ごん)” の例文
旧字:
甚作 新田のごんが、昨日夕方裏の畑のところを、うろうろしていたけに、あいつかも知れんぞ。飢饉で増えたのは畑泥棒ばかりじゃ。
義民甚兵衛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「欣しや、やっとめぐうたぞやい。これも、つい先のころ、住吉の浦で不慮の死を遂げなされたごん叔父の霊のひきあわせでがなあろう」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沼南が大隈おおくま参議と進退をともにし、今の次官よりも重く見られた文部ごん大書記官の栄位を弊履の如く一蹴いっしゅうして野に下り
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
二月の朔日ついたち直物なおしものといって、一月の除目じもくの時にし残された官吏の昇任更任の行なわれる際に、薫はごん大納言になり、右大将を兼任することになった。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
おてもやん、おてもやん、あんた嫁入よめいりしたではないかいな。嫁入りしたことしたばってん、ごんじゃあどんのぐじゃっぺだるけん、あださかずきゃせんだった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「駄目だ。殺しても何にもならない。よし、いま一ツの手段を取らう。ごん! きち! くま! 一件だ。」
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は七つ八つの子供のころ、「饅頭虎」と「指無しごん」という二人のならず者が、酒の座で喧嘩をはじめ、父の俊亮がその仲裁にはいったときの光景を思い起していた。
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
寒かったろう御苦労だね、いま一杯つけさせるから飲んでておくれ、ごん、おまえその床几を
『のせざる草紙』に、丹波の山中に年をへし猿あり、その名を増尾のごんかみと申しける。今もこの辺で猴神の祭日に農民群集するは、サルマサルとて作物が増殖する賽礼さいれいという。
いんきんだむしの附着くつゝいてる箱は川原崎かはらさきごんらういたてえ……えゝすべつてころんだので忘れちまつた、醋吸すすひの三せい格子かうし障子しやうじに……すだれアハヽヽヽ、おいうした、しつかりしねえ。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
明治九年から十二年まで、彼は特に選ばれて岐阜ぎふごん区長の職にあったが、その時ばかりは郷党子弟のためであるとして大いに努めることをいとわなかった。すべてこのたぐいだ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この月毅堂は徴士より太政官ごん弁事に任命せられた。『明治史要』戊辰閏四月の記事に、「官制ヲ改定シ太政官ヲ分ツテ議政行政(略)七官ト為シ、行政官ニ輔相ほしょう弁事史官ヲ置ク。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ほた三束、蝋燭ろうそく二十梃、わき本陣様より博労ばくろうごん衛門えもんに下さる」
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「へい」といって現われたのは、ごん十という部下である。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「アハハハハ、おどかすない。おらあ一人じゃねえよ。ここにもう一人、ちっちゃいけれど、恐ろしく強い味方がいらあね。いくら名探偵だって、身動き一つさせるこっちゃあない……おらあ命しらずのごんてえもんだよ」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
右は一つには苺作いちごさくが耕すにやすく比較的利益多きところよりごんも八も植付に急なりし結果当××市郊外のみにて約三千英加エーカーといふ苺畑出来候為め産出過多加ふるに今回の経済界の大恐惶に出会ひし事とて実際話しにならず候。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
と言ってとどめさせて、子息の衛門督えもんのかみごん中納言、右大弁そのほかの高官をそれへ混ぜて乗せさせて六条院へ来た。
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そうじゃ、ちょっと、気をつけておくがの、本位田家の婆と、ごん叔父とが、おつうと、おぬしを討ち果すまでは、故郷くにの土を踏まぬというて旅へ出ておるぞよ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼が食ってかかった相手は、「指無しのごん」だった。小指を一本切り落されていたので、そういう綽名がついていたが、青い顔の、見るからに辛辣しんらつそうな、痩ぎすの男だった。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
これ武蔵屋むさしやごんらう引掛ひツかけたのだが何日なんかともしたゝめてないから、幾日いくかだらう、不思議な事もあるものだ、これ落字らくじをしたのか知ら、忘れたのではないか、と不審ふしんを打つ者があると
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
行歩こうほすこやかに先立って来たのが、あるき悩んだ久我くがどのの姫君——北のかたを、乳母めのとの十郎ごんかみたすけ参らせ、おくれて来るのを、判官がこの石に憩って待合わせたというのである。目覚しい石である。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃア『三国峠のごん』のような奴ね」
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
使いとして、これへ来たのは、松田重明の一子、ごんかみ五郎吉重よししげで、用がすむと早々に
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
次郎は、「指無しのごん」とか「饅頭虎まんじうとら」とか綽名されていたならず者共が、酒をのんでけんかを始めたのを、父が仲にはいって取りしずめた時の光景を、今だにはっきり覚えている。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
まづ此方こちらへと、鑑定めきゝをしてもらつもりで、自慢じまん掛物かけもの松花堂しやうくわだう醋吸すすひせいを見せるだらう、掛物かけものだ、箱書はこがき小堀こぼりごんらうで、仕立したてたしかつたよ、天地てんち唐物緞子からものどんすなか白茶地しらちやぢ古金襴こきんらんで。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ごんちゃん——居るの。」
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
康清はごん大外記だいげきにすぎない者なので階下にいたが、ひょうきんな男とみえて
由「分らないたって向うが奥様で此方こっちは丁度ごんかたで」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「このばばと、ごん叔父の二人なら通るも帰るも、さしつかえはおざるまいの」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それよりは又八、おぬしは、ごん叔父の死んだことを知っていやるか」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お通阿女あまのそばへ行ってこういうて来う——本位田の隠居はの、旅先で、河原のごん叔父とも死に分れ、白骨を腰に負うて、老い先ない身をこうして旅にまかせているが、今では、むかしと違うて
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少年の容貌かおだちは稀に見るほどよく整っていた。知性の美といおうか、長浜の小姓部屋にいる於市、於虎、於助、於ごんなどという者どもとは、その言語挙動げんごきょどうにしても、著しくちがっているところがある。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つうの白い顔があったり、又八が何か喰っていたり、ごん叔父が歩いていたり——そして自分の帰りの遅いのを案じて、子を探す母の姿が彷徨さまよっていたり——など、その頃の幼い幻影に、さながら、今
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごんっ。気をつけいよ、その相手は、凡者ただものでないぞ!」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごん叔父よ。この虎は、死んでいるのじゃろうが」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柴田ごん六勝家、森三左衛門の手兵およそ二千余。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、五郎ごんかみは、あきらめきれない。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごん叔父よ、抜かるまいぞ」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)