あが)” の例文
旧字:
鳴神なるかみおどろおどろしく、はためき渡りたるその刹那せつなに、初声うぶこえあがりて、さしもぼんくつがえさんばかりの大雨もたちまちにしてあがりぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
それすこぎて、ポカ/\するかぜが、髯面ひげつらころとなると、もうおもく、あたまがボーツとして、ひた気焔きえんあがらなくなつてしまふ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
その効果のちっともあがらぬうちに、恐ろしい大戦の時代がやってきて、人は山林にげ隠れて、まただいぶこの病で倒れたらしい。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『新勅撰集』には、定家の日記があるために、つき合せて見ると、運動の効によって一首か二首入れられた証拠があがるのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
ハゼのやうに、向ふで勝手に食つて、勝手にかかるものですら、此方が誘ふやうに食つたらハヅサヌやうにしないと能率があがるものではない。
日本の釣技 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
机の上で私共の考査をなさる上役の人達ににらまれましたのか、賞与も昇給も、何もかも皆様より分が悪く、成績は思わしくあがりませんでした。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
その後私は北九州の或る高校に籍をおくようになったが、この地方の新聞には毎日のように朝鮮人密航団が発見されてあがったという記事がのる。
玄海灘密航 (新字新仮名) / 金史良(著)
「三輪の親分は、いきなり殴って置いて、——証拠は皆んなあがっているんだ。白状しろ——ですって、そんな乱暴なことって、あるものですか」
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
巡査が来たけれども、何の証拠もあがらんもんで、その場はそれッきりで、坂田氏は何の事はない、たれ損の形だったんだね。お聞きなさい——貴娘。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三河の西部地方から、天龍川に沿う諸部落、また美濃の一端までも、野火の飛火のように、けむりがあがっていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
モスタアにダグラスという、有名な河の海賊リヴア・パイレイトではないかと、いや、じゅうぶん信ずるにたる確証があがっているのですが、いまのお話で決定したようなものです。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
「まあ、落ち付きたまえ。スパイダー。此のシンプソン君のお蔭で、自動車庫ガレイジから贓品と棍棒を発見したよ。証拠はすっかりあがっている。では、ぼつぼつ出掛けよう」
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
座のなかから「——とっても、いけねえや」という頓狂とんきょうな、やや卑猥ひわいな調子をこめた声があがった。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
我邦わがくにの教育は英国式か仏国式かはた独逸式か、独逸に於てはフレーベルの著書に見るも修身教育のあがらざるを知るべくして、品格品行等はるかに英米の生徒に及ばず、独逸
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
私のはつしと打ち込んだ熊手が、はからず向ひ合つた人の熊手の長柄に喰ひ込んだ途端、きやアと驚きの叫び声があがつた。舎生たちが仰天して棒立ちになつた私を取り巻いた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
只今ただいまわたくしまつられているあの小桜神社こざくらじんじゃ所在地しょざいち——すこ地形ちけいちがいましたが、大体だいたいあのあたりだったのでございます。わたくしはそこで対岸たいがんのおしろ最後さいごあがるのをながめたのでございます。
京、伏見ふしみさかい、大阪、——わたしの知らない土地はありません。わたしは一日に十五里歩きます。力も四斗俵しとびょうは片手にあがります。人も二三人は殺して見ました。どうかわたしを使って下さい。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
如何いかに相成りまするか! 早速人をつかわす所存で御座りますが、生国しょうこく生地しょうちにおいて、御落胤で無いという証拠のあがらぬ限り、偽者として処置致すことは、越前の役儀のおもてとして、出来兼ねまする
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
扉船とせん内の海水が排除されて、その巨大な鋼鉄製の扉船が渠門きょもんの水上へポッカリ浮びあがっても、それからその浮び挙った扉船を小船にかして前方の海上へ運び去り、小蒸汽こじょうきに曳航された入渠船が
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
僕は、そこへ反証があがりゃしないかと、そればかりおそれているところなんだよ。だいたい、包囲形を作って絞り出した結果というのが、2−1=1にひくいちはいちの解答じゃないか。しかし、倍音が……倍音が?
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ぢいさんもわたしも頭アあがらなかつたネ、うれなきになけてよ
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
「策はあるンだらう……。戦果が毎日あがつてるぢやないか」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
ごうあがっておらん。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はためき渡りたるその刹那せつなに、初声うぶごゑあがりて、しもぼんくつがへさんばかりの大雨たいうたちまちにしてあがりぬ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
「銭形の親分のめえだが、もう下手人があがって居るんだぜ。親分に汗を掻かせる程のこともあるめえよ」
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「ウ、ウム」と膝をのりだして——「今朝こんちょうも諸方から来ている書類に目を通しているのだが、ひとつとしてかくたる手がかりはない。ところで、何かそちの手で、めぼしいことがあがったか」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中老などと子ども組ではいばっていても、若連中わかれんじゅうに入っては使い走り、だまって追いまわされていて一向に頭があがらない。かれらの側からいうと、ここでまた一回の努力がいるのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
勿論この川筋には、さっきから全然人煙じんえんあがっている容子ようすは見えなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第二には、家名もあが
(新字新仮名) / 吉川英治(著)