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ふりがな文庫
“
嗤
(
わら
)” の例文
今日でも尚そのことが一般に
嗤
(
わら
)
うべきこと、作家にとっても読者にとっても害悪しかないことと理解され切っていないところがあり
ヒューマニズムへの道:文芸時評
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しかし、持彦は
悠然
(
ゆうぜん
)
として水をあび、そしてみそぎの行いを
済
(
すま
)
したのである。それを
見澄
(
みすま
)
した上の官人は
小気味宜
(
こきみよ
)
げに
嗤
(
わら
)
っていった。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
と熊城は
傲然
(
ごうぜん
)
と云い放って、自説と法水の推定が、ついに一致したのをほくそ笑むのだった。しかし、法水は
弾
(
はじ
)
き返すように
嗤
(
わら
)
った。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
然るに「ここにあら」がおかしいと
嗤
(
わら
)
われて、それは叔母の娘で、尋常一年生だから自分より一つ年下の美津子さんだとあとで知った。
放浪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そういっては
嗤
(
わら
)
われるかもしれないが、こんな夜更、こんな場所で、怪しげなる事件に関係していいものだろうかどうかを考えたのだ。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
おれは
憮然
(
ぶぜん
)
と浮かない気分になった。多少は痛快だなどと思った早計を自分で
嗤
(
わら
)
い、かれらの脇をすりぬけるようにして階段をおりた。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
通船楼のおかみさんに
嗤
(
わら
)
われたくない気がしきりにして来る。百五十両という額も、今さら、身に過ぎた大金に思えて惜しくもなった。
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其の離島へ行つたことのある某氏に聞くと、彼等は普通の耳をもつた人間を見ると
嗤
(
わら
)
ふさうである。
顎
(
あご
)
の無い人間でも見たかのやうに。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
気のいい観客は、これが曲芸だと思って、一生懸命、拍手してくれているが、舞台裏の黒吉には唯、
嗤
(
わら
)
われているとしか響かなかった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
ゆめお
嗤
(
わら
)
い下さるまじく、いずれは再び七年後に、この山頂にて御面談仕るべく、まずは一筆、こころの
急
(
せ
)
くまましるし残し申候。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかるに相手は明らさまにそれを
嗤
(
わら
)
っていた。問い詰められた彼の返す言葉ははげしい音を立てて飛びださねばならぬ場合である。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「まあね。ですが追々とそのことに就いてすつかりお話ししませう。きつと、あなたは私の苦しんだのをお
嗤
(
わら
)
ひになるばかりでせう。」
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しかし、さういふ場合に、自分を
嗤
(
わら
)
つてしまへばそれまでです。僕は女を信じないで、それをさほど苦痛とは思ひませんでした。
クロニック・モノロゲ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
幻聴の中では、彼の誠意を
嗤
(
わら
)
うシイカの
蝙蝠
(
こうもり
)
のような笑声を聞いた。かと思うと、何か
悶々
(
もんもん
)
として彼に訴える、清らかな哀音を耳にした。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
「愚か者達めがっ。私怨じゃ。いいや、安藤対馬、堀織部正恩顧の者共なぞに恨みをうける覚えはないわっ。人が
嗤
(
わら
)
おうぞ。——行けっ」
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
嗤
(
わら
)
うべきドグマの為めに歪曲され、又阻害されて居ることであろう! 彼等は真理に対して、完全に防衛されたる鉄壁である。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
「どうも芥川さんの美術論は文学論ほど信用出来ないからなあ。」——滝田君はいつもこう言って僕のあき盲を
嗤
(
わら
)
っていた。
滝田哲太郎氏
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それが私をして行く先々で、駒ヶ岳への路を聞き
質
(
ただ
)
さなければ止ましめなかった原因であった。今から見れば
嗤
(
わら
)
う
可
(
べ
)
きことであるに相違ない。
木曽駒と甲斐駒
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
やっぱり私には解らない、わからないが何となく不気味な気持がして、どこからか幻の
嗤
(
わら
)
いが聞えて来はしないかと、思わず周囲を見廻した。
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
〔譯〕
遠方
(
えんぱう
)
に歩を
試
(
こゝろ
)
むる者、往往にして
正路
(
せいろ
)
を
舍
(
すて
)
て、
捷徑
(
せうけい
)
に
※
(
はし
)
り、或は
繆
(
あやま
)
つて
林※
(
りんまう
)
に入る、
嗤
(
わら
)
ふ可きなり。人事多く此に
類
(
るゐ
)
す。
特
(
とく
)
に之を
記
(
しる
)
す。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
ぼろ靴のおかげで、私が
辷
(
すべ
)
ったら、皆は私を
嗤
(
わら
)
うのよ。私は泥まみれになってるのに、皆はげらげら笑ってるのさ。エミリイ、わかったかい?
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
その一首に、「為惜先生空講道。可嗤豎子漫成名。」〔為ニ惜ム先生ノ空シク道ヲ講ズルヲ/
嗤
(
わら
)
フ可シ豎子ノ漫ニ名ヲ成スヲ〕の
聯句
(
れんく
)
を見る。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
もってベンサムの眼中に国境なきことを推知することが出来る。人あるいはこの論を読んでベンサムの
迂
(
う
)
を
嗤
(
わら
)
う者もあらん。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
「ふゝ」と、女は
嗤
(
わら
)
つてゐたが、「まあ余り好いことはありませんね。親元へ帰つて行く人もあるし、東京でお客と一緒になる人もあるしさ。」
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
それから、この家の忙しい疎開振りを眺めて、「ついでに
石灯籠
(
いしどうろう
)
も植木もみんな持って行くといい」など
嗤
(
わら
)
うのであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
新しい句を作るのはまずこの「や」「かな」を排斥しなければならぬ、という論者がありますが、私はその説を
嗤
(
わら
)
います。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
わたくしは同行を辞して、「厳島を観て死ぬるも、観ずに死ぬるも、大した違は無いやうだ」と云つて、人々に
嗤
(
わら
)
はれた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
で、そう言って大阪の落語家たちは
嗤
(
わら
)
っていたがひと月ふた月と居着いてみると、お尻の据らんということが決して無理とも思えなくなってきた。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
そうして、ベンチへどたりと崩れて、漸く胸を撫で下した。何処かで
後指
(
うしろゆび
)
を差して自分の様子をゲラゲラ
嗤
(
わら
)
って見て居る奴があるかも知れん。………
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
夜鷹婆だ何だ彼だと、立番の野郎までが
嗤
(
わら
)
うあたしに、よく今みたいな事を聞いておくれだった。何年振りかで人間扱いをして貰った気がするんだ。
瞼の母
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
「損でも得でも、俺ら、そんなことはどうでもいいんだ。ひとに
嗤
(
わら
)
われたくねえから、俺ら、していんだから……」
米
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
「親分、恩に
被
(
き
)
ますよ——ほんとうに、さっきから言うとおり——ね、たった一度、ゆっくり話せればいいのだから——因果な女だと、
嗤
(
わら
)
ってね——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
が、それでも、啓吉の感情は、それ等の哄笑を
正当視
(
ジャスチファイ
)
する事が出来なかった、死者を
嗤
(
わら
)
っている群衆を、啓吉の感情はどうしても許さなかったのである。
死者を嗤う
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
(註一。スリップスロップ。——この間投詞は僕が若者間に流行させているもので、知らるる通り「汝の感傷癖を
嗤
(
わら
)
うよ。」というほどの意味である。)
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
だが目が近いのでいっぺんにつかまってしまう事を思うと、ふいとおかしくなってしまって、冷たい壁に私の
嗤
(
わら
)
いがはねかえる。何とかして金がほしい。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
私を傷つけなければ、君たちは生きて行けないのだろうね。(一行あき。)
殴
(
なぐ
)
りたいだけ殴れ。踏みにじりたいだけ踏みにじるがいい。
嗤
(
わら
)
いたいだけ嗤え。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
当時彼女はよく、祖母の銭勘定を
嗤
(
わら
)
ったり罵ったりしたが、今はその姿を想い出すと眼頭へ涙が滲んで来た。
棄てる金
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
たとえば豆腐のおからを一銭買うようなとき、人が食べるためと言えばたったそれっぱかり可笑しいが、モルに遣るのだと言えは少しも
嗤
(
わら
)
われないのだった。
モルモット
(新字新仮名)
/
細井和喜蔵
(著)
その杖の長さが一
米突
(
メートル
)
九四九で、近代なら、アルペンストック、さては西園寺陶庵和尚の杖、昔なら、モリエールに
嗤
(
わら
)
われた馬鹿貴族等の杖を想像させるが
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
あんな男達と本気で喧嘩をするなんて問題にも何にもならないよといって誰かが鼻で
嗤
(
わら
)
うような気もした。
小さき良心:断片
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
これは、彼女の夫が貧しい大工であった、という一事が原因していた。併し、心の中でお松は夫を
嗤
(
わら
)
った。
反逆
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
然し単に一法律家に過ぎぬ私が、
憖
(
なま
)
じ変な小説を書けば世の
嗤
(
わら
)
いを招くにすぎないでしょうから、私は今、あなた方の前に事件を有りの儘にお話して見ましょう。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
そして力に余る困難に
挑
(
いど
)
むことそれ自体が赤蛙の目的意志ででもあるかに考へてゐるやうな、私の
迂愚
(
うぐ
)
を
嗤
(
わら
)
ふであらう。私はしかし必ずさうだといふのではない。
赤蛙
(新字旧仮名)
/
島木健作
(著)
で、つい周囲に気兼ねもなく、秀岡にひらき直って話し出したのでしたが、秀岡は案の定、私の昂奮をせせら
嗤
(
わら
)
うのみで、ろくに相手にもなろうとしないのです。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
そして心では、
対手
(
あひて
)
に横を向いて
嗤
(
わら
)
はれたやうな侮辱を感じた。「畜生! 矢つ張り年を
老
(
と
)
つてる
哩
(
わい
)
!」
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
あの小説家を
嗤
(
わら
)
う訳には行かないのだ。彼は次第に自分が何を考えているのか判らなくなり始めていた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
世の迷信を
嗤
(
わら
)
わんがために一夜墓地に散歩して
石碑
(
せきひ
)
を
叩
(
たた
)
いて
幽霊
(
ゆうれい
)
があるものなら
顕
(
あらわ
)
れよと言って、一夜を暮らしたという話があるが、これを批評してカーライルが
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
露国の話に兎熊児を
嗤
(
わら
)
い唾を吐き掛けたので母熊怒って追い来るを兎
旨
(
うま
)
く逃げて熊穽に陥るとあり、蒙古に満月の夜兎、羊と
伴
(
つ
)
れて旅立つを狼襲うて羊を啖わんとす
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
猪の
脂
(
あぶら
)
と
松脂
(
まつやに
)
とを煮溜めた
薬煉
(
くすね
)
は
弓弦
(
ゆづる
)
を強めるために新らしく
武器庫
(
ぶきぐら
)
の前で製せられた。
兵士
(
つわもの
)
たちは、この常とは変って
悠々閑々
(
ゆうゆうかんかん
)
とした戦いの準備を
心竊
(
こころひそか
)
に
嗤
(
わら
)
っていた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
そして、いわばこの事件の性質上、当然の
開き
(
ギャップ
)
こそは、じつにこの事件を取り返しのつかないことに導いてしまった真の原因である。とこういうと、ある人は
嗤
(
わら
)
うだろう。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
嗤
漢検1級
部首:⼝
13画
“嗤”を含む語句
嗤笑
物嗤
嘲嗤
可嗤
可嗤的