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死際
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しにぎわ
ふりがな文庫
“
死際
(
しにぎわ
)” の例文
ただ坐禅を勧めあるいは念仏を唱える事を勧めて未来の安心を得さしめ、
死際
(
しにぎわ
)
に迷わないように決心する事ばかり説いてやりました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
同じ思出すにしても、父の
死際
(
しにぎわ
)
のことには触らないように。これはもう長い年月の間、おげんが人知れず努めて来たことであった。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
置きね置きねなど言ひはなし候様は、あたかも名医が
匙
(
さじ
)
を投げたる
死際
(
しにぎわ
)
の病人に対するが如き感を持ちをり候者と相見え申候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
信一郎は、青年の
死際
(
しにぎわ
)
の懸命の信頼を、心に深く受け入れずにはおられなかった。名乗り合ったばかりの自分に、心からの信頼を置いている。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
あだかも自然がこれによって人間の
死際
(
しにぎわ
)
のうめきを定型化して彼女の唱歌隊において永久的にしようとしたかのようである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
▼ もっと見る
「俺は
行衛
(
ゆくえ
)
を
晦
(
くら
)
ます。
死際
(
しにぎわ
)
に一仕事したいからだ。どんな事があっても騒ぐなよ。俺の
生命
(
いのち
)
がけの仕事を邪魔するなよ」
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「どうもしやしませんが、親方もなかなか
死際
(
しにぎわ
)
まで
粋
(
すい
)
を利かしたもので……それじゃお上さんも寝覚めがようがさね」
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
それで手強く幕府へ懸合っで老中共も
持余
(
もてあま
)
している時、毒殺だと噂された位急に死んでしまったのである。
死際
(
しにぎわ
)
に
鍵屋の辻
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
「今死ぬ私に、隠すことはありません、お役目柄と知ってお話します。幸い私の心は落ち付いて、
死際
(
しにぎわ
)
が近いせいか、気力も一段と加わって来ました」
天保の飛行術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夫人 先生、私は、ここに死んで流れています、この鯉の、ほんの
死際
(
しにぎわ
)
、一息前と同じ身の上でございます。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
死際
(
しにぎわ
)
に汝らは兄弟なり必ず
讒誣
(
ざんぶ
)
に迷わされて不和を生ずるなと遺誡したが、前話同様野干の讒言を信用してどちらも反省せず相闘うて
双
(
ふたつ
)
ながら死んだとある
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「蜀は水軍に力を入れて、毎日百里以上も呉へ前進しているというが、いよいよ玄徳の
死際
(
しにぎわ
)
が近づいてきた」
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
死際
(
しにぎわ
)
に、何かわたしたちに思い残すことがあって、それを言いたいがために附いて廻るのかもしれません
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私は、ソクラテスの最も偉大なる点を以て、彼の悲劇なる
死際
(
しにぎわ
)
の公明正大なのに持って行きたいと思う。ソクラテスの死は、真に死を見ること帰するが如しであった。
ソクラテス
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
彼がそこから得た感じは、おせいに対する漠然たる疑惑と、兄が
未憐
(
みれん
)
にも、
死際
(
しにぎわ
)
まで彼女のことを
忘
(
わす
)
られず、苦悶の指先にその名を書き止めた無慙の気持ばかりであった。
お勢登場
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
老僧は
猶
(
なお
)
も父が病中母を
罵
(
のの
)
しったこと、
死際
(
しにぎわ
)
に大塚剛蔵に其
一子
(
いっし
)
を托したことまで語りました。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
その
後
(
のち
)
、母の
死際
(
しにぎわ
)
に着てゐた小袖が証拠になつて、不思議にも隣の
家
(
いえ
)
の
主人
(
あるじ
)
がその
盗人
(
ぬすびと
)
であることが判つたので、かれは自分の
主人
(
しゅじん
)
の
助太刀
(
すけだち
)
をかりて、母のかたきを討つた。
小夜の中山夜啼石
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
産は女の出陣だ。いい子を生むか死ぬか、そのどっちかだ。だから
死際
(
しにぎわ
)
の装いをしたのだ。——その時も私は心なく笑ってしまった。然し、今はそれも笑ってはいられない。
小さき者へ
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
『戦争と平和』に出て来る、ある人物の眼に映じる美しい大自然のながめ、静まりかえった心境、——そういったものが、この己の
死際
(
しにぎわ
)
にも、はたして訪れて来るだろうか。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
マダムは
死際
(
しにぎわ
)
に、浜龍にはどうせ好い相手があって、家を出るだろうから、銀子は年も行かないから無理かも知らないけど、気心がよく
解
(
わか
)
っているから、マダムの
後釜
(
あとがま
)
になって
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
図らずも難風に出会い、その二人の舟人は途中に
於
(
おい
)
て相果てました、
一人
(
いちにん
)
の舟人が
死際
(
しにぎわ
)
の
懴悔話
(
ざんげばなし
)
を聞きますると、旅宿で船の世話をしてくれた
商人
(
あきんど
)
も其の二人の舟人も同じ穴の
貂
(
むじな
)
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
幾千代
(
いくちよ
)
永らえたが、
死際
(
しにぎわ
)
になって、仙山が大きい
鼈
(
すっぽん
)
の背に載せられたという要件を、弟子に伝え、弟子はまたその弟子に伝えたが、後世になって一人の方士が好いことをしようとして
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
ハハハ、そうよ、
異
(
おつ
)
に
後生気
(
ごしょうぎ
)
になったもんだ。
寿命
(
じゅみょう
)
が
尽
(
つ
)
きる前にゃあ気が弱くなるというが、
我
(
おら
)
アひょっとすると
死際
(
しにぎわ
)
が近くなったかしらん。これで死んだ日にゃあいい
意気地無
(
いくじな
)
しだ。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
此
(
この
)
傷
(
いた
)
ましき語を聞きて余は直ちに
床中
(
ゆかじゅう
)
を見廻すに
成
(
な
)
るほど死骸の頭の辺に恐ろしき血の文字あり
MONIS
(
モニシ
)
の綴りは
死際
(
しにぎわ
)
の苦痛に震いし如く揺れ/\になりたれど
読擬
(
よみまご
)
う
可
(
べ
)
くもあらず
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
死際
(
しにぎわ
)
の、口にも出せぬ恐しい苦痛が無かったならば、人間はそれ程に死を怖れないだろうと思います。大抵の老人は、口癖に、死ぬ時は卒中か何かで、苦しまずにポッキリ死んで行きたいと申します。
安死術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
また出来るだけそれまでになる動機の径路
顛末
(
てんまつ
)
を避けて書いたとしても、
死際
(
しにぎわ
)
に残した書置きには、何か心の中の
苦悶
(
くもん
)
を洩らしてない事はあるまいと思うが、その書置きをすら、二人のを二人のとも
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
漢文で、「
慷慨
(
こうがい
)
憂憤の士を
以
(
も
)
って狂人と為す、悲しからずや」としてある。墨の
痕
(
あと
)
も
淋漓
(
りんり
)
として、
死際
(
しにぎわ
)
に震えた手で書いたとは見えない。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
人が、臨終の時に
為
(
な
)
す信頼は、
基督正教
(
カトリック
)
の信徒が、
死際
(
しにぎわ
)
の
懺悔
(
ざんげ
)
と同じように、神聖な重大なものに違いないと思った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
発狂したように
喚
(
わめ
)
きつづけるのである。
死際
(
しにぎわ
)
の頼みだ、待ってやれと、将の一人が云った。露八は、幕兵の手を振りほどいて、
以前
(
まえ
)
の
空楼
(
あきや
)
の内へ駈けもどった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
永々
(
なが/\
)
御恩を受けたお屋敷の若様だから
何
(
ど
)
んなにもして上げなければならん、と
死際
(
しにぎわ
)
に遺言して亡なりましたが、貴方が若様なれば何うか
此方
(
こちら
)
へ一晩でもお泊め申さんでは
済
(
すみ
)
ませんから
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
御老体にして見れば、そこらの
行
(
ゆき
)
がかり上、
死際
(
しにぎわ
)
のめくらが、
面当
(
つらあて
)
に形を
顕
(
あら
)
わしたように思召しましたろうし、立入って申せば、小一の方でも、そのつもりでござりましたかも分りません。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
だからラマが「
死際
(
しにぎわ
)
に
供養
(
くよう
)
してくれる時分には決して菜種油を用いてくれるな」と
遺言
(
ゆいごん
)
して死ぬ者も沢山ある。ラサの
釈迦牟尼如来
(
しゃかむににょらい
)
の前には、純金の大なる燈明台が二十四、五も列んであります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ふっていやとよ和歌は腐敗し尽したるにいかでか改良の手だてあるべき置きね置きねなど言いはなし候様はあたかも名医が
匙
(
さじ
)
を投げたる
死際
(
しにぎわ
)
の病人に対するがごとき感を持ち
居
(
おり
)
候ものと
相
(
あい
)
見え申候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「本当に、
貴君
(
あなた
)
は兄の臨終に居合したのですか。それで、兄は何と
云
(
い
)
いました。兄は
死際
(
しにぎわ
)
に何と云いました?」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
わしが仕尽くす
業
(
ごう
)
はこんなことでは終るまい。頼朝公ですら、さしも
死際
(
しにぎわ
)
はよくなかった。この尊氏もそれには似るかもしれん。……それでの、そろそろ
後生
(
ごしょう
)
を心がけたい。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と豊世は
煤
(
すす
)
けた桐の箱を捜出して来た。先祖が
死際
(
しにぎわ
)
に子供へ
遺
(
のこ
)
した手紙、先代が写したらしい武器、馬具の図、出兵の用意を細く書いた書類、その他種々な古い残った物が出て来た。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
人にはわからぬ隠密
煩悩
(
ぼんのう
)
、
死際
(
しにぎわ
)
の欲望に、ありありと、手にのせて見て死にたい。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は良人の
醜
(
みにく
)
い
死際
(
しにぎわ
)
を知ってもみだれず騒がず、小三郎夫妻の死を見とどけてから、男女三人の幼な子を膝に寄せると、目をふさいで母の手で刃を加え、後、われとわが喉を突いて自害した。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
死
常用漢字
小3
部首:⽍
6画
際
常用漢字
小5
部首:⾩
14画
“死”で始まる語句
死
死骸
死人
死屍
死霊
死去
死亡
死様
死別
死刑