おわり)” の例文
そういわれれば誰でも面会のおわりへ来たことに気がつくものである。臼井青年は、いい足りなさそうな顔付で、その部屋を出て行った。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一 角力取すもうとり老後を養ふに年寄の株あり。もし四本柱に坐する事を得ばこれおわりを全くするもの。一身の幸福これより大なるはなけん。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
またなんじらのためにすべてのひとにくまれん。されどおわりまでしのぶものはすくわるべし。このまちにて、めらるるときは、かのまちのがれよ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ある人はヨブ記のはじめおわりのみを読みて物的恩恵は必ず悔改に伴うべきものとなし、前者において足らざるは後者において足らざるによると考う。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
私はそれを聞いて、成程なるほど当然私が書く材料だと思った。なにが当然だかは、ここに説明せずとも、この小説をおわりまで読めば自然に分ることである。
何者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
が、貴女には既に心を許して、秘蔵の酒を飲ませた。海のはて、陸のおわり、思ってかれない処はない。故郷ふるさとごときはただ一飛ひととびまばたきをするかれる。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
釈迦如来の知らざるところ、親鸞上人の知らざるところなり、嗚呼あああに偉ならずや、予はなおおわりのぞんで一言せん。
絶対的人格:正岡先生論 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
一、百韻の月の定座は表のおわりより二句目、裏(名残の裏を除く)の九句目なり。花は裏の終より二句目なり。百韻にては殊に月花の定座に拘泥すべからず。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
おわりに、日本の昭和遊撃隊よ。われはおん身と戦うことをよろこぶ。太平洋の墓場は、おん身をまっているぞ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
おわりのぞみ、私の妻もあなたのわれ負わるゝ数々かずかずの重荷に対し、真実御同情申上げる旨、呉々くれぐれも申しました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
中世のおわり頃から、それが四句二十六字の小唄に統一せられ、はやくその大部分を喪失したことは、一方には保存せられる民謡の言葉が存外に新らしいことにより
二世勝三郎はおわりに臨んで子らに遺言ゆいごんし、勝久を小母おばと呼んで、後事こうじを相談するがいといったそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
相沢宗三郎はおわりを知らず、潮吹ひょっとこの権次は坊主になったと言うことです、お駒に膝を濡らされて以来、よくよく骨身に徹して世の中がつまらなくなったのでしょう。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
院長いんちょうおわりといには赤面せきめんして。『いや、あれは病人びょうにんです、しかし面白おもしろ若者わかもので。』とこたえた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
若しくは奥仙丈山の条のおわりに「凡ソ此筋奥仙丈ノ諸山、皆連貫一脈シテ金峰ノ羽翼ナリ」
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
然しこの手紙をおわりまで読んで下されば、必ず私のいう意味を了解されるでしょう。
悪魔の弟子 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
東洋和漢の旧筆法に従えば、氏のごときは到底とうていおわりまっとうすべき人にあらず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
同乗するもの八人、程、しょう、楊、牛、ひょう、宋、史なり。は皆涙をふるって別れまいらす。帝は道を溧陽りつように取りて、呉江ごこう黄渓こうけいの史彬の家に至りたもうに、月のおわりを以て諸臣またようやあいあつまりて伺候しこうす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この己のくるしみをお前の照すのが、今宵をおわりであれば好いに。
既に旅のおわりに近づきました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
その三十九書中、はじめの十七書は歴史、おわりの十七書は預言、そしてその間の五書すなわちヨブ記、詩篇、箴言しんげん、伝道之書、雅歌は心霊的教訓である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ゴンクウルはその著『歌麿伝』のおわりにおいて広重がしばしばその板行絵の色摺をして歌麿盛時の如くならしめんと企てたれどついに不可能なりし事をしるしたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
このおわりの祖谷山は、美馬みま郡の土佐に接した山村で、偏鄙へんぴなためにかえって有名な土地であるが、ここまで行渡っているのを見ると、あるいは一度中間の平地にも
処女おとめ達幾千人の踊る姿態のうちにも、まだ大膳正の望に添うほどの優物は無く、その日の番組も漸くおわりに近づいて、大膳正の精力をもってしても、さすがに倦怠を催す頃でした。
そうして各人かくじん正当せいとうおわりであるとするなれば、なんため人々ひとびと邪魔じゃまをするのか。かりにある商人しょうにんとか、ある官吏かんりとかが、五ねんねん余計よけい生延いきのびたとしてところで、それがなんになるか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おわりに、『吉野』『千種』らは、沈めてしまった。二千四百人の戦死者はかわいそうだが、これも戦いだ。しかたがない。わが戦艦『メーン』は、『オリオン』がひっぱって紅玉島ルビーとうへかえる。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
彼はアルバであり又オメガである、はじめであり又おわりである、今あり昔あり後ある全能者である(黙示録一章八節)
夏もややおわりに傾いてから庭の樹に来て啼く蝉の声とを、一つの言葉で呼ぶということは、驚くべき無頓著むとんちゃくには相違ないが、とにかくに誤解と称すべきものではない。
明治二十五年芳年は多数の門人を残して能くそのおわりまっとうせしが
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
昭和○年一月のおわり、凍るように寒い朝だった。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
ヨブはわが生命のおわり近きを感じその前の少時の間神の迫撃の手が己の上に来らざらんことを願ったのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
神経をしびらす柔き接触……おわり知られぬ柔き接触。
この身のおわりを覚悟して見上みあぐる苦悩の大空おおぞら