たぐ)” の例文
類は友で集まった倶楽部くらぶ員達は、華族の次男三男坊、金持の息子、文士、美術家、俳優と言ったたぐいばかり、貧乏人は一人もありませんが
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
間もなく紅葉のは伝わって、世をこぞってこのたぐい少ない天才のくを痛惜したが、訃を聞くと直ぐ、私は弔問して亡友の遺骸に訣別わかれを告げた。
これ熱と光とをもて汝等を照らしかつ暖めし日輪が、これにたぐふに足る物なきまでその平等を保つによる 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
この二丁ばかりの峻直なる岩壁は、日本アルプスにも、たぐいの多からぬ嶮しさであった、そうして登りよりも降りの方が、なお怖ろしかろうと思われる。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
浜崎を過ぐれば、ただちに玉島川の水瀬の音のさざれに響くを聴く、流の清く澄めることたぐひなし。いきほひ海に尽きたる山脈を分ちて、筑前国、怡土郡いどごほりと界す。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
是君を先にし、臣を後にするなり。汝はやひとの国に去りて害をのがるべしといへり。此の事、一三五と宗右衛門にたぐへてはいかに。丹治只かしられてことばなし。
世にたぐいなき喜びを与えてもくれる代りには、又人の世の一番大きな悲しみを伴って来る場合もあるのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ブランデスは太平洋が地球の諸海洋に伍し占めてゐる地位にたぐへて、實に心にくいことを言つてゐる。
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かれあしなくして地をはしり、たふれてふたゝびおきざるなど、魚族ぎよぞくたぐふべきものなきは奇魚きぎよといふべし。
八合目より一旦いったん七合に引返したりといえり、二人は山頂の光景を見て、如何いかに感じけん、予に向いて、いずくんぞこれ千島ちしまたぐいならんや、きみは如何にして越年を遂げんとするか
ただただのみをもってはよく穿らんことを思い、かんなを持ってはよく削らんことを思う心のたっとさは金にも銀にもたぐえがたきを、わずかに残す便宜よすがもなくていたずらに北邙ほくぼうの土にうず
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
同じ時の歌に 安養寺歯形の栗をたぐひなき貴女の形見に数へずもがな といふのもあり
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
主は私の背後からゼーロンをののしった。私は、私のたぐいなきペットの耳を両手でおおわずには居られなかった。——ゼーロンの蹄の音は私の帰来を悦んでいるが如くに朗らかに鳴った。
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
昭和何年から文藝春秋新社は創立されたか知らないが、その社長になつた佐佐木は、菊池とはまつたく違つた形であるが、やはり、雑誌社の社長として、たぐひ稀な名『伯楽』である。
まして世にれなる才能と、たぐいなき麗貌れいぼうの武子姫が、世間的に地位なく才腕なき普通の連枝へ、御縁づきになる事は、法主鏡如様の権威にかかわり、なお自分たち一同の私情よりしても
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
と郡氏は、その方法が、有り触れた見合ひなどのたぐひでない事を自慢してゐる。
纒ひて其さまいやしげなれども昔し由緒よしある者なるかたち擧動ふるまひ艷麗しとやかにて縁側へ出擂盆すりばちの手水鉢より水をすくひ手にそゝぎしは縁のはし男は手をば洗ひながら見れば娘はたぐまれなる美女にて有れば是までは女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
レミヤは実に、世にもたぐいのない天使の生れがわりで御座いました。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
馬の進退制し得て汝にたぐふものあらん、 475
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
こはたぐひなき命の霊泉なり
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
世間にたぐいあることなく
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例えば、ルービンシュタインやフリートマンは、たぐい稀な技巧家ではあるが、我々にその技巧を忘れさせる域にまで達することは出来ない。
寒念仏寒大神まゐりの苦行くぎやうあらましくだんのごとくなれば、他国はしらず、江戸の寒念仏はだかまゐりにたぐふればはなはだこと也。かゝる苦行くぎやうをなすゆゑにや、その利益りやく灼然いちじるき事を次にしるしつ。
かんなを持つては好く削らんことを思ふ心の尊さは金にも銀にもたぐへ難きを、僅に残す便宜よすがも無くて徒らに北邙ほくばうの土にうづめ、冥途よみぢつとと齎し去らしめんこと思へば憫然あはれ至極なり、良馬しゆうを得ざるの悲み
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
醫療の術に優るもの、外の多數にたぐふべし
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
如夜叉によやしやと思ひ込しいと物堅ものがたき長三郎も流石さすが木竹きだけに非れば此時はじめ戀風こひかぜ襟元えりもとよりしてぞつみ娘も見たる其人は本町業平俳優息子なりひらやくしやむすこ綽名あだなの有は知らざれどたぐまれなる美男なれば是さへ茲に戀染こひそめて斯いふ男が又有らうかかういふ女が又有らうかとたがひ恍惚みとれ茫然ばうぜん霎時しばし言葉もあらざりしが稍々やう/\にして兩個ふたり心附こゝろづいてははづか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
拭ふが如く正氣に返つて、谷中の堂に銅の大手洗鉢おほてあらひばちを寄進したと言つたたぐひの噂が、風に乘つて撒布さんぷされるやうに、江戸中へ廣がつて行つたのです。
我国の垂氷つらゝたぐふれば水虎すゐこ一屁いつひ也と心にをかしとおもひし事ありき*9
而して彼の光榮は當にわれのにたぐふべし。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
拭うがごとく正気に返って、谷中の堂に銅の大手洗鉢おおちょうずばちを寄進したといったたぐいの噂が、風に乗って撒布さんぷされるように、江戸中へ広がって行ったのです。
身装みなりは至って粗末でしたが、たぐい稀なる美人が、背後から短刀でとえぐりされて、あけに染って死んで居りました。
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そこにはたぐまれなる美しさと、あふるるばかりの愛情とがある。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)