田地でんち)” の例文
ついては、少し思う仔細もあるので、此際このさい私の配下に属する色々な事業や、私の田地でんち、私の漁場などを、一巡して見たいと思う。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くにかへつて田地でんちを買ふ約束をしたり、いへたて木材きざいを山からすやうにしたり、ちやんと手筈てはずけて江戸えどかへつてると、塩原多助しほばらたすけんでゐた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いはせず召捕入牢じゆらう申付られしに依り私ども大に驚き段々だん/\樣子をうけたまはり候へば九郎兵衞夫婦田地でんちを質にいれ金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
商売もあろうに糞の仕事のために家屋敷や田地でんち田畠でんばたまで無くしてしまうなんて、これがほんとの糞馬鹿じゃな、と奥さんが云うのに、みんな大声を立てて笑った。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
その地租を課するにもどれだけの大きさの田地でんちということが分らぬ。ところでちょっと前にも説明しましたようにチベット人には数学的観念というものは実にとぼしい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
お光さんは器量もよし気質きだても優しいし、家に田地でんちもだいぶあるし、その上家と家との今までの関係もあることだから、そうしたら双方ともつごうがよいだろうと書いて
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おとうさんとおかあさんは、宰相さいしょうはちかつぎのためにりっぱな御殿ごてんをこしらえ、たくさんの田地でんちけてやって、ゆたかにらすことのできるようにしておやりになりました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
五年目ごねんめには田地でんち取返とりかへし、はたけ以前いぜんよりえ、山懷やまふところ荒地あれち美事みごと桑園さうゑんへんじ、村内そんないでも屈指ゆびをり有富いうふう百姓ひやくしやうおはせたのです。しかもかれ勞働辛苦らうどうしんくはじめすこしかはらないのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ひとりでそれを心配して、孫や孫やとしきりに重右衛門ばかりを力にして、何うか貴様は、親父おやぢのやうに意気地なしには為つて呉れるな、祖父ぢいさんの代の田地でんちを何うか元のやうに恢復くわいふくして呉れと
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
宇賀長者は、ここに大きなやしきをかまえて、莫大な富を作っておりました。その田地でんちかられる米のすりぬかが、邸の傍に何時いつも大きな山をこしらえていたので、糠塚ぬかづか長者と呼ぶ者もありました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかし、あの仏像ぶつぞうがいいものであって、あたいたかれたら、どんなにしあわせだろう。おれは、たくさんの田地でんちうし、また、諸国しょこく見物けんぶつにもかけるし、りっぱな着物きものつくることができるだろう。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
引受ひきうけられよと折入てたのみしにより九郎兵衞は漸々やう/\承知しようちして入夫となり六石三斗の田地でんち質入しちいれなし金十兩借請かりうけ條七にわたしければ條七は是非なく金毘羅參こんぴらまいりと云箱をくびかけ數年住馴すみなれ故郷こきやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
青山に田地でんちがあって、そこから上って来る米だけでも、うちのものが食うには不足がなかったとか聞いた。現に今生き残っている三番目の兄などは、その米をく音を始終しじゅう聞いたと云っている。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
池上權藏いけがみごんざう此日このひからうまかはりました、もとより強健きやうけん體躯からだもつ元氣げんきさかんをとこではありましたが、放蕩はうたう放蕩はうたうかさねて親讓おやゆづり田地でんちほとんえてくなり、いへ屋敷やしきまで人手ひとでわたりかけたので
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
たくさんの田地でんちやおかねがあって、きれいな奥方おくがたって、このの中にべつだん不足ふそくのない気楽きらくの上でしたが、それでもたった一つ、なによりいちばんだいじな子供こどもという宝物たからものけていることを
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)