腐敗ふはい)” の例文
カム人でも余程チベット風に染みて腐敗ふはいした奴はともかく、そうでない限りそんな人間はまずカム種族の中から擯斥ひんせきされてしまうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そののち世の中の腐敗ふはいを聞き宗教家にならんとまでかんがえ込んだことあり、また学者となって身を立てようという考えを起こしたこともある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかるにこゝ一大いちだい事件じけんおこつた。それはほかでもない、吾等われら生命せいめいつなたの沙魚ふかにくがそろ/\腐敗ふはいはじめたことである。
もしこの二つのことに十分の成功を収めるならば、府県政や国政の腐敗ふはい堕落だらくはおのずからにして救われるであろう。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
その藻の堆積たいせき腐敗ふはいし、絶望的なにおいを放っていた。まことにそれは眩暈めまいのするようないやな臭気であった。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ただ金を所有している人が、相当の徳義心をもって、それを道義上害のないように使いこなすよりほかに、人心の腐敗ふはいを防ぐ道はなくなってしまうのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして上位者たちの腐敗ふはいは——一般の不安——跳梁ちょうりょうする死によってこの都市のおちいった非常事態——と相まって、下層の人たちのある道徳的荒廃をひき起した。
その通りに心掛けていたのだが、どういうものか足が早くて水密桃など瞬く間に腐敗ふはいした。店へかざっておけぬから、辛い気持で捨てた。毎日、捨てる分が多かった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
また本当に自分の親愛なものの心を停滞させ腐敗ふはいさせ無い為のやはり叡明えいめいな愛の作業だと思います。
木にもせよ、竹にもせよ、くさにもせよ、植物質の原料げんれうにて作りたるものは腐敗ふはいし易き事勿論もちろんなれば、其今日に遺存いぞんせざるの故を以て曾て存在そんざいせざりし證とは爲すべからず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
しかしはえを取りつくすことはほとんど不可能ふかのうに近いばかりでなく、これを絶滅ぜつめつすると同時に、うじもこの世界から姿すがたを消す、するとそこらの物陰ものかげにいろいろの蛋白質たんぱくしつ腐敗ふはいして
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私は、校長先生と御一緒に、腐敗ふはい、堕落しております現代の自分勝手な、利己主義一点張の男性の方々に、一つの頓服薬とんぷくやくとして「火星の女の黒焼」を一服ずつ差し上げたいのです。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それからは蜘蛛は、もう一生けん命であちこちにとおも網をかけたり、夜も見はりをしたりしました。ところが困ったことは腐敗ふはいしたのです。食物しょくもつがずんずんたまって、腐敗したのです。
蜘蛛となめくじと狸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
何しろ幾百年來ねんらい腐敗ふはいしたあらゆる有機體いうきたいの素を吸込すひこむで、土地はしツけてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
じゃによって、かかる戦死者の身体より、健全なる部分を切取り、その腐敗ふはい前に処置をなし、分類して長期保存に耐えるようになし、それから時を見てわが人体集成手術をほどこすのである。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
但馬守たじまのかみ與力よりきどもをおどかしけていて、それから町家ちやうかうへくばつた。すると其處そこには、あらゆる腐敗ふはいが、鼻持はなもちもならぬまでにどろ/\と、膿汁うみしるのやうな臭氣しうきを八ぱうながしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
うちかれよめをとつてちひさな世帶しよたいつてかせぐことになつた。よめもなく懷姙くわいにんしたが胎兒たいじんでさうして腐敗ふはいしてた。自分じぶん他人ひとかさだといつた。二三にんうまれたがどれも發育はついくしなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あるひ暑中しよちう葬禮さうれいのばして死人しびと腐敗ふはいするもあり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
前にも述べましたようにチベット政府は腐敗ふはいきわまって、賄賂わいろ次第でどちらへでも向くのですから、こんな政府を相手にすることは出来ないけれども
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
必ずや天下人心の腐敗ふはいとか、政党よろしきを得ぬとか、ひととおり何人なんぴと首肯しゅこうするような理由を述ぶるであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
最初さいしよから多少たせうこの心配しんぱいいでもなかつたが、かくめづらしき巨大きよだいうをの、左樣さう容易ようい腐敗ふはいすることもあるまいと油斷ゆだんしてつたが、その五日目いつかめあさわたくしはふとそれと氣付きづいた。
ず予めここで述べなければならないことは前論士は要するに仏教特に腐敗ふはいせる日本教権に対して一種骨董こっとう的好奇心を有するだけで決して仏弟子でもなく仏教徒でもないということであります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「やはり政党の腐敗ふはい憤激ふんげきしてのことでしょうか。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
もちろんただ上記の二つの例をもって、米国には社会党のさわぎもなく、政治上の腐敗ふはいもなく、自治の精神が完全無欠むけつに発達しているというは僕の意ではない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)