“路傍(ろばう)” の例文
恋人の住む町と思へば、其(そ)の名を徒(いたづら)に路傍(ろばう)の他人に漏(もら)すのが、心の秘密を探られるやうで、唯(たゞ)わけもなく恐(おそろ)しくてならない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
湖畔(こはん)五里余(りあま)り、沿道(えんだう)十四里(り)の間(あひだ)、路傍(ろばう)の花(はな)を損(そこ)なはず、樹(き)の枝(えだ)を折(を)らず、霊地(れいち)に入(い)りました節(せつ)は、巻莨(まきたばこ)の吸殻(すいがら)は取(と)つて懐紙(くわいし)へ——マツチの燃(も)えさしは吹(ふ)き消(け)して
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
形容(けいよう)すれば水(みづ)の樣(やう)に淺(あさ)く淡(あは)いものであつた。彼(かれ)は今日(こんにち)迄(まで)路傍(ろばう)道上(だうじやう)に於(おい)て、何(なに)かの折(をり)に觸(ふ)れて、知(し)らない人(ひと)を相手(あひて)に、是程(これほど)の挨拶(あいさつ)をどの位(くらゐ)繰(く)り返(かへ)して來(き)たか分(わか)らなかつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
路傍(ろばう)の草(くさ)の上(うへ)に腰(こし)を掛(か)けて、握米飯(にぎりめし)を喫(きつ)し、それから又(また)テクリ出(だ)したが、却々(なか/\)暑(あつ)い。
人(ひと)は知(し)らじと自(みづか)ら晦(くら)ませども、優(やさ)しき良人(をつと)が心(こゝろ)ざし生憎(あやにく)纒(まつ)はる心地(こゝち)してお律(りつ)は路傍(ろばう)に立(たち)すくみしまゝ、行(ゆ)くまいか行(ゆ)くまいか、寧(いつそ)思(おも)ひ切(き)つて行(ゆ)くまいか、今日(けふ)までの罪(つみ)は今日(けふ)までの罪(つみ)
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
志村(しむら)も同(おな)じ心(こゝろ)、後(あと)になり先(さき)になり、二人(ふたり)で歩(ある)いて居(ゐ)ると、時々(とき/″\)は路傍(ろばう)に腰(こし)を下(お)ろして鉛筆(えんぴつ)の寫生(しやせい)を試(こゝろ)み、彼(かれ)が起(た)たずば我(われ)も起(た)たず、我(われ)筆(ふで)をやめずんば彼(かれ)も止(や)めないと云(い)ふ風(ふう)で、思(おも)はず時(とき)が經(た)ち
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
引者ながら彼方は路傍(ろばう)の柳に等(ひとし)く浮氣(うはき)の風の吹くまに/\靡(なび)く女に非れば打腹立(うちはらだち)て言懲(いひこら)さんとは思へども家主なればと堪(こら)へて程よく紛(まぎら)はし其まゝにして過すに庄兵衞情慾(じやうよく)いよ/\募(つの)りお光は我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
或る日例の如く二人にて散歩しつゝ討論しつゝありし時、余が余りに熱心になりて覚へず杖を振廻し/\したりしかば、透谷はそれを危ぶながりてクス/\笑ひながら路傍(ろばう)へ避け去りしことありき。
透谷全集を読む (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
今(いま)大塚(おほつか)の樹立(こだち)の方(はう)から颯(さつ)と光線(くわうせん)を射越(いこ)して、露(つゆ)が煌々(きら/\)する路傍(ろばう)の草(くさ)へ、小(ちひ)さな片足(かたあし)を入(い)れて、上(うへ)から下(お)りて來(く)る者(もの)の道(みち)を開(ひら)いて待構(まちかま)へると、前(まへ)とは違(ちが)ひ、歩(ほ)を緩(ゆる)う、のさ/\と顯(あら)はれたは
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)