通ると、平岡は机の前へ坐って、長い手紙を書き掛けている所であった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
雪が溶けた頃になって、一里も離れている「隣りの人」がやってきて、始めてそれが分った。口の中から、半分
嚥
(
の
)
みかけている
藁屑
(
わらくず
)
が出てきたりした。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
水面一杯に繁茂した水草の葉の外に、その辺は丁度ゴミの流れ寄る箇所と見えて、
藁屑
(
わらくず
)
などが一面に漂っている。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
起きあがってみて、彼らが驚いたことには、畳の上にも、ふとんの中にも、
藁屑
(
わらくず
)
がさんざんに散らかっていた。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
凸凹
(
でこぼこ
)
の激しい、
円
(
まる
)
い石畳の間を粉のような
馬糞
(
ばふん
)
の
藁屑
(
わらくず
)
が埋めて、
襤褸
(
ぼろ
)
を着た
裸足
(
はだし
)
の子供たちが朝から晩まで往来で騒いでいる、代表的な貧民窟街景の一部である。
女肉を料理する男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
真っ暗で何も見えはしないが、
石室
(
いしむろ
)
のような狭い部屋であるらしいことと、足音のしないように、底に
藁屑
(
わらくず
)
が厚く敷き詰めてあることだけはお蔦にもよくわかった。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
さア思う存分の自由を与えてやるから足を延ばせといわれても逆に不安を感じ水に
溺
(
おぼ
)
れんとするものが、何物か例えば棒切れや
藁屑
(
わらくず
)
でさえも握りしめるといった風に
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
すると、お杉は、泥溝の水面で静かにきりきりといつまでも廻っている一本の
藁屑
(
わらくず
)
を眺めながら、誰か親切な客でも選んで、一度日本へ帰ってみようかとふと思った。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
しかし残忍な人
雪崩
(
なだれ
)
は、彼女を
藁屑
(
わらくず
)
みたいに押し流した。その間に、乗合馬車の馬が一頭、すべって、アスファルトの上に倒れて、クリストフの前に土手をこしらえた。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「うむ。」と腰を
伸
(
のば
)
して老婆は起き、「やれ、
汚穢
(
むそ
)
うござります。」
藁屑
(
わらくず
)
を
掻寄
(
かきよ
)
せて
一処
(
ひとつ
)
に集め
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
広漠
(
ひろびろ
)
とした耕地一帯をうるおす、
灌漑
(
かんがい
)
用の川だったので、上流からは菜の葉や大根の葉や、
藁屑
(
わらくず
)
などが流れて来ていましたが、どうでしょう、流れて来たそれらの葉や藁屑が
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お前たちふたりの
嘴
(
くちばし
)
で、地上にありとあらゆる幸福の
藁屑
(
わらくず
)
をつまみ取って、それで生涯の巣を作るがいい。愛し愛さるることは、若い時には麗しい奇蹟のような気がするものだ。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
暗黒の底に
水飴
(
みずあめ
)
のように流れ拡がる夥しい平炉の白熱鉱流は、広場の平面に落ち散っている紙屑、
藁屑
(
わらくず
)
、
鋸屑
(
おがくず
)
、塗料、油脂の類を片端から燃やしつつグングンと流れ拡がって行く。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いや、平面と呼ぶべくそれはあまりにでこぼこして、汽車を迎えるために
撒
(
ま
)
かれた小さな水たまりが、
藁屑
(
わらくず
)
と
露西亜
(
ロシア
)
女の唾と、
蒼穹
(
そうきゅう
)
を去来する
白雲
(
はくうん
)
の一片とをうかべているだけだった。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
どこから持って来たか
藁屑
(
わらくず
)
や
髪
(
かみ
)
の毛などを
敷
(
し
)
いて臨時に
巣
(
す
)
がつくられていました。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
見るも
無慙
(
むざん
)
に
縊
(
くび
)
り殺されて、ボロと
藁屑
(
わらくず
)
の上に、醜い死骸を横たえております。
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
歳
(
とし
)
を取ったどすぐろい汚水、死に馬の眼のような水溜まりだった。水面には棒切れや
藁屑
(
わらくず
)
が浮いていた。岸に幾株かの青い若葉の猫柳。
叢
(
くさむら
)
の中からは折り折り蛙が飛び込んだ。鈍い水の音を立てて。
汽笛
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
別に何も入っていないが、その
辺
(
あたり
)
には
真黒
(
まっくろ
)
な
煤
(
すす
)
が、
堆
(
うずたか
)
く
積
(
つも
)
っていて、それに、木の
片
(
きれ
)
や、
藁屑
(
わらくず
)
等
(
など
)
が、乱雑に
散
(
ちら
)
かっているので実に目も当てられぬところなのだ、それから玄関を入ると、
突当
(
つきあた
)
りが台所
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
藁屑
(
わらくず
)
や新聞紙のはみ出た大きな木箱が幾個か店先にほうり出されて、広告のけばけばしい色旗が、活動小屋の前のように立てならべてある。そして気のきいた手代が十人近くも
忙
(
いそが
)
しそうに働いている。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
兄から貰った垂氷を、私はお膳の傍に置いて、それを見ながらゆるゆると食事をしましたが、終った頃には、もうすっかり
痩
(
や
)
せ細って、コップの底には
藁屑
(
わらくず
)
まじりの濁った水が
溜
(
たま
)
っているだけでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
と与八は膝の
藁屑
(
わらくず
)
を払って、台や、
槌
(
つち
)
を片寄せながら
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのほかの人間はひっくるめて薪ざっぽか
藁屑
(
わらくず
)
にすぎない、決してほかの縁談には耳をかさず、いつまでも待っていた。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もとより
藁屑
(
わらくず
)
も
綿片
(
わたぎれ
)
もあるのではないが、
薄月
(
うすづき
)
が
映
(
さ
)
すともなしに、ぼっと、その仔雀の身に添って、
霞
(
かすみ
)
のような気が
籠
(
こも
)
って、包んで
円
(
まる
)
く
明
(
あかる
)
かったのは、親の
情
(
なさけ
)
の
朧気
(
おぼろげ
)
ならず
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
親指と人差し指とで、一文のねうちもない
藁屑
(
わらくず
)
のようにそれらをへし折ってしまった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その崩壊の恐怖と歓喜とのうちに、クリストフもまた、自然の法則を
藁屑
(
わらくず
)
のように粉砕する旋風に運ばれて、落ちていった。彼は息を失っていた。神の中へのその墜落に酔っていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
見るも
無慙
(
むざん
)
に
縊
(
くび
)
り殺されて、ボロと
藁屑
(
わらくず
)
の上に、醜い死骸を横たえております。
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その傍では、黄色な
雛
(
ひな
)
の死骸が、菜っ葉や、靴下や、マンゴの皮や、
藁屑
(
わらくず
)
と一緒に首を寄せながら、底からぶくぶく噴き上って来る真黒な泡を集めては、一つの小さな島を泥溝の中央に築いていた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
遠江
(
とおとうみ
)
のくに浜松城の
外曲輪
(
そとぐるわ
)
に、お繩小屋といって軍用の繩や
蓆
(
むしろ
)
を作る仕事場がある、板敷のうちひろげた建物で、今しも老若四五十人の女たちが
藁屑
(
わらくず
)
にまみれて仕事をしていた。
日本婦道記:萱笠
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あれを修道院に持っていかなかったことを、お前は残念がっていたものだ。お前は幾度私を笑わしたことだろう。雨が降ると、
溝
(
みぞ
)
の中に
藁屑
(
わらくず
)
を浮かべて、それが流れてゆくのを見ていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
ずたずたになれる
筵
(
むしろ
)
の上に、
襤褸切
(
ぼろきれ
)
、
藁屑
(
わらくず
)
、
椀
(
わん
)
、皿、鉢、口無き土瓶、
蓋
(
ふた
)
無き
鍋
(
なべ
)
、足の無き
膳
(
ぜん
)
、手の無き十能、一切の道具
什物
(
じゅうもつ
)
は皆
塵塚
(
ちりづか
)
の産物なるが、点々散乱してその怪異いうべからず。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分一人で一つの世界だとうぬぼれながら、人生の河から
藁屑
(
わらくず
)
のように押し流されてる、この憐れな芸術家めにたいして、医者たちの方では、皮肉な多少軽侮的な
憐憫
(
れんびん
)
の情をいだいていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
息をするたびに
藁屑
(
わらくず
)
や塵埃を吸いこむことになる、床は低く、その下の地面はいつも湿っていて乾くひまがない、こんなところに寝起きをしていれば、病気にならないのがふしぎなくらいだ
赤ひげ診療譚:05 徒労に賭ける
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「ばかども、気でも狂ったのか。のろまばかりそろってやがる。時間をつぶすばかりじゃねえか。籤引きをするっていうのか。じゃんけんか、
藁屑
(
わらくず
)
か、名前を書いて帽子に入れてか……。」
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
髪毛はひと掴みの
藁屑
(
わらくず
)
のようにもつれているし、頸すじや手足には垢がよれている、着物はいつ仕立てたとも見当のつかぬ古さで、継いだところも継がぬところもすっかり綻び、ひき裂け
お繁
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
藁
漢検準1級
部首:⾋
17画
屑
漢検準1級
部首:⼫
10画
“藁”で始まる語句
藁
藁草履
藁葺
藁屋
藁屋根
藁沓
藁束
藁苞
藁人形
藁火