鰹節かつぶし)” の例文
亥「冗談じゃアねえ知らしてくれゝばくせ鰹節かつぶしの一本かすっぺい酒の一杯いっぺいでも持って、旦那お芽出度めでとうござえやすと云って来たものを」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おかあさん、ねこは、鰹節かつぶしをたくさんかけてやっても、ごはんべませんよ。」と、子供こどもたちはいいました。すると、おかあさんは
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)
「いつって、国へ帰ったら、ちゃんと、うちで待ってたのです。今日先生の所へ持って来た、この鰹節かつぶしは結婚祝に親類から貰ったんです」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから人参にんじんを糸切りにして糸蒟蒻いとごんにゃくと前の牛蒡と三品を一旦湯煮ゆでておいてそれへ椎茸を加えて鰹節かつぶし煮汁だしと味淋と醤油とで美味おいしく煮ます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「そのことでなんかいて見ましょうか、真っ黒になってて、鰹節かつぶしみたいな古い箏だけれど、それは結構なを出すの。」
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
これをかゆとしまた鰹節かつぶし煮出にだしてもちうれば大に裨益ひえきあればとて、即時そくじしもべせておくられたるなど、余は感泣かんきゅうくことあたわず、涕涙ているいしばしばうるおしたり。
母親のもとへとお歳暮のしるしにお弟子が持って来る砂糖袋や鰹節かつぶしなぞがそろそろとこへ並び出した。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しばらくすると、出し渋っていた酒が、そこへ運ばれて、鰹節かつぶしを掻く音などが台所から聞えて来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
塩、鰹節かつぶし太物ふともの、その他上田で小売する商品の中には、小諸から供給する荷物も少くないという。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
久さんのおかみは亭主の久さんに沢庵たくわんで早飯食わして、ぼくかなんぞの様に仕事に追い立て、あとでゆる/\鰹節かつぶしかいてうましるをこさえて、九時頃に起き出て来る親分に吸わせた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さもしい事を言うようだが、其日の弁当のさいは母の手製の鰹節かつぶしでんぶで、私も好きだが、ポチの大好きな物だったから、我慢して半分以上残したのが、チャンと弁当箱に入っている。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
なべへ水を入れたのも、鰹節かつぶしをかいたのも、汁の實を入れたのも、そして戸棚の味噌の小出しがめから、杓子しやもじで味噌出して、鍋の中に入れたのも、こと/″\くお夏のやつたことに間違ひもなく
家内を瞞したりお友達を鰹節かつぶしに使ったり、まあ、何たる大悪人でございましょう!
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「どうだかわかりゃしない、猫に鰹節かつぶしを預けたようなものだから」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
下の抽斗ひきだし鰹節かつぶしがあるから。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「しんせつにしてやらないからですよ。鰹節かつぶしをたくさんかけてやれば、おなかがすいているのなら、べないことはありません。」
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)
その他にも理由はいろいろあるが、あまり長くなるから略する事に致す。聞きたければ鰹節かつぶし一折ひとおりも持って習いにくるがいい、いつでも教えてやる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妻君「その塩梅あんばいでは餡の方にもい事がありましょうね」お登和「餡は最初昆布こぶ鰹節かつぶし煎汁にだしをお拵えなさい。それへお砂糖とお醤油で味をつけて葛を ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
食物くいものア江戸口で、おめえ塩の甘たっけえのを、江戸では斯う云ううめもん喰って居るからって、食物くいもなア大変八釜やかましい、鰹節かつぶしなどを山の様に掻いて、煮汁にしるを取って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
母親のもとへとお歳暮せいぼのしるしにお弟子でしが持つて来る砂糖袋さたうぶくろ鰹節かつぶしなぞがそろ/\とこならび出した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その横について荒町の通へ出ると、畳表、鰹節かつぶし、茶、雑貨などを商う店々の軒を並べたところに、可成大きな鍛冶屋かじやがある。高い暗い屋根の下で、古風なまげに結った老爺ろうや鉄槌てっついの音をさせている。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「近藤に虎徹は、猫に鰹節かつぶしのようなものだ」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ねこは、また、ねこで、だんだん横着おうちゃくになってきました。鰹節かつぶしをたくさんかけなければ、ただにおいをいだばかりでべようともいたしません。
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)
第二十九 鰹節かつぶしエキス これ我邦わがくにの特有物で鰹節かつぶしから製します。まず上等の鰹節をおよそ一合ほど削って一合の水を加えて壺へ入れて二時間湯煎ゆせんにします。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
猫の命日には、妻がきっと一切ひときれのさけと、鰹節かつぶしをかけた一杯の飯を墓の前に供える。今でも忘れた事がない。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
沸立にたたせて鰹節かつぶしを沢山入れて煮出にだしを取ってそれへ味淋を一合に醤油おしたじを一合ですからつまり三等分ですね。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そうして御米が湯をかしているうちに、煮出しを拵えるとか云って、しきりに鰹節かつぶしいた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さうして御米およねかしてゐるうちに、煑出にだしをこしらえるとかつて、しきりに鰹節かつぶしいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それを鰹節かつぶし煎汁だしとお酒と醤油とで二時間ほど気長に弱火とろびで煮て三分位の輪切りにし出します。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
わざわざ鰹節かつぶしを買い込んで、これでパリーの下宿に籠城ろうじょうするなんて大いばりだったが、パリーへ着くやいなや、たちまち豹変ひょうへんしたそうですねって笑うんだから始末がわるい。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから皮をいて短冊たんざくに切って鰹節かつぶし煮汁だしと醤油と味淋とで少しからい位に下煮をします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
寒月君の前に鰹節かつぶしが三本、裸のまま畳の上に行儀よく排列してあるのは奇観である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あるいは極く上等の塩鯖があればそれでも構いません。別に昆布出こぶだしの汁を美味おいしく拵えて塩とホンの少しの醤油したじとで味を付けてを少し加えます、この汁には鰹節かつぶしも味淋も砂糖も使いません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
自分が始めて彼のぜんを見たときその上には、生豆腐なまどうふ海苔のり鰹節かつぶし肉汁ソップっていた。彼はこれより以上はしを着ける事を許されなかったのである。自分はこれでは前途遼遠ぜんとりょうえんだと思った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしそれは惣菜で上等のお料理には鰹節かつぶしで味を出さなければなりません
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
朝になってまた顔を洗って、茶の間へ来ると、妻が鼠の噛った鰹節かつぶしを、ぜんの前へ出して、昨夜ゆうべのはこれですよと説明した。自分ははあなるほどと、一晩中無惨むざんにやられた鰹節を眺めていた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鰹節かつぶし 一四・二七 七五・六〇 五・一一 五・〇二
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
原口さんは洋行する時には大変な気込で、わざ/\鰹節かつぶしを買ひ込んで、是で巴理パリの下宿に籠城するなんて大威張だつたが、巴理へ着くや否や、たちまち豹変したさうですねつて笑ふんだから始末がわるい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)