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唆
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そそ
ふりがな文庫
“
唆
(
そそ
)” の例文
卑しくも私の趣味性を
唆
(
そそ
)
るものあらば座右に備えて
悠々自適
(
ゆうゆうじてき
)
し、興来って新古の壱巻をも
繙
(
ひもと
)
けば、
河鹿笛
(
かじかぶえ
)
もならし、朝鮮太鼓も打つ
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
とらにはこれらすべてが、退屈なほどみえすいていて、いまさら注意をひかれたり、好奇心を
唆
(
そそ
)
られたりする対象はなにもないのだ。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
狼の話を人の好奇心を
唆
(
そそ
)
るように書いてあるが、読んで見ると其辺にうようよしている筈の狼が結局噂だけで影も形も見せなかった。
二、三の山名について
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
君江は他の女よりすこし分量を多く貰っていた。それは金が彼女を強烈に興奮させて置いて、自分の慾情を
唆
(
そそ
)
ろうとしたためだった。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
猟犬どもの暴れもがく声と
室
(
へや
)
の
暖
(
ぬく
)
もりとで
唆
(
そそ
)
られた或る情慾が、だんだん
体内
(
みうち
)
にひろがって来た。で、彼は夫人の肩を軽く押えて
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
▼ もっと見る
約言すれば彼女の
霊魂
(
たましひ
)
の絶え間なき動きを、その艶麗と嬌媚との間に自然に現はすのであるから、男の心を動かし、
唆
(
そそ
)
り、挑発し
東西ほくろ考
(新字旧仮名)
/
堀口九万一
(著)
荒唐無稽
(
こうとうむけい
)
というものには、人の悲しさを
唆
(
そそ
)
る力はないものである。ところがファルスというものは、荒唐無稽をその本来の面目とする。
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
あまり
荘厳
(
しょうごん
)
を極めた建て物に、故知らぬ反感まで
唆
(
そそ
)
られて、廊を踏み鳴し、柱を叩いて見たりしたものも、その
供人
(
ともびと
)
のうちにはあった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
それ以上
強
(
し
)
いもしなかったが、庸三はそれを
機会
(
きっかけ
)
に、逗子事件のその後の進展について知りたいような好奇心もいくらか
唆
(
そそ
)
られた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
波形をなした線、柔らかな
呼息
(
いき
)
、そうして丸い形と、高まった頂きを見せた固い乳房が、左枝を焦だたしいまでに
唆
(
そそ
)
りはじめた。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
黒木を売る
大原女
(
おはらめ
)
の
暢
(
の
)
びやかな声までが春らしい心を
唆
(
そそ
)
った。江戸へ下る西国大名の行列が、毎日のように都の街々を過ぎた。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
たわれ
女
(
め
)
に悩ましい欲情を
唆
(
そそ
)
り湧かしめるあの
凄艶無比
(
そうえんむひ
)
な三日月形の疵痕を、白く広い額に発見するや、やにわと言いました。
旗本退屈男:02 第二話 続旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
人しれぬ小さな穴から、世間の裏を覗いてるような、また自分の運命を見守っているような好奇な楽しみが、彼の心を
唆
(
そそ
)
った。
少年の死
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
その時もその花畑の中にラジオの車が
据
(
す
)
えてあって
盛
(
さかん
)
に
唄
(
うた
)
を歌うていた以外には少しも感興を
唆
(
そそ
)
るものはありませんでした。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
牧野はそろそろ
訝
(
いぶか
)
るよりも、不安になって来たらしかった。それがお蓮には何とも云えない、愉快な心もちを
唆
(
そそ
)
るのだった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と、長崎屋は、一度はためらったものの広海屋の悠々とした表情を見ると、
煽
(
あお
)
られ、
唆
(
そそ
)
られるように、べらべらとこんなことをしゃべり出す。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
しかもお延が盆暮の約束を承知している癖に、わざと夫を
唆
(
そそ
)
のかして、返される金を返さないようにさせたのだという風な手紙の書方をした。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だから、信長の意地悪な眼は信長から射向けるのでなく、光秀そのものが、自然に
唆
(
そそ
)
りたてるのだともいえないことはない。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、辰男はこんな話に
些
(
すこ
)
しも心を
唆
(
そそ
)
られないで、例の通り默々としてゐたが、只
竊
(
ひそ
)
かにイルミネーシヨンといふ洋語の綴りや譯語を考へ込んだ。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
卑怯にも黒白を逆に云い做らし、思慮の浅い博徒を
唆
(
そそ
)
り、主水兄妹を討ち取らせようと、そう陣十郎は誠しやかに叫んだ。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
私は、これを広い意味に於ける探偵小説、
所謂
(
いわゆる
)
怪奇小説と称ばれるものも含むものである。共に、空想的疑惑、恐怖的な好奇心を
唆
(
そそ
)
るものだからである。
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
擬敵に対する軽い憎しみはやがて力強い情熱を
唆
(
そそ
)
って漕ぎ勝とうと彼女を一心にさせる。また松浦が漕ぎ越す。
娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
コリーヌはもとより彼らとふざけていた。そのあとで、わざとらしい
唆
(
そそ
)
るような調子をそのまま変えないで、クリストフと話をした。彼はそれにいらだった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
そのとき、事務室には最早誰れもいなかったので兄の言葉が途切れるごとに、湯のたぎり(沸)すぎた鉄瓶の鳴る音が救われようのない静寂を
唆
(
そそ
)
り立てていた。
三等郵便局
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
アンダルシア高原地方の牧場主たちが自己の丹誠凝らした猛牛を
闘牛場
(
グラサ・デ・トロス
)
へ送るよりも、より以上の熱狂を
唆
(
そそ
)
り立たせる有名なシーズン行事の一つになっていた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それから
鼠花火
(
ねずみはなび
)
というのは一つずつ輪になっていて箱に詰めてある。そんなものが変に私の心を
唆
(
そそ
)
った。
檸檬
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
膚さむい微風の底に、何がしの人の心を
唆
(
そそ
)
らずにはおかない仲春のいろが漂って、どこか遠くの町に火事があるのか、かすかに
間
(
ま
)
伸びした半鐘の音が流れていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
あすこの高い岩の蔭なら、誰も来はしないでしょう……と云ったかどうか知らないが、吾輩だったら、そんな風に云いまわして好奇心を
唆
(
そそ
)
るのが一番だと思うね。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
が、その下から、在来の落伍者と自分とを同じように見るということが、何となく彼の反感を
唆
(
そそ
)
った。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
祈念は祈念を微妙に
唆
(
そそ
)
る音楽を随伴しはじめた。若しそう言ってよければ、飛鳥仏にこもる祈りは厳しく思索的であり、白鳳仏にこもる祈りは柔軟に音楽的なのだ。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
銀山平や、六十里越、八十里越あたりの連山に眼を移せば、旅にいて、さらに旅心を
唆
(
そそ
)
られるのだ。
瀞
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
「古河の番頭が警官の服を着て交っていたそうです。確かにそれと思われる顔を見たという者があります。そいつが巡査たちを
唆
(
そそ
)
のかしたにちがいないというのです」
渡良瀬川
(新字新仮名)
/
大鹿卓
(著)
ドーブレクはこの涙に
唆
(
そそ
)
られたものか、乱暴にもその両腕で女をグイと
捕
(
つかま
)
えて自分の方へ引き寄せようとするのを、彼女は満身の力を籠めて憎々しげに突き飛ばした。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
歌の句が
断々
(
きれぎれ
)
に、
混雑
(
こんがらか
)
つて、
唆
(
そそ
)
るやうに耳の底に甦る。『
那
(
あ
)
の時——』と何やら思出される。それが余りに近い記憶なので、却つて
全体
(
みな
)
まで思出されずに消えて了ふ。
四辺
(
あたり
)
は静かだ。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
街の
灯
(
ひ
)
の色は夜ごと夜ごとに明麗になってきて、まして
瀟洒
(
しょうしゃ
)
とした
廓町
(
くるわまち
)
の
宵
(
よい
)
などを歩いていると、暑くも寒くもない快適な夜気の
肌触
(
はだざわ
)
りは、そぞろに人の心を
唆
(
そそ
)
って、ちょうど近松の中の
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
われらがまさに到らんとする幻滅とともに、眠れる自覚を
唆
(
そそ
)
り起こして、われらを偉大なる自然の前に引きいだし、実生活に対する自然の権威、自然に対する主観の地位等を痛感せしめた。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
妊娠しているという事実が心を
唆
(
そそ
)
るためか、この頃妻の姿体が俄かに
艶
(
なまめ
)
かしさを増して来たように思っていたが、今もその感じが鋭く襲って来た。新吉は火鉢の上で、妻の両手を軽く握った。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
家系に黒人の血でも混入しているのか、浅黒い
琥珀色
(
こはくいろ
)
の皮膚をしていて、それがまた、魅惑を助けて相手の好奇心を
唆
(
そそ
)
る。
倦
(
けだる
)
い光りを放つ、
鳶色
(
とびいろ
)
の大きな眼。強い口唇に漂っている
曖昧
(
あいまい
)
な微笑。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
佐竹の原に途方もない大きな大仏が出来て、
切舞台
(
きりぶたい
)
で閻魔の踊りがあるという評判で、見物人が来て見ると、果して雲を突くような大仏が立っている。客はまず好奇心を
唆
(
そそ
)
られてぞろぞろ這入る。
幕末維新懐古談:64 大仏の末路のあわれなはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
突兀
(
とっこつ
)
と秋空を
劃
(
くぎ
)
る遠山の上を高く
雁
(
かり
)
の列が南へ急ぐのを見ても、しかし、将卒一同
誰
(
だれ
)
一人として甘い懐郷の情などに
唆
(
そそ
)
られるものはない。それほどに、彼らの位置は危険
極
(
きわ
)
まるものだったのである。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それ丈けでも何となく気違いじみた、お化けめいた感じなのに、その不気味な令嬢が美しい未亡人の裸体殺人事件の現場に出入りしたというのだから、これが人々の好奇心を
唆
(
そそ
)
らない訳がなかった。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
芝居は至極あまいもので、些しも私の感興を
唆
(
そそ
)
らなかった。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
しかし彼は奇妙な興味を
唆
(
そそ
)
られない訳でもなかった。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
と柳下君は益〻好奇心を
唆
(
そそ
)
られる。
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
つきない感想を
唆
(
そそ
)
られる。
若き精神の成長を描く文学
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
何か反感を
唆
(
そそ
)
られる。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
あれはお化け鞄が紛失したのに困った烏啼が、小山すみれを
唆
(
そそ
)
のかして、猫又を利用した新規の起重装置をこしらえるように頼んだ。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だが他の青年たちは同じ意味でよけい反感を
唆
(
そそ
)
られ、その侮辱に対して、婦人たちが報復しないことでも
嫉妬
(
しっと
)
しているようだった。
いさましい話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あの心を
唆
(
そそ
)
る雪の姿は牛首山あたりに少し光っているのが眼に入ったのみで、黒部の本流も
亦
(
また
)
出入の激しい幾重の山裾に深く包まれて
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
病人の
枕頭
(
まくらもと
)
などで、おそろしいお増の顔と面と、向き合っている時ですら、お今はやるせない思いに、胸を
唆
(
そそ
)
られるのであった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
唆
常用漢字
中学
部首:⼝
10画
“唆”を含む語句
教唆
示唆
教唆罪
示唆的