欧羅巴ヨーロッパ)” の例文
旧字:歐羅巴
それくらい好きな煙草を長崎にいたときやめて、い煙草も安く喫める欧羅巴ヨーロッパにいたときにも決して口にくわえることすらしなかった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
聴衆は全部欧羅巴ヨーロッパ人で支那人は一人もいなかった。それは公園の入口に「華人不可入」と書いた建札が、厳めしく立っているからだ。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今度の欧羅巴ヨーロッパ戦争が大なる教訓である。独り独人が倨傲なりとは言わぬ。英人もまた倨傲である。いわば、倨傲と倨傲との衝突である。
列強環視の中心に在る日本 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
平均高度九千尺という欧羅巴ヨーロッパの一倍半ほどの異様な高原が、南極の頂点を中心に南緯六十七度のあたりまでほぼ円形にひろがっている。
南極記 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
大戦の直ぐあとの混沌とした時代に発生した、こういう結婚の多くを、私たちは今日の欧羅巴ヨーロッパ文学の作品と実際生活のうえに見る。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
人工の・欧羅巴ヨーロッパの・近代の・亡霊から完全に解放されているならばだ。ところが、実際は、何時いつ何処どこにいたってお前はお前なのだ。
所が文久二年の冬、日本から欧羅巴ヨーロッパ諸国に使節派遣と云うことがあって、その時に又私はその使節に附て行かれる機会を得ました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
(すばらしき大演武会の司会者は、また欧羅巴ヨーロッパの国王間にも到底見られない華麗豪壮な扮装ふんそうちりばめられた端正なる一貴人であった——)
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
欧羅巴ヨーロッパの穉物語も多くは波斯ペルシア鸚鵡冊子おうむさっしより伝はり、その本源は印度の古文にありといへば、東洋は実にこの可愛らしき詩形の家元なり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
欧羅巴ヨーロッパにゐた頃から伝道の生涯をかうして押通してきたのである。諸方で信者はできたが、前途の隆盛を望み得るといふ程ではなかつた。
欧羅巴ヨーロッパの通商をさまたげ、かつその平穏へいおんみだせし希臘ギリシア国の戦争をたいらげんがため、耶蘇教の諸大国、魯西亜ロシア国とともにこれを和解、鎮定ちんていせり。
その頃は日本ばかりでなくて欧羅巴ヨーロッパですらが露西亜を北欧の半開民族視していたから、露西亜の文化なぞは問題とならなかった。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
欧羅巴ヨーロッパではしかし、大変な人気であるらしい。この人の軽快なこだわりのない技巧が、一部フランス人などの好みに投ずるためであろう。
こちらの欧羅巴ヨーロッパのイギリスという国からたった一艘いっそうの船が、この大陸の岸につきました、この辺がその上陸点のプリモスというところです
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それとも英吉利イギリスから北海を越え北欧羅巴ヨーロッパの方を廻って西伯利亜シベリア経由で帰って行く汽車旅を択ぼうかとさんざん思い迷ったことがあったが
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ことに此頃流行の何玉何々玉といふ類、まるで薬玉くすだまかなんぞのやうなのは、欧羅巴ヨーロッパから出戻りの種で、余り好い感じがしないが
菊 食物としての (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
昭和三年に私は欧羅巴ヨーロッパの方へ行って見たが、いうまでもなくそれらの国々は基督教国であるけれども、パリ、ロンドン、ベルリンなどの都市で
うわさによるとちかごろ彼女は欧羅巴ヨーロッパの小国のプランセスの位置をねらつてゐるさうだ。これがこのごろ金のある亜米利加女の発達した慾望ださうだ。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
わがくにの開発が一般に東部欧羅巴ヨーロッパなどと違って、最初から甚しく収約的であり、村は自然に各自の周辺に向って成長して
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このことは良かれ悪しかれ欧羅巴ヨーロッパの社会の中で育っている男女とは、気持の出来具合の上で、随分違いがあるでしょう。
女性の生活態度 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
私は現代が、夜光虫と欧羅巴ヨーロッパスタイルのグランド・ホテル・ド・横浜のダンシング・ホールと空中の軽業かるわざだと断定する。
恋の一杯売 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
今いった手型の写真が明日あらゆる新聞にます。そうするとこの手は、仏蘭西フランス中は無論のこと、二日後には欧羅巴ヨーロッパ全体に知れわたりますからね。
「世界は多数のナポレオンを要しない。見よ。欧羅巴ヨーロッパは一つしかないではないか? よし。おれが解毒剤げどくざいこしらえてやる」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
今は米国が夜だから亜細亜アジア欧羅巴ヨーロッパは日中に在るはずだが、どの様なかたちだろう、時々刻々増す大火熱に——アアこう思うと、思うだけで戦慄する。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
「己はどうして西洋に生れなかったのだろう。欧羅巴ヨーロッパに生れさえすれば、たとえ商店の小僧であっても、今よりはもっと幸福だったに違いない。」
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ケレルマンがその著『日本にける散歩』のうちで、日本の或る女について「欧羅巴ヨーロッパの女がかつて到達しない愛嬌をもって彼女はこびを呈した{4}」
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
そのことごとくが我々の持つ欧羅巴ヨーロッパの文明よりも遥かに水準を抜いて、いずれも高度な優秀さを示すものばかりです。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
威武盛んなる支那帝国も、久々戦いて利あらず、欧羅巴ヨーロッパ洲の兵学に長ずるに辟易へきえきして、終に英吉利国に和親を為せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あの人は、墺太利オーストリヤの、いや欧羅巴ヨーロッパきっての名将なんだ。鬼神、海神といわれる——いつかウインに、記念像デンクマルを持つのは、この人以外にはないというからね
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ワトソン君、いくら何でも僕はまさか、不動の木偶を立てて、それで欧羅巴ヨーロッパで最も敏感な連中を、瞞著し得ると思うような、たわけ者ではないつもりだよ。
へやを温め、かまどに火をきつけても、壁の石をとおし、衣の綿を穿うがつ北欧羅巴ヨーロッパの寒さは、なかなかにえがたかり。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それは、ある日本人が欧羅巴ヨーロッパへ旅行に出かけるんです。英国、仏蘭西フランス独逸ドイツとずいぶんながいごったごたした旅行を続けておしまいにウィーンへやって来る。
ある崖上の感情 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
ずっと以前からネバ河口の信号所の地下室で作り出して欧羅巴ヨーロッパ方面の密使に使用しておったものじゃが
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
だから、せいろんは、いまでは、時計ばかり見て急ぐ寄港者よりも、欧羅巴ヨーロッパの公休を日限いっぱいに費やそうという長期滞留の旅客のほうを、はるかにたくさん持つ。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
どうして、あれは安いものである。波斯の古代文学を研究している者は、欧羅巴ヨーロッパに彼一人しかない。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼が仏蘭西フランスの——否、広く全欧羅巴ヨーロッパにまたがっての——警察制度の支配者となって以来、彼の影響は、名誉にも刑罰の軽減、監獄の浄化等いう方面に及んだことである。
彼は彼等を知る為には、——彼等の愛を、彼等の憎悪を、彼等の虚栄心を知る為には本を読むより外はなかった。本を、——殊に世紀末の欧羅巴ヨーロッパの産んだ小説や戯曲を。
之が堤防を築き、之が柵門を建られつれど、進歩の勢力は之に激して更に勢を増すのみにして、反動の盛なると共に正動もまた盛にして、今や宛然ゑんぜんとして欧羅巴ヨーロッパナイズされんとせり
丁度この夏ラビ教授が欧羅巴ヨーロッパへ旅行していた間、その留守宅にしばらく湯川さんがはいっていたわけである。アメリカ人は一般に、一度親しくなると、非常に打あけた交際をする。
湯川秀樹さんのこと (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
西欧羅巴ヨーロッパやアメリカに起りつゝあつた社会的観念に対する知識は、殆んどなかつた。
乞食の名誉 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
欧羅巴ヨーロッパがハムレットに疲弊しきつた揚句、ドンキホーテにゆく。するてえと日出づる国の大童らが、「さうだ! 明るくなくちやア」とほざく。向ふが室内に疲れきつて、戸外に出る。
散歩生活 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
昼は人間で、夜は狼になる——そういう不思議な人間は欧羅巴ヨーロッパにもあります。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
維典堡〈(ウヰンテンボルグ)〉人西勃土〈(シーボルド)〉氏(わけがありて)荷蘭人となり、わが長崎へきたり、わがくにの草木を欧羅巴ヨーロッパたずさえ帰り、現今かの諸国に伝播でんぱしおるは、おおむね
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
この亜細亜アジヤ人種とか、欧羅巴ヨーロッパ人種とか、亜非利加アフリカ人種とかいうものは、御互いに古い時から分れたもので、比較的遠い親類でありますが、馬来マライ人種などと言われるものは、右の区別に比べると
欧羅巴ヨーロッパで発見せられた化石とそっくりだという事が明白になってまいりましたので、知らぬ振りをしているわけにもゆかず、ここに日本の山椒魚が世界中の学者の重要な研究課目と相なりまして
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ホテルの表に一台の高級車が着いて、三人の欧羅巴ヨーロッパ人がロビイへ入って来た。この三人は毎朝ここへ朝食だけを喰べに来るので、いつも奥の方にきまって卓子テーブルが用意されてあるくらい馴染なじみの客だった。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
我々にとってみれば、逆に欧羅巴ヨーロッパの方がずっと詩的である。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
昔ながらの欄干に欧羅巴ヨーロッパが私は恋しいよ。
欧羅巴ヨーロッパへ行く人の許へ根岸の笹の雪を贈りて
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
身長みたけ高く肉附きよく、腰もピーンと延びている。永らく欧羅巴ヨーロッパに住んでいたが、最近帰朝した日本人——と云ったようなおもかげがある。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)