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脅
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おび
ふりがな文庫
“
脅
(
おび
)” の例文
默つて振り返ると、勝藏の娘のお秋が、此上もなく
脅
(
おび
)
えた樣子で、自分の袂を噛んだり揉んだり、平次の後ろから追ひすがるのです。
銭形平次捕物控:257 凧糸の謎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
めったに、物事を疑ってみることをしない彼女だけに、事の意外に打たれると、驚き方も、人よりはひどく、そして
脅
(
おび
)
えやすかった。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なぜかしどろもどろとなって、うろたえ
脅
(
おび
)
えながら、逃げるように向うへ走り去りました。——まことに奇怪と言うのほかはない。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
そうして、雨の中を
根
(
こん
)
好
(
よ
)
く探して歩いたが、怪物の正体は遂に判らなかった。私は夜もすがらこの奇怪なる音楽のために
脅
(
おび
)
やかされた。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
商売は其の日の運不運だから、それはまあよいとして、
此頃
(
このごろ
)
頻りに手詰まって来た金の運転には暗い気持の中に嫌な
脅
(
おび
)
えさえ感じられた。
とと屋禅譚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
仮住
(
かりずま
)
いの生活も、いつか三年を数えていた。
噂
(
うわさ
)
に
脅
(
おび
)
え、風聞に胸を躍らせ、一日たりとも、心の安まる暇のない生活であった。
現代語訳 平家物語:11 第十一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
荒浪の天うつ波の逆まきのとどろきが上、あああはれ、また、向き向きに、稲妻の
青
(
さを
)
の
脅
(
おび
)
えに連れ連れ乱る、啼き連れ乱る。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
聞いている子供たちは下手な話手の言葉から、もはや遺伝になっているその凄惨な状景を描き、
脅
(
おび
)
えることに満足していた。
白い壁
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そうして、それ
等
(
ら
)
のすべてが彼を無言のうちに
嘲
(
あざけ
)
り、
脅
(
おび
)
やかしているかのような圧迫感に打たれつつ、又もガックリとうなだれて歩き出した。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
竹亭寒笑が滝川内膳に
脅
(
おび
)
やかされて大助の身辺を密偵したこと、寅寿が梅八をさそい出した始終、寒笑が三当旗を盗み出そうとしたことから
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
だが、人間豹の怪しげな言葉を聞き、さも自信ありげなせせら笑いを耳にすると、さすがに
脅
(
おび
)
えないではいられなかった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私の感覚は
脅
(
おび
)
えて、石のやうに竦んでしまふばかりだつた。持つて来た書物が消毒室から帰つて来るまでの間、私は全く死人のやうになつてゐた。
柊の垣のうちから
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
それに彼女は、自分がそう云う
躾方
(
しつけかた
)
をされたことがないので、伯母の折檻が始まると、
脅
(
おび
)
えたような眼つきをして伯母の顔を盗み
視
(
み
)
るのであった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
東京市民は空襲警報にしきりと
脅
(
おび
)
え、太平洋では
彼我
(
ひが
)
の海戦部隊が微妙なる戦機を狙っているという場面であった。戦争は果して起るのであろうか。
人造人間事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして気味わるく
物凄
(
ものすご
)
い顔をした、雲助のような男たちに
脅
(
おび
)
やかされたり、
黒塚
(
くろづか
)
の
一軒家
(
いっけんや
)
のような家に
泊
(
とま
)
って、
白髪
(
しらが
)
の
恐
(
おそ
)
ろしい
老婆
(
ろうば
)
に
睨
(
にら
)
まれたりした。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「黒い男をですかえ。」と、ヒステリー風の女は眉毛のあたりに青い波を打たせて
脅
(
おび
)
えるような声でいった。
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
自分は感冒に対して、
脅
(
おび
)
え切ってしまったと云ってもよかった。自分は出来るだけ予防したいと思った。最善の努力を払って、
罹
(
かゝ
)
らないように、しようと思った。
マスク
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして父親は父親でまだ見たこともない悲しげな眼色をしていたからである。娘はそういう父と母との間に、自分の心がひとりで
脅
(
おび
)
やかされ縮むような気がした。
みずうみ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
最初に視線が合ったとき、背筋を走りぬけた
戦慄
(
せんりつ
)
は、あれが私の
脅
(
おび
)
えの最初の
徴候
(
ちょうこう
)
ではなかったか。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
その手に彼は専制君主の力を示す
笏
(
しゃく
)
というべき
鞭
(
むち
)
をふりかざしていた。正義の鞭は王座の背後の三本の
釘
(
くぎ
)
にかけてあり、悪事をはたらくものを絶えず
脅
(
おび
)
やかしていた。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
しかも、そんなに戦き
脅
(
おび
)
えながら、僕はどのように熱烈に人間を恋し理解したく思っていたことか
火の唇
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
あたしが
脅
(
おび
)
えきっていると、
怖
(
こわ
)
くはない、加頭の兄さんで、おとなしい人だと家の者がいった。
旧聞日本橋:06 古屋島七兵衛
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
この
真面目
(
まじめ
)
くさった「そうか」が重なるたびに、津田は彼から
脅
(
おび
)
やかされるような気がした。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
菊丸は荒々しい環境に
脅
(
おび
)
えて、ぐったりと弱りこんでしまったが、七日目ぐらいから、
果敢
(
はか
)
ないようすになり、手足をひきつらせたり、うわごとを言ったりするようになった。
呂宋の壺
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その音に
脅
(
おび
)
えたのであらうか、今までは音無しく
睡入
(
ねい
)
つて居たらしい彼の二疋の犬は、その時床の下からほの白く出て来るや否や、又いつものあの夕方の遠吠えを初めた……。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
わたしにすつかり
脅
(
おび
)
えてゐるのだ。わたしは階段の登り口から台所をチラと見た、婆やも後ろを向いたきり黙つて用をしてゐる。わたしは物足りない、孤独な心持で二階に上つた。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
と、
脅
(
おび
)
えたような声で云ったのは佐五衛門であった。でも、すぐに幾度も頷き
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その
勢
(
いきおい
)
にすっかり
脅
(
おび
)
えて、子供達は
干潟
(
ひがた
)
の
寄居虫
(
やどかり
)
のようにあわてて逃出した。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
しかし見えない鞭の影は絶えず彼女を
脅
(
おび
)
やかしてゐた。
一塊の土
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これは彼を真底から
脅
(
おび
)
やかすものではないだろうか。
最初の苦悩
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
私は
脅
(
おび
)
えながら
肯
(
うなず
)
いたのだった。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
さう言へばガラツ八の後ろに、大町人の若旦那と言つた若い男が、ひどく
脅
(
おび
)
えた樣子で、ヒヨイヒヨイとお辭儀をして居るのです。
銭形平次捕物控:168 詭計の豆
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
こちらへさやさやとつつましやかに
衣
(
きぬ
)
ずれの音を立てながら、大役に
脅
(
おび
)
えおののいているのに違いない菊路が導かれて来た
気配
(
けはい
)
でした。
旗本退屈男:08 第八話 日光に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
脅
(
おび
)
えの中に必死を持った形相は、何とも物凄い。彼は馬をそこへ捨てたまま、木の根、岩かどにしがみついて、道なき所を越えはじめた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
婚約中の男女の初旅にしては主人はあまりに甘くない舞台を選んだものだと私は少し
脅
(
おび
)
えながら主人のあとについて行った。
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ハッキリした予感と、その予感に
脅
(
おび
)
やかされつつある彼の全生涯とを、非常な急速度で頭の中に廻転させたのであった。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
磯長
(
しなが
)
の小ゆるぎの荒浪千鳥。荒浪の
天
(
そら
)
うつ波の逆まきのとどろきが上、あああはれ、また向き向きに、稲妻の
青
(
さを
)
の
脅
(
おび
)
えに連れ連れ乱る。啼き連れ乱る。
観想の時:――長歌体詩篇二十一――
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
風呂槽からザアザアと水をかぶっていると、隣の台所で、清の
脅
(
おび
)
えたような声が、ふと、旗男の耳にひびいた。
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それを聞くと、川手氏は
脅
(
おび
)
えたように、キョロキョロとあたりを
見廻
(
みまわ
)
した。さりげなく装っているけれど、心の底では、何者か思い当る人物があるらしく見える。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「助けてえ」と彼女は
脅
(
おび
)
えきった相で一生懸命ついて来る。
暫
(
しばら
)
く行くと、路上に立はだかって、「家が焼ける、家が焼ける」と子供のように泣喚いている老女と
出逢
(
であ
)
った。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
脅
(
おび
)
えたように叫んだ一人はつと浮き腰になり、すぐ何かいすくめられたように身体をこちんと固くした。他の女は
手拭
(
てふ
)
きを帯に
挾
(
はさ
)
んで見るからにいそいそと立ちあがった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
他人
(
ひと
)
にころされるうーと叫んだ声がまだ耳殻にこびりついていた。心は
脅
(
おび
)
えきっていて、布団の中に深く首を押し込んで眼を閉じたままでいると、火柱が眼先にちらついた。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
見ると、彼の美しい顔の半面は、薄気味の悪い
紫赤色
(
しせきしょく
)
を呈している。それよりも、信一郎の心を、
脅
(
おび
)
やかしたものは、唇の右の端から、
顎
(
あご
)
にかけて流れる一筋の血であった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ふだんあんなに陽気で、罪のない
悪戯
(
いたずら
)
をしては家中の者を笑わせていた千代子が、恐ろしい出来事のためにすっかり
脅
(
おび
)
え、美しい
眸
(
ひとみ
)
は絶えず襲われているように
落着
(
おちつ
)
かなかった。
殺生谷の鬼火
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
江戸三百年、どんなに
無辜
(
むこ
)
の民が泣いたか知れない、
脅
(
おび
)
やかされた牢屋のあとだ。
旧聞日本橋:17 牢屋の原
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
桜島に来て以来、このことは
常住
(
じょうじゅう
)
私の心を遠くから鈍く
脅
(
おび
)
やかし続けている。——
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
夜な/\
睡
(
ねむ
)
りを
脅
(
おび
)
やかす無気味な夢魔を追い拂うことが出来なかったのであろう。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
心に恐ろしい
脅
(
おび
)
えがあった。その脅えははなはだ道徳的なものだった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
そう言えばガラッ八の後ろに、大町人の若旦那といった若い男が、ひどく
脅
(
おび
)
えた様子で、ヒョイヒョイとお辞儀をしているのです。
銭形平次捕物控:168 詭計の豆
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
林冲といえば、
梁山泊
(
りょうざんぱく
)
以外でも、「当代の
小張飛
(
しょうちょうひ
)
」という勇名がある。それには一丈青も女ごころの
脅
(
おび
)
えにふと吹かれたものか。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
脅
常用漢字
中学
部首:⾁
10画
“脅”を含む語句
脅迫
脅威
脅喝
威脅
脅迫状
白痴脅
脅嚇
虚仮脅
鳥脅
一脅
音脅
脅退
脅迫談判
脅迫観念
脅迫者
脅迫感
脅腹
脅曳
脅怖
脅威挑戦
...