十歳とを)” の例文
けれども、天魔に魅入られたものと親父も愛相あいそつかして、ただ一人の娘を阿父さん彼自身より十歳とをばかりも老漢おやぢの高利貸にくれて了つたのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
先々代のめひの子で、十歳とを孤兒みなしごになつたお夏に、佐渡屋の女主人や娘達、奉公人達まで殺す動機があらうとも思はれません。
十歳とを位の小供から、酔の紛れの腰の曲つた老婆様おばあさんに至るまで、夜の更け手足の疲れるも知らで踊る。人垣を作つた見物は何時しか少くなつた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そんなことは、お光が十歳とをで小池が十九の時から、お光が十三で小池が二十二になつた時まで、三年の間續いてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「伯母さん、かねてお話した通り、偉い女性ひとに相違ありませぬがネ、——伯母さんより十歳とをも上のお姿さんですよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その博士や土方にまじつて毎朝大学の構内を通る十歳とをばかりの子供がある。子供に似気にげなくいつも歩きながらも書物ほんを読んでゐるので、よくそれを見掛みかける男が
十歳とをばかりの私よりは余程大きい誰かの口から、こんなことが云はれました。そのうち一人降り二人降りして、火の見台には私と弟の二人だけが残されました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
民也たみやこゝのツ……十歳とをばかりのときに、はじめてつて、三十をすまでに、四度よたび五度いつたびたしかつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
折から子供を背負つた十歳とをばかりの洟垂はなたらしの頑童わんぱくそばに来たので、怪んで自分は尋ねた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ぼつちやんがとしもことしは十歳とをか十一にはならう、都合つがうるいは此處こゝうちには一人ひとり子寳こだからうて、彼方あちら立派りつぱをとこといふものだから、行々ゆく/\かんがへるとおどくなは此處こゝおくさま
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『フン、どつちが外聞が惡いんだらう。私や十歳とをの時からねえさんの御奉公してゐたんだよ。其で姉さんの手から、半襟はんゑりかけくれたこともありやしないで。チヨツ利いたふうな事を言つてるよ。』
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
私が始めて煙草の味を覚えたのは十歳とを位の時であつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
オランダ服の十歳とをばかりの子が
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
十歳とをです。」
同情おもひやりの深い智恵子は、宿の子供——十歳とをになる梅ちやんと五歳いつつの新坊——が、モウ七月になつたのに垢みた袷を着て暑がつてるのを、いつもの事ながら見るに見兼ねた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「當り前だ、十歳とをや八つの子が大ダン平で葛籠つゞら越しに人を殺せるわけは無いぢやないか」
もとより義理一遍ではあらうが、道臣は京子をも連れて行かうと言つた。京子は一寸考へて、それでは一所に行かうと言つて、一行は其の頃十歳とをの竹丸をも加へて四人になつた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
十歳とをばかりの頃までは相應に惡戲もつよく、女にしてはと亡き母親に眉根を寄せさして、ほころびの小言も十分に聞きし物なり、今の母は父親が上役なりし人の隱し妻とやらお妾とやら
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母はからだが弱くつて……大層若くつてなくなりましたが……亡なつた時分に、私は十歳とをだつたと思ひます。其の前から小学校へ行くやうになつて、本当の字を少しばかり覚えたりなにかした。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
藤間のお師匠さんの所へ通つて居た頃から云へば、五年ものち十歳とをか十一の時の夏の日に、父が突然私のために西瓜燈籠すいくわどうろうこしらへてやらうと云ひ出しました。どんなに嬉しかつたか知れません。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
自分が九歳こゝのつ十歳とをで、小池が十五六で、あの南の村から自分の村に通ずる細路をば、笹に五色の紙片の附いたのを一本づゝ持つて、二人で走り歩いたことなぞも思ひ出されて來た。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
十歳とをの時孤兒みなしごになつて引取られ、掛り人とも、奉公人ともなく育てられて居ります」
十歳とをばかりのころまでは相應さうおう惡戯いたづらもつよく、をんなにしてはと母親はゝおや眉根まゆねせさして、ほころびの小言こごとも十ぶんきしものなり、いまはゝ父親てゝおや上役うわやくなりしひとかくづまとやらおめかけとやら
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
九歳こゝのつ十歳とをばかりの小兒こどもは、雪下駄ゆきげた竹草履たけざうり、それはゆきてたとき、こんなばんには、がらにもない高足駄たかあしださへ穿いてたのに、ころびもしないで、しかあそびにけた正月しやうぐわつの十二時過じすぎなど
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『今年は來ない? 何だ、それぢや其兒は九歳こゝのつか、十歳とをかだな?』
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お歌ちやんは、十歳とをだつたと云ふことです。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
十歳とをばかりの頃までは相応に悪戯いたづらもつよく、女にしてはとき母親に眉根まゆねを寄せさして、ほころびの小言も十分に聞きし物なり、今の母は父親てておやが上役なりし人の隠し妻とやらおめかけとやら
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今年十歳とをになるお信は隱れん坊のことなんか忘れてしまつたやうに、納屋の前の、母屋に續いた粗末な渡り廊下に立つて、隣の子の常吉と、雨垂あまだれの落ちるのを、面白さうに眺めて居ります。
『今年は来ない? 何だ、それぢや其児は九歳ここのつか、十歳とをかだな?』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
十歳とをの時、別れた姉のやうな口振くちぶり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「お信はまだ十歳とをですから彌太郎の側へはやらないやうにして居ります」
姉の次に二度許り流産が続いたので、姉と私は十歳とを違ひ。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
疑ひはお内儀の玉江樣に掛りました。お百合さんとはたつた十歳とをしか違はない繼母ですから、佐吉親分が一應さう思ふのも無理のないことです。が、お内儀は心掛の立派な方で、そんな淺ましい事を
「お信さんといつて十歳とをになる方があります」