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伝手
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つて
ふりがな文庫
“
伝手
(
つて
)” の例文
旧字:
傳手
「私は木下さん(主筆)と同国の者で
厶
(
ござ
)
いまして、」と云ふ挨拶を聞いた時、俺よりも確かな
伝手
(
つて
)
があると思つて、先づ不快を催した。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
周善は
伝手
(
つて
)
を求めて、首尾よく荊州城の大奥へ入りこんだ。そして多くの
賄賂
(
わいろ
)
をつかい、ようやく玄徳の夫人に会うことができた。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
靴磨きをするといっても元手も
伝手
(
つて
)
も気力もない。ああもう駄目だ、餓死を待とうと、黄昏れて行く西の空をながめた途端……。
世相
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
入院に際してせっせと骨を折り、公費患者の手続きを取ってやったりしたのは大久保で、役所勤めなのでその方面の
伝手
(
つて
)
が多いのでしょう。
凡人凡語
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
それも
京橋辺
(
きょうばしへん
)
の酒屋の隠居所を、ある
伝手
(
つて
)
から二階だけ貸して貰ったので、
畳
(
たたみ
)
建具
(
たてぐ
)
も世間並の下宿に比べると、
遥
(
はるか
)
に
小綺麗
(
こぎれい
)
に出来上っていた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
「よく申した。ぜひ一人思い出してくれい。用というのは、その人物を
伝手
(
つて
)
にいたして、江戸で尋ね人をしようというのだ」
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
読者諸君が
伝手
(
つて
)
を求めて、あの陳列室に入る機会があったなら、今でも、その不思議な長椅子を見ることが出来るであろう。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのおのおのはまた、近親を
伝手
(
つて
)
に小さく
纏
(
まとま
)
った班々を統率した。笠の緒をひきしめ袴の
腿立
(
ももだ
)
ちをたかく取った。そのもの達は緊張していた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
東京の人が色々
伝手
(
つて
)
を求めて無理にも疎開して来るのに、有島の一家の方たちが、沢山居られるのだから、
何方
(
どなた
)
でも一人くらい来られたらどうか
小さい機縁
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
それから金之助は
他所
(
よそ
)
乍ら京姫の輿入を見送った後、
僅
(
わず
)
かに残る脇差を売って飢を
凌
(
しの
)
ぎ、暫く時機を待って居りましたが、間もなく
伝手
(
つて
)
を求めて
奇談クラブ〔戦後版〕:06 夢幻の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
時には又女匪自身が大家公館に
夫々
(
それぞれ
)
伝手
(
つて
)
を求めて入り込み凄い腕を振うこともある。
之等
(
これら
)
の女匪を
女子郎中
(
じょしろうちゅう
)
という。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その噂を聴いた下村観山氏が、ある時
伝手
(
つて
)
を求めて前田侯の
邸
(
やしき
)
へ
観
(
み
)
せて貰ひに出掛けた。無論
画
(
ゑ
)
の参考にする為で。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
喜「それなら
此方
(
こちら
)
に
伝手
(
つて
)
がありますから、早速屋敷へ帰り、お国表を調べた上、お知らせ申す事に致しましょう」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そんな生活をしてゐる千恵のことですから、当てどもなく姉さまの行方をさがすやうな時間のゆとりもなく、その
伝手
(
つて
)
もないことは分つていただけるでせう。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
まずよい
伝手
(
つて
)
がありお金を沢山上げてようやく貰いますので、貰ったところでチベット人は非常な病気になったとかあるいは臨終の場合に
其薬
(
それ
)
を一つ飲むのです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「シミズ・セイイチ」(二十五歳)は親譲りの青森浪人で仙台の裏長屋に父親が窮死して後方々に仕官の
伝手
(
つて
)
を求めたが、外国貿易以来諸物価騰貴し、支出は
嵩
(
かさ
)
み
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
警察署長や神戸牧師に脅迫状を送ったのも一面には出獄の
伝手
(
つて
)
にもしようと云う考えだった。所が、第一番に彼は最愛の妻子から背き去られた。裁判は見込がない。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「そうか、さすが
蛇
(
じゃ
)
の道だ、拙者共の
伝手
(
つて
)
で、どうしても要領を得なかったものを、お前の働きであたりがついたとは感心だ。いったい、その代物はどこにある?」
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
持っておられるそうじゃありませんか。いわゆる『相当縁故や
伝手
(
つて
)
のある』方じゃありませんか。だとすると、いったいどうしてなんの当てもないなんていわれます?
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
桂斎先生は
流行
(
はやり
)
医者ですから、うら店などへはなか/\来てくれないのを、
伝手
(
つて
)
を求めてよう/\来て貰うことにしたのですが、先生は病人の容態を篤とみて眉をよせました。
三浦老人昔話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二月の初旬に偶然
旨
(
うま
)
い
伝手
(
つて
)
ができて、老人はこの
幅
(
ふく
)
を去る
好事家
(
こうずか
)
に売った。老人は
直
(
ただち
)
に
谷中
(
やなか
)
へ行って、亡妻のために立派な石碑を
誂
(
あつら
)
えた。そうしてその余りを郵便貯金にした。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私にその話をした女房はすぐ
伝手
(
つて
)
を求めて問い合わせて呉れたが、その日かげの花のように誰にも知られずにこっそりと大きくなった少女はもう十二三ぐらいになっているそうだった。
ほととぎす
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
農夫の一人はここで働いているが、一人は平戸へ引き揚げ、福次郎はやっぱり馬丁をすると、やがて
伝手
(
つて
)
を求めて福岡へ出て行った。今も福岡にいると聞いている、ということであった。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
世の中に
遅
(
おく
)
れ、かかる会合のあることも何にも知らず、十三年から四年目に、初めて石川氏に
邂逅
(
かいこう
)
して、その
伝手
(
つて
)
によってようやく世間へ顔を出したような訳随分遅れていたといわねばなりません。
幕末維新懐古談:46 石川光明氏と心安くなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
同氏も処々に
伝手
(
つて
)
を
索
(
たぐ
)
っては出来る限りの知らせを送られました。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
伝手
(
つて
)
をもとめて二三人の旧役者のところへ弟子人をたのんだ。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
何とか
伝手
(
つて
)
を求めて、雑誌社にはいったような始末です。
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「上杉どのから、六波羅の
御内人
(
おうちびと
)
へ、よい
伝手
(
つて
)
を計らわせ給えと、細やかなお
添状
(
そえじょう
)
。……それをいただいておりますれば」
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なんの、殿様、これがもし男の子でしたら、
伝手
(
つて
)
を求めてまた
主取
(
しゅど
)
りをさせるという先の望みもございましょうが、女ではねえ……それに——」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
小山田氏はある
垣間見
(
かいまみ
)
に静子を深く恋して、
伝手
(
つて
)
を求めて結婚を申込んだ。静子も小山田氏が嫌いではなかった。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
来世では和尚の
伝手
(
つて
)
で何処か上等の桟敷でも
附込
(
つけこ
)
んで置きたいらしく、
時偶
(
ときたま
)
和尚が訪ねて来ると、いつもその画を賞めそやして下へも置かぬ
款待
(
もてなし
)
をする。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
同志
之
(
の
)
者にて去年来別して懇意の間柄ゆえ、この者の
伝手
(
つて
)
をもって元方の片山に
直
(
じか
)
談判させ、御国名を出さぬよう値段も格安に鉛硝石共買入させるよう致されたい。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
やはり浪人は
辛
(
つら
)
いもので。そこで誰かに仕官をしたい。北条のご前は権臣だ。そこでご前に仕えようと思う。が、いかんせん
伝手
(
つて
)
がない。考えたのが左内様のことよ。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
驚いたは新蔵ばかりでなく、このお敏に目をかけていた新蔵の母親も心配して、
請人
(
うけにん
)
を始め
伝手
(
つて
)
から伝手へ、手を廻して探しましたが、どうしても行く方が分りません。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それは
容易
(
たやす
)
いことです、月見御殿の拝見ならば、よい
伝手
(
つて
)
がございますから、わたくしが御案内を
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
たといある
伝手
(
つて
)
を経てお逢い申しても、その方から話を聞くということは余程困難な事です。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
彼はまた腹のなかで、これを
伝手
(
つて
)
に商売をしようとぬけめなくそろ盤をはじいていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
お弓が
伝手
(
つて
)
から伝手を求めて、銭形平次を訪ねて来たのは、それから三日目でした。
銭形平次捕物控:133 井戸の茶碗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
すぐに
道修町
(
どしょうまち
)
の薬種問屋へ雇われたが、無気力な奉公づとめに嫌気がさして、当時大阪で羽振りを利かしていた政商五代友厚の弘成館へ、書生に使うてくれと
伝手
(
つて
)
を求めて頼みこんだ。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
伝手
(
つて
)
を求めて伊勢屋の奉公人になってから、彼女は努めてお駒の気に入るように仕向けて、やがて
姉妹
(
きょうだい
)
同様に親しくなった。彼女は松蔵の顔に投げ付けたという大切の重ね草履をお駒にみせて貰った。
半七捕物帳:31 張子の虎
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
だれも
伝手
(
つて
)
がなかったからである。
地下生活者の手記
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
そしてなお委細のことは
伝手
(
つて
)
を求めて、元の京都所司代、松平左京之介の手もとまで、
言訴
(
げんそ
)
してある由をつけ加えてある。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
名主
(
なぬし
)
をはじめ村有志が、たびたび江戸表へ出府して、
伝手
(
つて
)
を求めて訴え出ようとしたのですが、公儀も、この出羽守の乱暴を薄うす承知しておりながら、誰一人
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
彼は、併し、何気ない
体
(
てい
)
で、
伝手
(
つて
)
を求めてその忍男と近づきになる。女の主人は四十歳位、忍男は五つ六つ年下だ。二人とも妻も子もある立派な暮しをしている。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「聞いてばかりいても、つまりませんから、見てやりましょうよ、ちょうど、天神下の中村様から
伝手
(
つて
)
があって、紹介してやるから、見物に行ってこいと言われました」
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お常はとうと
恋病
(
こひやまひ
)
に取つ憑かれた。徳三郎がお初の似顔絵を
抱
(
だ
)
いたまゝ、
焦
(
こが
)
れ
死
(
じに
)
に死にかゝつた。娘の不心得を
怒
(
いか
)
つた両親も、
末期
(
まつご
)
の哀れさに、
伝手
(
つて
)
をもとめて徳三郎を招いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
伝手
(
つて
)
があればまず貰えるといったようなもので、
其塩
(
それ
)
は貴族と僧官の主なるものに分たれる。もっとも大なる
檀越
(
だんおつ
)
とかあるいは殊更に関係ある大商業家などは幾分か貰えるです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
お袋が
臍
(
へそ
)
くりでやらしていた、この茶店まで立ち腐れになり、俺達二人は長い間食うや食わずの路頭に迷った上、
讐
(
かたき
)
が討ちたいばかりに
伝手
(
つて
)
を求めて、弟の俺がお前のところへ奉公に上がったんだ
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何かの
伝手
(
つて
)
を求めてハリソンの家へ出入りするようになった。
半七捕物帳:59 蟹のお角
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
年頃、ふたたび御奉公の折もがなと、
伝手
(
つて
)
を求めておりましたが、
所詮
(
しょせん
)
、
御直訴
(
ごじきそ
)
のほかはないと、死ぬる気で参りました。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伝
常用漢字
小4
部首:⼈
6画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“伝”で始まる語句
伝
伝播
伝馬
伝言
伝馬町
伝染
伝説
伝法
伝通院
伝馬船