仕儀しぎ)” の例文
最早もはや一分も猶予ゆうよが出来ぬ仕儀しぎとなったから、やむをえず失敬して両足を前へ存分のして、首を低く押し出してあーあとだいなる欠伸をした。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これこれ、壁辰殿。そういうわけであってみれば、折角せっかくだが、きょう貴殿に押えられて、突き出されるという仕儀しぎには参らぬ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「あのような剣術が今日こんにち仕儀しぎになるは眼に見えたものじゃ、わしはもう世に望みのない身体からだ、兵馬殿、どうか拙者になり代って竜之助をらして下さい」
内儀かみさんまことに失礼しつれいでございますが、なにかお土産みやげつたところ仕儀しぎでございますから、御主人ごしゆじんがおかへりになつたら一口ひとくちうぞげて下さいまし。
いや植村うゑむらせまいからで、どうも此樣こんことになつて仕舞しまつたで、私共わしども二人ふたりじつ其方そちらあはせるかほいやうな仕儀しぎでな、しかゆきをも可愛想かあいさうおもつてつて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
偶然大金を拾ひ候ばかりに人殺ひとごろしの大罪を犯す身となりはて候上は、最早や如何ほど後悔致候ても及びもつかぬ仕儀しぎにて、今は自首致して御仕置おしおきを受け申すべきか。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かような仕儀しぎであるから、マリア夫人は種々苦心熟慮の末、かつて雇傭してその心を知り抜いている忠僕と忠婢に、あらかじめ密計を語って、城外にてその櫃を受け取り
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
……あまりの仕儀しぎたゞ茫然ばうぜんとして、はてなみだながしたが、いや/\、こゝかたちづくられた未製品みせいひんは、かたちなかばにして、はやくも何処どこにか破綻はたんしやうじて、さくほつするものゝ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やっと十日たつかたたぬうちに、この「魔術師」事件の第一の殺人が行われ、明智はのっぴきならぬ依頼いらいによって、又その事件にかかり合わねばならぬ仕儀しぎとなったのである。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ぜひなき仕儀しぎとなって、総崩れを来たし、急遽、鎌倉さして、おひきあげと聞えまする」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出して貰う仕儀しぎに成るかも知れぬとこう思ッた者ですから是が段々とこうじて来てついに殺して仕舞う心にも成りがな隙がな藻西太郎に説附ときつけて到頭彼れに同意させはては手ずから短刀を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
私もかねて病気と聞き見舞みまいきたいと思ったが、何をいうにも前述の如き仕儀しぎなので、かえって娘のめに見舞みまいにもけず蔭ながら心案じていたのである、さいわいに心やさしい婢女げじょの看護に
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
こゝではじめて、わたくしは、事の仕儀しぎの重大なのをようやく悟りまして
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
私は丁度ちょうどそのとき、道を歩きながら、その少女のことを胸に描いていたところだったので、ハッとした。あの薔薇ばらつぼみのように愛らしい少女を、帆村に紹介かたがた引張りだした今夜の仕儀しぎだった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
でね、少しあった株をみんなその方へ廻す事にしたもんだから、今じゃ本当に一文いちもんなし同然な仕儀しぎでいるんですよ。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「では、わしたち三人だけで、ひとつ案内をこうてみましょう。仕儀しぎによっては、戸をやぶってもふみこまねばならぬが、最初は、まずおだやかにあたってみるのがよろしい。」
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「いやはや言語道断な仕儀しぎだ」
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
でね、すこつたかぶをみんな其方そのはうまはことにしたもんだから、いまぢや本當ほんたうに一もんなし同然どうぜん仕儀しぎでゐるんですよ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その上私は神経衰弱しんけいすいじゃくに罹りました。最後に下らない創作などを雑誌にせなければならない仕儀しぎおちいりました。いろいろの事情で、私は私のくわだてた事業を半途はんとで中止してしまいました。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)