常世とこよ)” の例文
「やすみしし吾大王おほきみ、高耀ひか皇子みこきいます大殿おほとのの上に、ひさかたの天伝あまづたひ来る、雪じもの往きかよひつつ、いや常世とこよまで」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここにそのぎし八尺やさか勾璁まがたま、鏡、また草薙くさなぎの劒、また常世とこよの思金の神、手力男たぢからをの神、天の石門別いはとわけの神を副へ賜ひてりたまはくは
我この常世とこよ状態ありさまを汝のをる處にて彼に説明ときあかすとも、こは汝のこひをわが否む能はざるが爲なれば咎むるなかれ。 三一—三三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それから垂仁天皇すいにんてんのうのおいいつけで、はるかなうみわたって、常世とこよくにまでたちばなのりに行った田道間守たじまもりは、天日矛あまのひぼこには五だいめのまごでした。
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そしてそのタチバナの名は、その常世とこよの国からはるばるとたずさ帰朝きちょうした前記の田道間守たじまもりの名にちなんで、かくタチバナと名づけたとのことである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
野や田や、木々の葉は、蕭々しょうしょうと冬枯れを告げてくるが、宮村の草庵の灯は、いよいよ、常世とこよの光明にみちていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし仏菩薩ぶつぼさつもなくてただ天人のみなる月の都、老いもせず、思うこともなく、しかも「父母ちちはは」というもののある常世とこよの国、それは仏教的な空想ではない。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
是は全く底という文字にとらわれ、底の国も常世とこよの国も同じという『古事記伝』の説を引用しながら、それを十分に考えてみられなかったためかと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そしてさらにそれよりも遠き西の国は、常に夜であるべき筈で、これを「常世とこよ」の国と云った。それを文字に「常世」と書くのは、その原義を失った後の当て字である。
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
……この夢ともおつつとも知れぬ限りない時のは一体いつまで続くと云うのじゃろうか? これは、見果てなき常世とこよの夢じゃ。そうじゃ、儂は見果てなき常世の夢に生きている。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
常世とこよいのち常世とこよのざざんざ、いたましい松の木よ、おまへの歎は甲斐が無い、いくらおまへがしにたくても、宇宙のおきてが許すまい、獨ぼつちで生きてゆくのさ、おまへをいやがる森のなか
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「神代巻」や『古事記』に、天照大神あまてらすおおみかみ岩戸籠いわとごもりの時、八百万やおよろずの神、常世とこよ長鳴鳥ながなきどりあつめ互いに長鳴せしめたと見ゆ。本居宣長曰く、常世の長鳴鳥とは鶏をいう。常世は常夜とこよで常世とは別なり。
「心は理の魂なり。気は理の身なり。ないし、その天のいまだ興らざる先に、常世とこよの国あり。神はみな理の身なり。ゆえに欲なく、迷いなし。ゆえに寿の終わるときなく、はじめの天祖の身これなり、云云うんぬん
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
心から常世とこよを捨てて鳴く雁を雲のよそにも思ひけるかな
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
わかれぬ、二人ふたり魂合たまあひしは、常世とこよにも
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
お前を常世とこよの水の都へ連れて行くのは
浪をふ——常世とこよの島の島が根に
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
花は常世とこよに馨るらん
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
常世とこよに長き天地あめつち
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
花は常世とこよ
おさんだいしよさま (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
また天皇、三宅みやけむらじ等が祖、名は多遲摩毛理たぢまもりを、常世とこよの國に遣して、時じくのかくを求めしめたまひき。
田道間守たじまもり常世とこよの国(今どこの国かわからぬが、多分中国の東南方面のいずれかの地であったことが想像せられる)
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
チャボと名古屋交趾コーチンとを並べて鳴かせて見ても、神代の常世とこよ長鳴鳥ながなきどりの声音を、想像することはむつかしい。
日本古来の神話的・お伽噺的形象の上にシナの神仙譚の影響を受けたらしい「仙女」(常世とこよ天少女あまつおとめ
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
吾妹子わぎもこともうらむろ常世とこよにあれどひとき 〔巻三・四四六〕 大伴旅人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
傷ましい木よ、常世とこよいのち常世とこよのざざんざ。わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
常世とこよでて旅の空なるかりがねもつらおくれぬほどぞ慰む
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
常世とこよのみめぐみひそみうかがふとき
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
いくさ常世とこよ、常世は戦……」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魂合たまあひし身は、常世とこよにも
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
常世とこよの風に吹かれつゝ
常世とこよの緑 吹き消えて
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
かれそれより、大穴牟遲と少名毘古那と二柱の神相並びて、この國作り堅めたまひき。然ありて後には、その少名毘古那の神は、常世とこよの國に度りましき。
これは今日の志州ししゅう磯部いそべ伊雑神宮いぞうじんぐうの地であって、いわゆる常世とこよなみ重浪しきなみするなぎさでもあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
従って彼らが完全なるものとして憧憬するのは、この現世よりこの不完全を取りのぞいた常世とこよの国である。死なき国である。それを彼らは、「地上のここでないところ」に空想した。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
飽かなくに雁の常世とこよを立ち別れ花の都に道やまどはん
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
をりこそよけれ常世とこよなる
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
常世とこよの緑 消え失せて
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
正目まさめにかかる常世とこよべの
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
常世とこよの海原。505
また天皇、三宅の連等の祖先のタヂマモリを常世とこよの國に遣して、時じくのかぐの木の實を求めさせなさいました。
少彦名命すくなひこなのみこと熊野くまの御碕みさきから、彼方かなたへ御渡りなされたというのもなつかしいが、伊勢を常世とこよなみ敷浪しきなみする国として、御選びになったという古伝などはとくに殊勝しゅしょうだと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
神酒みきの長官、常世とこよの國においでになる