恩愛おんあい)” の例文
けられぬなれば恩愛おんあいおもきにかれて、くるまにはりけれど、かゝるとき氣樂きらく良人おつと心根こゝろねにくゝ、今日けふあたり沖釣おきづりでもものをと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
言張し憑司夫婦も恩愛おんあいに心のおにつのをれて是までたくみし惡事の段々殘らず白状なりたりけり依て大岡殿は外々の者共ものどもへも右の趣きを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくのごとき恩愛おんあいは人の眼をしのんで、世にあまたあると信ずる。いな、あまたどころではない、かくのごとき情愛は空中にちていると思う。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
現世的げんせてき執着しゅうじゃくなかで、わたくしにとりて、なによりもるのにほねれましたのは、まえもうすとおり矢張やはり、けた両親りょうしんたいする恩愛おんあいでございました。
武門ぶもんをすて、世をすて、あらゆる恩愛おんあい争闘そうとう修羅界しゅらかいを、すてられた人の身の上でござるもの。話すべきにあらず、また話して返らぬことでもある」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その目的もくてきおよそ三つにわかつことが出來できる。一はうらみはうずるためで一ばんこわい。二は恩愛おんあいためむしろいぢらしい。三は述懷的じゆつくわいてきである。一のれいかぞふるにいとまがない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
黙れッ! おのれお艶、痩せても枯れても武士の妻ともあろう者が、正邪せいじゃの別、恩愛おんあい義理ぎりをもわきまえず、言わせておけば際限もなく、よッくノメノメとさようなことがいえるな。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
それが父母恩愛おんあいの一端をせめてむくいる所以ゆえんであると考えているのでした。
親子の愛の完成 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
このはなし何事なにごと分明ぶんめいになつた。それにけても濱島武文はまじまたけぶみむかしながら壯快おもしろ氣象きしやうだ、たゞ一人ひとり帝國ていこく軍人ぐんじん養成ようせいせんがめに恩愛おんあいきづな斷切たちきつて、本國ほんごくおくつてやるとは隨分ずゐぶんおもつたことだ。
賣てとかき口説くどき親子の恩愛おんあいかう暫時しばしはても無りけり漸々やう/\にしてつまお安はおつなみだ押拭おしぬぐ夫程迄それほどまでに親を思ひ傾城遊女けいせいいうぢよと成とても今の難儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
またたとへば、父母ふぼはととさま、ははさまんですこしもつかへなきのみならず、かへつ恩愛おんあいぜうこもるのに、なにくるしんでかパパさま、ママさまと、歐米おうべい模倣もはうさせてゐるものが往々わう/\ある。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
思ふ事貴賤きせん上下の差別さべつはなきものにて俚諺ことわざにも燒野やけの雉子きゞすよるつるといひて鳥類てうるゐさへ親子の恩愛おんあいにはかはりなしかたじけなくも將軍家には天一坊はじつの御愛息あいそく思召おぼしめさばこそかく御心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)