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丹塗
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にぬ
ふりがな文庫
“
丹塗
(
にぬ
)” の例文
なんでも幼い時に一度、この
羅生門
(
らしょうもん
)
のような、大きな
丹塗
(
にぬ
)
りの門の下を、たれかに抱くか、負われかして、通ったという記憶がある。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いまは高い屋根と、
丹塗
(
にぬ
)
りの掲額のある二重までしか見えないのに、ぜんたいを眺めたときよりは、よほど大きく、重おもしいように感じられた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
穴倉のように暗い三等船室に帰って、自分の毛布の上に坐っていると
丹塗
(
にぬ
)
りのはげた膳の上にはヒジキの煮たのや味噌汁があじきなく並んでいた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
微風、水鳥、花咲いた水藻、湖水は
平
(
たいら
)
かでございました。
烏帽子
(
えぼし
)
、
水干
(
すいかん
)
、
丹塗
(
にぬ
)
りの扇、可哀そうな失恋した白拍子は、揺られ揺られて行きました。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
障子
(
しょうじ
)
、
欄間
(
らんま
)
、
床柱
(
とこばしら
)
などは
黒塗
(
くろぬり
)
り、
又
(
また
)
縁
(
えん
)
の
欄干
(
てすり
)
、
庇
(
ひさし
)
、その
他
(
た
)
造作
(
ぞうさく
)
の一
部
(
ぶ
)
は
丹塗
(
にぬ
)
り、と
言
(
い
)
った
具合
(
ぐあい
)
に、とてもその
色彩
(
いろどり
)
が
複雑
(
ふくざつ
)
で、そして
濃艶
(
のうえん
)
なのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
丹塗
(
にぬ
)
りの鳥居を
潛
(
くゞ
)
つて、
大銀杏
(
おほいてふ
)
の下に立つた時、小池は
斯
(
か
)
う言つて、お
光
(
みつ
)
の
襟足
(
えりあし
)
を
覗
(
のぞ
)
き込むやうにした。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
木の影には他の工場の倉庫らしい
丹塗
(
にぬ
)
りの単純な建物が半面を日に照らされて輝いている。その前には廃工場のみぎわに茂った花すすきが銀のように光っている。
写生紀行
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
然
(
しか
)
しそれは北アルプスの雪の山が、山それ自身が高大である為の崇高ではない。或は杉並木の奥からほの見ゆる
丹塗
(
にぬ
)
りの御社の「神」を予想した為の崇高でもない。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
郎女
(
いらつめ
)
は、生れてはじめて、「朝目よく」と
謂
(
い
)
った語を、内容深く感じたのである。目の前に赤々と、
丹塗
(
にぬ
)
りに照り輝いて、朝日を反射して居るのは、寺の大門ではないか。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
最初に
渓川
(
たにがわ
)
の流に物を洗いに降りて、美しい
丹塗
(
にぬ
)
りの
箭
(
や
)
が川上から
泛
(
うか
)
んできたのを、拾うて還って床の
側
(
かたわら
)
に立てて置いたという例があるのを見ると、また異常なる感動をもって
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
こんもり
木立
(
こだち
)
のしげるところに、
丹塗
(
にぬ
)
りの
社
(
やしろ
)
があって、その
前
(
まえ
)
に、
人
(
ひと
)
がひざまずいて、よく
祈願
(
きがん
)
をこめていました。ちょうどこのとき、
男
(
おとこ
)
は、
神
(
かみ
)
さまにお
礼
(
れい
)
をいっているのでした。
うずめられた鏡
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
そう言い、孔の一つびとつに針金を
貫
(
さ
)
しながら、器用な手つきで古い埃をほじくり出した。
丹塗
(
にぬ
)
りの笛の胴にはいってから
密着
(
くっつ
)
いたのか、滑らかな手擦れでみがかれた光沢があった。
後の日の童子
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
三方の壁には今申す
丹塗
(
にぬ
)
りの長持が、ズラリと並び、一方の隅には、昔風の縦に長い本箱が、五つ六つ、その上には、本箱に入り切らぬ黄表紙、青表紙が、虫の食った背中を見せて
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
丹塗
(
にぬ
)
りに、
高蒔絵
(
たかまきえ
)
で波模様を現した、立派やかな、
唐櫃
(
からびつ
)
だった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
砂まろび遊びほれつつこれの子や
丹塗
(
にぬ
)
りの汽車は忘れ来にけり
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
彼の愛する風景は大きい
丹塗
(
にぬ
)
りの
観音堂
(
かんのんどう
)
の前に無数の
鳩
(
はと
)
の飛ぶ
浅草
(
あさくさ
)
である。あるいはまた高い時計台の下に鉄道馬車の通る銀座である。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お昼の弁当も
美味
(
うま
)
し、
鮭
(
さけ
)
のパン粉で揚げたのや、いんげんの青いの、ずいきのひたし、
丹塗
(
にぬ
)
りの箱を両手にかかえて、私は遠いお母さんの事を思い出していた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
丹塗
(
にぬ
)
りの家や
白堊
(
はくあ
)
の家や、
鐘楼
(
しょうろう
)
めいた大きな塔が、あるいは林にまたは丘にすくすくとして立っている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
門柱
(
もんちゅう
)
その
他
(
た
)
はすべて
丹塗
(
にぬ
)
り、
別
(
べつ
)
に
扉
(
とびら
)
はなく、その
丸味
(
まるみ
)
のついた
入口
(
いりぐち
)
からは
自由
(
じゆう
)
に
門内
(
もんない
)
の
模様
(
もよう
)
が
窺
(
うかが
)
われます。あたりには
別
(
べつ
)
に
門衛
(
もんえい
)
らしいものも
見掛
(
みか
)
けませんでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
目の前に、赤々と
丹塗
(
にぬ
)
りに照り輝いて、朝日を反射して居るのは、寺の大門ではないか。さうして、門をとほして、第二の門が見えて、此もおなじ丹塗りにきらめいて居る。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
丹塗
(
にぬ
)
りの
社
(
やしろ
)
も、
長
(
なが
)
い
月日
(
つきひ
)
の
雨風
(
あめかぜ
)
にさらされて、くちたり、こわれたりして、そのたびに、
村人
(
むらびと
)
によって
建
(
た
)
てかえられたけれど、まだわずかに、
昔
(
むかし
)
の
面影
(
おもかげ
)
だけは、のこっていました。
うずめられた鏡
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
祖先伝来の
丹塗
(
にぬ
)
りの
長持
(
ながもち
)
や、
紋章
(
もんしょう
)
の様な
錠前
(
じょうまえ
)
のついたいかめしい
箪笥
(
たんす
)
や、虫の食った
鎧櫃
(
よろいびつ
)
や、不用の書物をつめた本箱や、その
他
(
ほか
)
様々のがらくた道具を、
滅茶苦茶
(
めちゃくちゃ
)
に置き並べ積重ねた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
猪熊の爺は、形のない、気味の悪い「死」が、しんぼうづよく、
丹塗
(
にぬ
)
りの柱の向こうに、じっと自分の息をうかがっているのを感じた。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それから
又
(
また
)
しばらく
過
(
す
)
ぎると、
何
(
なに
)
やらほんのりと
丹塗
(
にぬ
)
りの
門
(
もん
)
らしいものが
眼
(
め
)
に
映
(
うつ
)
ります。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
たとえば、
丹塗
(
にぬ
)
りの
社
(
やしろ
)
があり、
用水池
(
ようすいいけ
)
があり、
古墳
(
こふん
)
はそのかたわらにあったことや、
伝説
(
でんせつ
)
の
話
(
はなし
)
や、
棺
(
かん
)
を
掘
(
ほ
)
ったときのありさまなど、
当時
(
とうじ
)
のことを、
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
しながら
語
(
かた
)
ったのであります。
うずめられた鏡
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
雨は
丹塗
(
にぬ
)
りの門の空に、寂しい音を立て続けた。男は法師を尻目にしながら、
苛立
(
いらだ
)
たしい思ひを
紛
(
まぎ
)
らせたさに、あちこち石畳みを歩いてゐた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今ごろは
丹塗
(
にぬ
)
りの堂の前にも明るい
銀杏
(
いてふ
)
の
黄葉
(
くわうえう
)
の中に、
不相変
(
あひかはらず
)
鳩
(
はと
)
が何十羽も大まはりに輪を
描
(
ゑが
)
いてゐることであらう。
野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
羅生門
(
らしょうもん
)
の
夜
(
よ
)
は、まだ明けない。下から見ると、つめたく露を置いた
甍
(
いらか
)
や、
丹塗
(
にぬ
)
りのはげた欄干に、傾きかかった月の光が、いざよいながら、残っている。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
第一に浅草といひさへすれば僕の目の前に現れるのは大きい
丹塗
(
にぬ
)
りの
伽藍
(
がらん
)
である。或はあの伽藍を中心にした
五重塔
(
ごぢゆうのたふ
)
や
仁王門
(
にわうもん
)
である。これは今度の
震災
(
しんさい
)
にも
幸
(
さいはひ
)
と無事に焼残つた。
野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
丹
常用漢字
中学
部首:⼂
4画
塗
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“丹塗”で始まる語句
丹塗矢