申上もうしあ)” の例文
『ええ只今ただいま足下そっか御関係ごかんけいのある事柄ことがらで、申上もうしあげたいとおもうのですが。』と、市役所員しやくしょいん居並いなら人々ひとびと挨拶あいさつむとこうした。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もっともこれは地上ちじょうははいて申上もうしあげることで、肉体にくたいててしまってからのはは霊魂たましいとは、むろん自由自在じゆうじざいつうじたのでございます。
理窟りくつを申していると際限もありません、が、私が此処ここ申上もうしあいのは、夢は従来の心理学者が発表したような、簡単な睡眠中の刺戟しげき
申上もうしあげたいのは山々やまやまでござんすが、ちとあつかましいすじだもんでげすから、ついその、あっしのくちからも、申上もうしあげにくかったようなわけでげして」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「先生、実は、……申上もうしあにくいので御座いますが、わたくし、お嬢様のお使いに本日参上いたしましたのですが……」
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
猫まで逃げ出す家庭争議の場面と化して行かれつつある事はまことに是非もない次第と申上もうしあぐべきでありましょう。
奥様探偵術 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
御親父ごしんぷ飯島平左衞門へいざえもん様にお話を申上もうしあげましたれば、平左衞門様はく斬ったとおおせありて、それからすぐにおかしらたる小林權太夫こばやしごんだゆう殿へお届けに及びましたが
「啓吉君が見えなくなったんです。いやお待ち下さい。いま、くわしく申上もうしあげます」
水中の怪人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私はこれから学習院を落第してから以後の私について少々申上もうしあげようと思います。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大佐たいさは、今朝けささだまれる職務しよくむまゐるが、昨夜さくや取紛とりまぎれてかたらず、今朝こんてう御睡眠中ごすいみんちうなれば、この水兵すいへいもつ申上もうしあげるが、この住家すみかの十ちやう以内いないなれば、何處いづくかるゝも御自由ごじいうなれど、その以外いぐわい
またわたくし申上もうしあげることにどんな誤謬あやまちがあるかもはかりかねますので、そこはくれぐれもただ一つの参考さんこうにとどめていただきたいのでございます。
八月十五日夜の月の出潮を合図に、あの辻堂にて親の敵が討ちたいと申す、——この上申上もうしあげることは御座らぬ、武士の最後、お妨げ下さるな
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
いやしずかに。——ただいまみゃくちからたようじゃと申上もうしあげたが、じつ方々かたがた手前てまえをかねたまでのこと。心臓しんぞうも、かすかにぬくみをたもっているだけのことじゃ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたくしはもう十ねんまえから、そう申上もうしあげていたのですが、全体ぜんたいこの病院びょういん設立たてられたのは、四十年代ねんだいころでしたが、その時分じぶん今日こんにちのような資力しりょくではかったもので。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その疑いはひどい、——では申上もうしあげましょう。実は妙な事があったんです。
海浜荘の殺人 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
まあ致方いたしかたがございませぬ、せいぜいをつけて、わたくし実地じっちたまま、かんじたままをそっくり申上もうしあげることにいたしましょう。
「旦那様によろしく申上もうしあげてくれ、先を急ぐから、——と仰しゃって、もっとも、御旅籠賃おはたごちんはお二人分余分に頂戴いたしました、ヘエ、どうも有難ありがとう存じます」
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
何分共なにぶんともにおねが申上もうしあげます」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
不道徳なことを申上もうしあげてまことに恐縮ですが、私自身も左近倉平に好意を持っておらず、反対にこの恋の狩人ラブ・ハンターの左近倉平の、悲惨な最後をお話し申上げて
あの三戸前の奥蔵へ入りゃア、其場そのばを去らず手討だという話だ、手討にされたら化けて帰って、駿河守様へ申上もうしあげる積りで、半年越し折を狙ったがいけねえ
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私のこれから申上もうしあげる、奇怪至極な話は、決して出鱈目な作り話でないという証拠を、あらかじめ呑み込んで頂くために、いささか床屋談義めくことを申上げた次第で御座います
「ハッ、恐れ乍ら申上もうしあげます。佐の市の打ったる針は、十四経和語抄に掲げました、六百五十七穴の内の一つ、禁断の鍼とは思いもよらぬこと、決して間違いは御座いません」
禁断の死針 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「え、達者でいるとは申しませんでした、待っているとは申上もうしあげましたが、ホ、ホ」
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その犯人は一年経った今まで、到頭とうとう挙らずにしまいましたが、仔細あって、その顛末をことごとく知っている私は非常な危険を冒して、此処ここに一切の事情を申上もうしあげようと思い立ったのであります
ふるい秩序と常識を尊ぶ方々からは、はなはだ喜ばれないかも知れず、これだけの資料はあり乍ら、旧制度の日本では、発表の出来なかった筋で、よい歳をした私が、壇の上に立って申上もうしあげるのは
喜田川夫人として披露したのだと申上もうしあげただけで充分だろうと思います。
処女おとめ心の不思議な動きを、私はここで申上もうしあげようとしているのではありません。が、兎も角、明治四年の十六娘の微妙な感情を、ほんの少しばかりお伝えしなければ、此話の筋が通らなくなります。
そこへ行くと、私のこれから申上もうしあげようと思う話は、譬喩と諷刺と当て込みと教訓で練り固めたようなもので、まことにや恐縮千万ですが、よく噛みしめて、言外の意を味わって頂きたいと存じます
「まア、そんな怖い顔をなすって——、私は、あなたのお為を思って申上もうしあげるのですよ。悪いことは申しません。黙って此処ここからお帰りなさいませ、——あなたのおのぞみは、私が代って果して上げます」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「私、自分の考えを申上もうしあげてよろしいのでしょうか」
「本当に、どんなにお礼を申上もうしあげていいか」
「それは申上もうしあげ兼ねますが」