当然あたりまえ)” の例文
旧字:當然
全体大切な児童こども幾百人なんびゃくにんよせるのだもの、丈夫な上に丈夫に建るのが当然あたりまえだ。今日一つ原に会ってこの新聞を見せてやらなければならん
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
田舎者「宿屋の番頭さんは物の間違にならん様にするが当然あたりまえで、わしが目で見て証拠が有るので、なに間違えばえ、わし脊負しょって立つ」
そんな馬鹿げた事があるものか、酒を飲みに行けば金のるのは当然あたりまえの話だ。ればかりの金のないはずはないじゃないかと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わたくしあきれてそうさけびましたが、しかしおじいさんはれいによってそんなこと当然あたりまえだとった風情ふぜいで、ニコリともせずわれるのでした。——
鰹節を橋とし、ナイフを水としますと、この場合は、この章の標題とは反対の「水は流れて橋は流れず」であります。それは当然あたりまえのことです。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それだけの罪でもろくなことの無いのは当然あたりまえです。二十年ぶりで現在の子に邂逅めぐりあいながら、その手にかかって殺されると云うのも自然の因縁でしょう。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
当然あたりまえならば全部出来上がっていなければならない所であるが、器械的の仕事と違ってこういう側の仕事は、そう日限通りに参るわけには行かない。
わからないから謎とされ、謎となっては頼まれもしないに解いて見しょうという者の飛び出してくるのは、これは当然あたりまえ
あいにく神通がないので、これは当然あたりまえに障子を開け、また雨戸を開けて、縁側から庭へ寝衣ねまき姿、跣足はだしのままで飛下りる。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怖ろしいというよりもむしろ、何だか済まないような……源次に怨まれるのは当然あたりまえのような気がして仕様がなくなった。
斜坑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから今日まで妻として貞操に何の欠けた所もない生活を続けて来ているのは自分ら夫婦にとって東から日が昇るのとひとしく当然あたりまえの事としている。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
しかし、役向の者が、役向を以てめぐる時分には、その正面を避けない限りは、事が面倒になるのは当然あたりまえであります。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「そりゃ、そうだろう、当然あたりまえのことだ、いやしくも有夫の女じゃないか、言語道断だ、それをまたとりもつ婆あは、一層言語道断だ、天人てんびとともにゆるさざる奴だ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
諏訪子 当然あたりまえだわ、はかられるものがかわれば、これは、仕方がないことよ。望月さんのスーツのようにね。
鋏と布と型 (新字新仮名) / 久坂葉子(著)
「善さんもお客だッて。だれがお客でないと言ッたんだよ。当然あたりまえなことをお言いでない」と、吉里は障子を開けて室内うちに入ッて、後をぴッしゃり手荒く閉めた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
今まで死んだと思い込んでいた人が、突然目の前に現われたのですから、誰だって胆をつぶすのは当然あたりまえです。
鉄の処女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
当然あたりまえサ、二十三にも成ッて母親さん一人さえ楽にすごす事が出来ないんだものヲ。フフン面目が無くッてサ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
四角の角々を切り落せば、角の数が倍になって、八角に成るのわ当然あたりまえ、しかもそれわ自分の所業しわざであるのに、そうとわ心付かぬ三角定木、驚いたの驚かないの!
三角と四角 (その他) / 巌谷小波(著)
それで当然あたりまえならば正月着はるぎの一つも拵えなければならぬ冬なかばに、またありもせぬ身の皮を剥いだり
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「成程、湧いていますな。一杯になれば流れるのは当然あたりまえですが、量が多いだけに兎に角奇観ですな」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
当然あたりまえですよ。ありゃあ僕が鳴らしたのですから。それで、ラザレフ事件は解決されました。」
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そりゃア来ないのが当然あたりまえさ、ああいうお嬢さんというものは、抱かれることには慣れているが、ああいう勇敢な障子のて方には、おそらく慣れていないだろうからなあ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何に致せ、ああいふ風俗に、落ちてをる人ゆゑ。当然あたりまえの挨拶が、ちよつとしても喧嘩腰。さぞお驚きなされたでござんしよが。私は知つた人ゆゑに、お気遣ひ下されますな。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「どうせお前たちを見るのは、一番縁の近い小崎のほかにアないもんだで、行ったらよく話して見るがいい。あすこには子供がないで、そのくらいのことをするが当然あたりまえだ。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
而してこの時、過去を顧みて格別残念とも何とも思わず、これが当然あたりまえだと信じている。……
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
貴様が朝鮮を追っ放われたのは当然あたりまえだ。朝鮮のものがわるいんじゃない、みんな貴様がわるいんだ。生意気で、強情で、根性がひねくれてさ……そんなことでは誰が世話をみてくれるものか。
本来なら、自分のほうが棒鼻につかまって引っかついで行くべきところを、こちらが師匠にかつがれて駕籠の中で膝小僧をだいて揺られているというんだから、これは、どうも気がさすのが当然あたりまえ
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
皆びっくりするのは当然あたりまえだわ。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
忠「それは重々私が悪うございましたが、相談をして又お前に止めたり何かされると困るから……これは武家奉公をすれば当然あたりまえのことで」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
当然あたりまえなら、あれとか、きゃッとか声を立てますのでございますが、どう致しましたのでございますか、別に怖いとも思いませんと、こう遣って。」
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
是れは可笑しい。丸で日本とアベコベな事をして居る。御亭主が客の相手になってお内儀さんが周旋奔走するのが当然あたりまえであるに、りとはどうも可笑しい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そしてとうとうその夜は寝ずじまいになり、客人達もその義理立てを当然あたりまえに思って平気で居ます。そういうことが度々続いたとしたら、その結果はどうなるでしょうか。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「イエ、ナニ。こっちの事で……いや誠に結構な御評定で御座います。それが当然あたりまえの道筋で、まだまだ手遅れでは御座いますまい。しかしビックリなされましたろうなあ」
いえ、言うことの出来なかッたのが当然あたりまえであッた。ああ、もうあの車を止めることは出来ぬか。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
実際、このへんてこな初対面の二人のあいだに、十年の知己のような許し合った心持ちが胸から胸へ流れたことは、不思議といえば不思議、当然あたりまえといえば当然かもしれない。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
別段かわった事もない。小娘でないから、少しは物慣れた処もあったろうが、其は当然あたりまえだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
帰らないのが当然あたりまえである。彼は彼女を振りすてて城下へ帰って行ったのだから。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それじゃ当然あたりまえ発句ほっくに読むほどのこともない。何うも僕には発句は分らない」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
昔から云う安珍あんちん清姫きよひめさ。嫌えば嫌うほど執念深く祟ってるのが当然あたりまえだアね。先方むこうが何とも思わなくっても、此方こっちが惚れていりゃア仕方がないじゃアないか。お前さんは馬鹿だよ、素人だよ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
当然あたりまえじゃねえか。」新吉は嬉しそうなみを目元に見せたが、じきにこわいような顔をする。お作が始末屋というよりは、金を使う気働きすらないということは、新吉には一つの気休めであった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
老「いやくわしい事を御存じだろうから、仰しゃらんならわたくしと一緒に同道していらっしゃい、御姓名ぐらい伺うのは当然あたりまえの事だ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
清浄しょうじょう潔白、おのずから同藩普通の家族とはいろことにして、ソレカラ家をさって他人に交わっても、そのふうをチャントまもって、別につつしむでもない、当然あたりまえな事だとおもって居た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いや、いや、もしその人だとすれば——三年以前に別れてから、片時も想わずにはおらぬ、寝た間も忘れはしないのであるから、幻も、そのおもかげ当然あたりまえで、かえって不審いぶかしくもすごくもないはず
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それは当然あたりまえですわ。モト/\何ともないんですもの。けれども表向きは御病気で休んでいらっしゃるんですから、余り目立たない方が宜かなくて? 近所で種々と申しているようですわ」
朝起の人達 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうするのが当然あたりまえとしてお客に行った家で、夜ふけまで騒ぎ廻ります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
現実の人生や自然に接したような切実な感じの得られんのは当然あたりまえだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
当然あたりまえさ。親子だって似ないものもあるじゃないか。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
友「百両借りた証文が三百両となりました、百と云う字と金の字の間へ三の字を平ったく書いたのですから、騙りと云うのは当然あたりまえでげしょう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
当然あたりまえさ。しかし迷いが晴れてかったよ。毎日のように顔を合せていると分らないが、純然たる第三者が見ると君もこれで最早相応の年輩なんだね。そこで僕はもう一遍君に勧めるが……」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
待て、女の櫛は、誰も居ない夜具の中に入っていると、すやすやと寝息をするものか、と考えたくらい、もうそれほどの事には驚かず、当然あたりまえのようだったのも、気がどうかしていたんでしょう。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)