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不逞
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ふてい
ふりがな文庫
“
不逞
(
ふてい
)” の例文
実人生への
敗恤
(
はいじゅつ
)
と、それによって交換し得た文学精神の
不逞
(
ふてい
)
の自信とで、内心の動揺をなかなか処理しきれなかった人のようだ。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
倉庫業の
来六屋出平
(
きろくやでへい
)
とは
出来六
(
できろく
)
でござるぞ、あの
不逞
(
ふてい
)
な下僕、旅先で哀れな少年八百助を脅し、金を奪ってけし飛んだかの出来六でござる。
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ここでは
旧套
(
きゅうとう
)
の良心
過敏
(
かびん
)
性にかかっている都会娘の小初の意地も
悲哀
(
ひあい
)
も
執着
(
しゅうちゃく
)
も性を抜かれ、代って
魚介
(
ぎょかい
)
鼈
(
すっぽん
)
が持つ
素朴
(
そぼく
)
不逞
(
ふてい
)
の自由さが
蘇
(
よみがえ
)
った。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
足柄
(
あしがら
)
の箱根の山の中には数え切れぬほどの
不逞
(
ふてい
)
の
賊
(
やから
)
どもが
蟠居
(
ばんきょ
)
しているのだそうだ。いつ我々に対して
刃向
(
はむか
)
って来るか分ったものではない。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
もちろん航空用のアルコールを飲むのは、
不逞
(
ふてい
)
の仕業であり、見付かれば
懲罰
(
ちょうばつ
)
ものであった。だから宴は夜に限られていた。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
▼ もっと見る
奈良朝になると、髪の毛を
穢
(
きたな
)
い
佐保川
(
さほがわ
)
の
髑髏
(
どくろ
)
に入れて、「まじもの」せる
不逞
(
ふてい
)
の者などあった。これは
咒詛調伏
(
じゅそちょうぶく
)
で、
厭魅
(
えんみ
)
である、悪い意味のものだ。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼はさっきから
不逞
(
ふてい
)
な面構えをして、顔から飛び出すような眼を
以
(
もっ
)
て、相手の維茂、為憲以下の者を
睨
(
にら
)
まえていたが
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつの間にか、地球をうかがっていた、
不逞
(
ふてい
)
の宇宙魔ミミ族のことは、放送電波にのって全世界へひびきわたった。
宇宙戦隊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
真理は普遍の真理であっていいはずであるが、時として一つの行いに二つの名が与えられ、ある時は「忠節」とも、ある時は「
不逞
(
ふてい
)
」とも呼ばれるのである。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
さればこそだ、ここに
不逞
(
ふてい
)
の徒があって、我々の行手を遮り、その威光を汚そうと企てるのは、つまり大公儀そのもの、神祖の御威光を無視するも同様である。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
奥平
(
おくだいら
)
屋敷のツヒ近所に
増山
(
ますやま
)
と云う大名屋敷があって、その屋敷へ
不逞
(
ふてい
)
の徒が何人とか
籠
(
こもっ
)
て居ると
云
(
い
)
うので、長州の兵が取囲んで、サア戦争だ、ドン/″\
遣
(
やっ
)
て居る。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
するとそこでは平素から
不逞
(
ふてい
)
の志をいだいていた
壮丁
(
そうてい
)
たちが、
密
(
ひそ
)
かに銃器の手入れや竹槍の用意やをしている。近藤巡査とその同僚たちとは直ちに彼らをひっ捕えた。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
工人は、
不逞
(
ふてい
)
なむほんをたくらみ(小山の言葉をそのまま用うれば)にかゝった。宿舎からは、工人の金属的な、激昂した声が、やかましく事務所の方へもれて行った。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
しかも女人の顔といふものは、その爪のむざんな攻撃の前に、おどろくべき柔軟自在な、ときにはしぶといまでに
不逞
(
ふてい
)
な、
狡智
(
こうち
)
のかぎりをつくして抵抗するものなのである。
鸚鵡:『白鳳』第二部
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
侵略、
残虐
(
ざんぎゃく
)
、殺人、圧制、強奪——地上の罪禍を悉く背負って、日本は世界一の悪者となり、この自覚において再生の道を求めるがいい。こうした
不逞
(
ふてい
)
の決意を僕は欲する。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
...
不逞
(
ふてい
)
な奴らではあるが、その点は実に感心ですよ」彼はこの時ふと柱時計を見て独り
言
(
ご
)
ちた。「ところでもう四時間になる。至急報でやったんだから返事は来そうなもんだが」
鉄の規律
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
神を畏れず人を敬わざる
不逞
(
ふてい
)
の徒にして、何らの恐怖煩悶なくして一生を終る者はむしろ
甚
(
はなは
)
だ多い。罪を犯し悪の
莚
(
むしろ
)
に坐して平然たるがすなわち悪人の悪人たるゆえんである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
王兄シャマシュ・シュム・ウキンの
謀叛
(
むほん
)
がバビロンの落城でようやく
鎮
(
しず
)
まったばかりのこととて、何かまた、
不逞
(
ふてい
)
の徒の
陰謀
(
いんぼう
)
ではないかと探ってみたが、それらしい様子もない。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
改良の精神自体を不善
不逞
(
ふてい
)
にして良俗に反するものと反感をいだく始末なのである。
土の中からの話
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「こんにちは! こんにちは!」と彼らはその
不逞
(
ふてい
)
な冷笑の調子で私に叫んだ。つやつやした鉛色の顔をした終身徒刑囚の一人の若者は、うらやましいふうで私を眺めながら言った。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「ひきいて侵略するふてぶてしさと同時に、その兵自体が、文字通り
不逞
(
ふてい
)
の徒でござるて、つまり、オロシャの正規兵は夜盗の徒でござる、——よろしいか」と彼は書類を
睨
(
にら
)
みつけた
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
夜になると、千穂子へ対する哀れさ不憫さの愛が頂点に達してゆくのだった。昼間、決断力が強くなっている日ほど、夜になると、
不逞
(
ふてい
)
きわまる与平の想像がせきを切って流れて行った。
河沙魚
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
凡そ美神を怖れぬ
不逞
(
ふてい
)
の美学を
弄
(
ろう
)
したりして、寝入ったのはかなり遅かった。
メフィスト
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
彼らはいったいどこで夏頃の
不逞
(
ふてい
)
さや憎々しいほどのすばしこさを失って来るのだろう。色は不鮮明に
黝
(
くろず
)
んで、
翅体
(
したい
)
は
萎縮
(
いしゅく
)
している。汚い臓物で張り切っていた腹は
紙撚
(
こより
)
のように
痩
(
や
)
せ細っている。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
その訳は——
下世話
(
げせわ
)
にいう、
氏
(
うじ
)
より育ち、二十を越すまで、
素性
(
すじょう
)
卑しく育った者を、この城中へ入れることは、いろいろと
弊
(
へい
)
がある。二つには、この周囲には、浪人者の
不逞
(
ふてい
)
な
徒輩
(
とはい
)
がいるらしい。
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
パンフィリオが後に法王になってから、デュムーチエを
揶揄
(
やゆ
)
して、汝の如き
不逞
(
ふてい
)
の徒は破門して黒焼にすべきであると云った時、デュムーチニは直ちに「私の頭は黒焼にするには白すぎる」と答えた。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
その酒楼の二階座敷の
手摺
(
てすり
)
には、
鎗
(
やり
)
ぶすまを造って下からずらりと突き出した数十本の抜き身の鎗がある。町奉行のために、
不逞
(
ふてい
)
の徒の集まるものとにらまれて、包囲せられた
二人
(
ふたり
)
の侍がそこにある。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ではなぜ、こんな思いをしてまで岡っ引きたるいろは屋文次が、江戸中の御用の者が、草の根を分けて探している当の死に花の下手人、公儀へ弓引く
不逞
(
ふてい
)
浪士篁守人をかばわなければならなかったか。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
不逞
(
ふてい
)
無頼の鼻つまみものになっているというだけのことである。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
どんな朝鮮人も一応すべて
不逞
(
ふてい
)
鮮人と見られたのだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
「
不逞
(
ふてい
)
至極の坊主なり、牢に入れよ」
現代語訳 平家物語:05 第五巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
不逞
(
ふてい
)
鮮人取締
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そしてどうかしてこの盲人の
不逞
(
ふてい
)
なものを取り挫いて、心から自分に向ってお
叩頭
(
じぎ
)
をさせたい願望に充たされるのであった。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「いえいえ、そこはともかく、詩句すべてに流れている
不逞
(
ふてい
)
な反逆の血と、その恨みかたの凄まじさをご覧ください」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真理は普遍の真理であっていいはずであるが、時として一つの行いに二つの名が与えられ、ある時は「忠節」とも、ある時は「
不逞
(
ふてい
)
」とも呼ばれるのである。
朝鮮の友に贈る書
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「つまり、誰か、このわしを
蹴落
(
けおと
)
そうという
不逞
(
ふてい
)
の部下が居て、わしに相談もしないで敵を攻めているのではなかろうか。そいつは、恐るべき
梟雄
(
きょうゆう
)
である!」
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ば、化物だ」出平、すなわちかの
不逞
(
ふてい
)
なる下僕出来六はがたがたとふるえだした、「——幽霊だ」
三悪人物語:忍術千一夜 第二話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あるいは、憎むべき
不逞
(
ふてい
)
の
賊
(
やから
)
どもがいついかなる場合に我々に刃向って来るかも分らないのだ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
胴巻ぐるみ、百の前へ投げ出したのは、いよいよ怪しからぬことで、行って見ろと嗾けた上に、資本金までも供給するのですから、シンパ以上の、むしろ共謀に近いほどの
不逞
(
ふてい
)
なのです。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして自分だけ不幸と思う狭い女の胸に、ふいに
不逞
(
ふてい
)
な思いが湧くのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そうして、駄々っ子のもつ
不逞
(
ふてい
)
な安定感というものが、天下者のスケールに於て、彼の残した多くのものに一貫して開花している。ただ、天下者のスケールが、日本的に小さいという
憾
(
うら
)
みはある。
日本文化私観
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その
不逞
(
ふてい
)
な賛辞は私を元気づけた。司祭が私のそばに来て席を占めた。私は馬のほうに背を向けて後ろむきに、後部の腰かけに座らされたのだった。そういう最後の注意を見てとって私はぞっとした。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「浪人共の、
不逞
(
ふてい
)
の業と、心得まする」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
折角設計して来た自分らしい楼閣を
不逞
(
ふてい
)
の風が
浚
(
さら
)
い取った感じが深い芸術なるものを通して何かあるとは感づかせられた。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
呪い、御治世ぶりにたいし、
不逞
(
ふてい
)
なる不満と反逆をいだく者の所業にちがいござりませぬ。かかる者は、草の根を
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「名目は
不逞
(
ふてい
)
の浪人が徒党を組んで、某所に集合するという情報があった、ということなのだが」
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
上野の東叡山輪王寺御所蔵の錦旗を盗まんとする
不逞
(
ふてい
)
の徒が存在するらしいことと、ここでは岩倉三位合意の下に、
玉松操
(
たままつみさお
)
に製作せしめた錦旗の図面によって、薩摩と長州の傑物が二人
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
私は
自暴自棄
(
じぼうじき
)
になって、
不逞
(
ふてい
)
にも和歌宮先生の許へ暴れ込んだ。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
開き直って
喋
(
しゃべ
)
る時は落着払っていて
洵
(
まこと
)
に
不逞
(
ふてい
)
の感を与える。
篠笹の陰の顔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
すると、大勢の人夫の中から、見るからに
不逞
(
ふてい
)
な
面
(
つら
)
がまえをした半裸体の大男が、ここで仲間へ顔を売ろうという気か、のしのし
堤
(
どて
)
の上へあがって行った。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“不逞”の意味
《名詞》
勝手に振る舞うこと。
(context、dated)不平をいだくこと。
(出典:Wiktionary)
不
常用漢字
小4
部首:⼀
4画
逞
漢検1級
部首:⾡
11画
“不逞”で始まる語句
不逞不逞
不逞団
不逞漢
不逞々々
不逞群衆
不逞鮮人
不逞の徒よ