元結もとゆひ)” の例文
うきかざりのべにをしろいこそらぬものあらがみ島田しまだ元結もとゆひすぢきつてはなせし姿すがたいろこのむものにはまただんとたヽえてむこにゆかんよめにとらん
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
剃刀は二梃ともよく使ひ込んだもので、背と背を合せて、元結もとゆひでキリキリと縛つてありますが、斑々はん/\たる碧血へきけつが、にかはのやうに附いて見るからに無氣味なものです。
大抵のものは廻つて来てくれるので、おくみは一々外へ買ひに出たりする世話がなくてすんだ。洗濯石鹸やマッチや元結もとゆひのやうなものまで坐つてゐて用が足せた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
堤の直ぐ下には屠牛場や元結もとゆひの製造場などがあつて、山谷堀へつゞく一条の溝渠が横はつてゐた。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
此一おしにて男女とも元結もとゆひおのづからきれてかみみだす㕝甚なり。七間四面の堂の内にはだかなる人こみいりてあげたる手もおろす事ならぬほどなれば、人の多さはかりしるべし。
おつぎはまたかみへつける胡麻ごまあぶら元結もとゆひしばつたちひさなびんれて大事だいじしまつてくのである。みじか期間きかんではあるがはりつやうになつてからはあかたすきけた。半纏はんてん洗濯せんたくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
助手は根元で無造作に結へてある元結もとゆひを切つて、兩耳の後ろと旋毛つむじの邊にかけて前頭部と後頭部の髮を二束ふたゝばに分けた。分け目には日の目を見ない一筋の皮膚が冷やかな青白さをもつて現はれ出た。
実験室 (旧字旧仮名) / 有島武郎(著)
最後の日、更に四人の者がそれを踏まない事の為めに捕へられ「検べ」の為めに残された後、モニカは白無垢しろむくの装束を着け、したゝる如き黒髪を一と処元結もとゆひで結び、下げ髪にして静々と現はれた。
雨落あまおち敷詰しきつめたこいしにはこけえて、蛞蝓なめくぢふ、けてじと/\する、うち細君さいくん元結もとゆひをこゝにてると、三七さんしち二十一日にじふいちにちにしてくわして足卷あしまきづける蟷螂かまきりはら寄生蟲きせいちうとなるといつて塾生じゆくせいのゝしつた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この時、自分で髪をつたが、元結もとゆひが三度も切れたので
元結もとゆひ
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
やぶれかぶれにあばれてあばれて、正太郎しようたらうつらきず一つ、れも片眼かため片足かたあしなきものとおもへばやすし、加擔人かたうど車屋くるまやうし元結もとゆひよりのぶん手遊屋おもちやゝ彌助やすけなどあらばけはるまじ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此一おしにて男女とも元結もとゆひおのづからきれてかみみだす㕝甚なり。七間四面の堂の内にはだかなる人こみいりてあげたる手もおろす事ならぬほどなれば、人の多さはかりしるべし。
利助は案外素直に答へて、女の亂れかゝつた髮の中から、元結もとゆひを探しました。子分にはさみを持つて來さして、嫌がるのを無理に切ると、丈なす黒髮が、サツと手にからんで水の如く後に引きます。
加担人かたうどは車屋のうし元結もとゆひよりのぶん手遊屋おもちやや弥助やすけなどあらば引けは取るまじ、おおそれよりはあの人の事あの人の事、藤本のならばき智恵も貸してくれんと、十八日の暮れちかく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「黒い元結もとゆひは——こりや、誰か使つて居る人があるでせうね」
手振手拍子ひとつも変る事なし、うかれ立たる十人あまりの騒ぎなれば何事とかどに立ちて人垣をつくりし中より、三五郎は居るか、一寸ちよつと来てくれ大急ぎだと、文次ぶんじといふ元結もとゆひよりの呼ぶに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三五らうるか、一寸ちよつときてくれ大急おほいそぎだと、文次ぶんじといふ元結もとゆひよりのよぶに、なん用意よういもなくおいしよ、よしきたがるに敷居しきゐとびこゆるときこの二タまた野郎やらう覺悟かくごをしろ、横町よこてうつらよごしめたゞかぬ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)