威嚴ゐげん)” の例文
新字:威厳
テムプル先生は、いつも彼女の容子に何か靜かなほがらかなものを、態度にどことない威嚴ゐげんを、言葉にはひんよく穩かなものを持つてゐた。
……げんに、廣島師範ひろしましはん閣下穗科信良かくかほしなしんりやうは——こゝに校長かうちやうたる威嚴ゐげんきずつけずれいしつしない程度ていどで、祝意しゆくいすこ揶揄やゆふくめた一句いつくがある。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
までたかくはないが、骨太ほねぶと肉附にくづきい、丸顏まるがほあたまおほきなひとまなじりながれ、はなたかくちしまり、柔和にうわなか威嚴ゐげんのある容貌かほつきで、生徒せいとしたしんでました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それと同時どうじ若者わかものためにはかれ蝮蛇まむし毒牙どくがごときものでなければらぬ。れでありながら威嚴ゐげん勢力せいりよくもないかれすべての若者わかものからかれ苛立いらだたしめる惡戯いたづらもつむくいられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
教頭けうとう隨分頑固ずゐぶんぐわんこをとこで、こんな不都合ふつがふ示威運動じゐうんどう讓歩ぢやうほしては學校がくかう威嚴ゐげんたもたれないとつて、葉書はがきなんまいようと見向みむきもしなかつたが、状態じやうたい一月ひとつきばかりもつゞいて
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
美徳びとくはふあやまれば惡徳あくとくくわし、惡徳あくとく用處ようしょ威嚴ゐげんしゃうず。この孱弱かよわい、幼稚いとけなはなぶさうちどく宿よどれば藥力やくりきもある、いでは身體中からだぢゅうなぐさむれども、むるときは心臟しんざうともに五くわんころす。
日頃苦蟲を噛みつぶしたやうな顏を、威嚴ゐげんそのものゝやうに心得て居る孫右衞門長者は、土地の小百姓や町人の前で、地藏の肌に手を觸れて見るやうな、不見識なことは出來なかつたのです。
こんな事情では私は大して威張れない、いつも私は威嚴ゐげんを保つよりも快活になりたかつたから。で、私は彼の後を追つた——彼は階段の下に立つてゐた。
みせかまどうへで、ざるすかすまで、あか/\とのさしたところは、燒芋屋やきいもやとしては威嚴ゐげんとぼしい。あれはれるほどなさむばんに、ぱつといきれがつにかぎる。で、白晝はくちう燒芋屋やきいもやは、呉竹くれたけさと物寂ものさびしい。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
皆次は精一杯亭主の威嚴ゐげんを示すのでした。
泰道はやうや威嚴ゐげんを取戻して立止ります。