小槌こづち)” の例文
『梅津長者物語』には鼠三郎、野らねの藤太等の賊が長者の宅を襲うと、大黒真先に打って出で打ち出の小槌こづち賊魁ぞくかいを打ち殺す事あり。
西施せいし小観音こかんのん小槌こづち、おだまき、獅子丸、於呂知おろち、箱根、沖波などという白拍子しらびょうし名をそれぞれに持っており、わけて於呂知というのは
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでさっそく小槌こづちって、そこへべきれないほどのごちそうをして、おひめさまと二人ふたりなかよくべました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
小槌こづちふるいて横ざまに打ち、かの弓の下をくぐらするに、たくみなるは百に一つを失わねど、つたなきはあやまちて足など撃ちぬとてあわてふためく。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
隠蓑かくれみの」なる言葉は『信綱記』にもいう如く、「鬼もちたる宝は、かくれ蓑、かくれ笠、打出うちで小槌こづち、延命小袋」
蓑のこと (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
隣の坊ちゃんを竜宮りゅうぐう小僧になぞらえて見る。ここでは坊ちゃんは海表かいひょうの世界から縁あって、鶴見に授けられたものとする。坊ちゃんは打出うちで小槌こづちを持って来る。
「今朝春の小槌こづちを出たり四方よもの人 存義ぞんぎ」という句と全然同じ行き方ではないが、新春そのものを包括して、ある形の下に現したのが、この種の句の特色をなしている。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
高い建物ビルディングの出現するのははなはだ突然である。打ち出の小槌こづちかアラディンのランプの魔法の力で思いもよらぬ所にひょいひょいと大きなビルディングが突然現われる。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
胆のつぶれるような高賃で手伝いに出た村人たちは、八百助殿はみえなくなった一年間にきん鉱山やまを掘り当てたか、打出の小槌こづちでも拾われたに違いないとうわさをし合った。
さゝに、大判おほばん小判こばん打出うちで小槌こづち寶珠はうしゆなど、就中なかんづく染色そめいろ大鯛おほだひ小鯛こだひゆひくるによつてあり。お酉樣とりさま熊手くまで初卯はつう繭玉まゆだま意氣いきなり。北國ほくこくゆゑ正月しやうぐわつはいつもゆきなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あるどころではない。何でも好きなものの振り出せる打出うちで小槌こづちという宝物さえある。」
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
にんじんは、苦情もいわず、遮二無二しゃにむにがんばってあとをついて行く。靴で怪我けがをする。そんなことは噯気おくびにも出さない。手の指がじ切れそうだ。足の爪先つまさきふくれて、小槌こづちの形になる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
現に雪子の色直しの衣裳いしょうなども、七・七禁令に引っ懸って新たに染めることが出来ず、小槌こづち屋に頼んで出物を捜させたような始末で、今月からはお米も通帳制度になったのであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
槖駝師うえきや剪裁せんさいの手を尽した小庭を通って、庫裡くりに行く。誰も居ない。尾の少しけたとしりた木魚と小槌こづちが掛けてある。二つ三つたゝいたが、一向出て来ぬ。四つ五つれよとたたく。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
疳癪がおこつた時には表の米屋が白犬をると思ふて私の家の洗ひかへしを光沢出つやだしの小槌こづちに、きぬたうちでも遣りに来て下され、それならばお前さんも人に憎くまれず私の方でも大助り
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道服を着た医師くすしめいた男が、盆の上に整然と並べられている、小刀メス小槌こづち小鋸このこぎり生皮剥なまかわはぎの薄刃物、生き眼刳りの小菱鉾こびしぼこ生爪なまづめ剥がしの偃月えんげつ形のきり、幾本かの針といったような物を
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「この張扇一本、打出うちで小槌こづちみてえなものでげす」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
官庫は彼女の打出うちで小槌こづちであり、彼女の物慾を満たす殿堂です。お蝶は寒さも怖ろしさも忘れている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くつさきもて押へたる五色ごしきたまを、小槌こづちふるひて横様よこざまに打ち、かの弓の下をくぐらするに、たくみなるは百に一つを失はねど、つたなきはあやまちて足など撃ちぬとてあわてふためく。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
これはおにわすれて行った小槌こづちです。これをれば、なんでもほしいとおもうものがてきます。ごらんなさい、いまここでわたしのせいしてお目にかけますから。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
疳癪かんしやくがおこつたときにはおもて米屋こめや白犬しろいぬるとおもふてわたしうちあらひかへしを光澤出つやだしの小槌こづちに、きぬたうちでもりにくだされ、それならばおまへさんもひとにくまれずわたしはうでも大助おほだすかり
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
竜宮から小槌こづちを貰ったって、振ってもたたいても媽々かかあは出ねえ。本来ならずしに納めて、高い処に奉って、三度三度、お供物を取換とっかえて、日に一度だけ扉を開いて拝んでいなけりゃ罰が当ら。……
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こういって、一寸法師いっすんぼうしは、小槌こづちげて
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)