投出なげいだ)” の例文
歯をくじきぬ。されども苦痛を感ずるていなく、玉のかいな投出なげいだして、くういだきて胸にめ附け、ニタリと笑いて、「時さん、おお、可愛いねえ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
げ是々皆なのしう先々まあ/\しづかにせられよ此れ處か未々まだ/\まけがある是を惣内殿貴方あなた覺えが有うなと投出なげいだ姫路ひめぢ革の三徳を見て惣内はヤア是はと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幽霊のやうに細く白き手を二つ重ねて枕のもとに投出なげいだし、浴衣ゆかたの胸少しあらはに成りて締めたる緋ぢりめんの帯あげの解けて帯より落かかるもなまめかしからでいたましのさまなり。
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
淫婦いんぷごとく脚そらざまに投出なげいだ
しても此方にはしかとした證據があるぞ是其方所持しよぢ煙草入たばこいれが其場に落して有しなり夫を見よと投出なげいだされしに富右衞門は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
幽靈いうれいのやうにほそしろふたかさねてまくらのもとに投出なげいだし、浴衣ゆかたむねすこしあらはにりて、めたるぢりめんのおびあげのけておびよりおちかゝるもなまめかしからでいたましのさまなり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
納め彌々いよ/\其方そのはう取持呉とりもちくれんとならば任する程に能々よく/\仕課しおほせ手に入れよ是は當座の褒美はうびなりと金三兩投出なげいだせしかば七助有難しと押戴おしいたゞくを又不承知なれば其金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたしもどりましたからは御心配ごしんぱいなくお就蓐やすみくだされと洒然さつぱりといひてとなりつまかへしやり、一人ひとりさびしく洋燈らんぷあかりに烟草たばこひて、忌々いま/\しき土産みやげをりねづみべよとこぐなはのまゝ勝手元かつてもと投出なげいだ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
馬鹿野郎ばかやらうめとのゝしりながらふくろをつかんでうら空地あきち投出なげいだせば、かみやぶれてまろ菓子くわしの、たけのあらがきうちこえてどぶなか落込おちこむめり、げん七はむくりときておはつと一こゑおほきくいふになに御用ごようかよ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手桶てをけをも其處そこ投出なげいだして一つは滿足まんぞくなりしが一つはそこぬけにりけり、此桶これあたゑなにほどからねど、身代しんだいこれがためにつぶれるかのやう御新造ごしんぞ額際ひたへぎは青筋あをすぢおそろしく、朝飯あさはんのお給仕きうじよりにらまれて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手桶をも其処そこ投出なげいだして一つは満足成しが一つは底ぬけに成りけり、此桶これあたゑなにほどか知らねど、身代これがためにつぶれるかの様に御新造の額際ひたへぎはに青筋おそろしく、朝飯あさはんのお給仕よりにらまれて
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
馬鹿野郎めとののしりながら袋をつかんで裏の空地へ投出なげいだせば、紙は破れてまろび出る菓子の、竹のあら垣打こえてどぶの中にも落込むめり、源七はむくりと起きてお初と一声大きくいふに何か御用かよ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)