せっ)” の例文
のあたり、うした荘厳無比そうごんむひ光景ありさませっしたわたくしは、感極かんきわまりて言葉ことばでず、おぼえず両手りょうてわせて、そのつくしたことでございました。
そもそも我輩がここに敬の字を用いたるは偶然にあらず。男女肉体を以てあいせっするものなれば、仮令たとえいかなる夫婦にても一時の親愛なきを得ず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「たまには、かねにぎって、かえって、都会とかい文明ぶんめいにもせっしたり、うまいさけんでみるものだ。」と、いいました。
船の破片に残る話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
滝田くんせっしたのは、十月二十七日の夕刻ゆうこくである。ぼくは室生犀生くんと一しょに滝田くんの家へ悔みに行った。滝田くんにわめんした座敷ざしきに北をまくらよこたわっていた。
滝田哲太郎君 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
スンネルブー地方が、ハルランドとせっするところには、すなだらけのれ地がひろがっています。そこは、はしからはしまで見とおすことができないくらい広いものです。
世田谷で空襲にせっしたが、防空ズキンをかぶって案外呑気でいた。これらで見ると、自然力的な圧迫あっぱくには堪え得るが、人間的圧迫には堪え得ない弱気よわきの性であろうと思った。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
そらさわやかれて、とお木立こだちそらせっするあたり見渡みわたされるすずしい日和ひより
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
平生不曾接冠纓 平生へいせいかつ冠纓かんえいせっせず
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
かく日頃ひごろただ一人ひとりやまなかじこもり、めったに外界がいかいせっする機会おりのないわたくしにとりて、うした少女しょうじょとの不意ふい会合かいごうにもものめずらしいかぎりでございました。
土手どては、ここでは往来おうらいせっしていましたが、やがてみちからとおはなれて、あちらへいっていたのです。
長ぐつの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう、そのやまのいただきは、したからると、くもせっしていました。このさかうえから、前方ぜんぽうをのぞむと、やままたやまの、えんえんとしてつらなるなみが、ながめられました。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしとして真先まっさきに工夫くふうしたことは一にち区画くぎりけることでございました、本来ほんらいからいえばこちらの世界せかい昼夜ちゅうや区別くべつはないのでございますが、それでは現界げんかい人達ひとたちせっするのにひどく勝手かってわる
これは、いつわらぬ少年しょうねんこころのうちでありました。まれたときから、あかるいそら、いつもはないている景色けしきしからないのが、まったく、ちがった自然しぜんせっしたからでした。
おかまの唄 (新字新仮名) / 小川未明(著)