謀反むほん)” の例文
一六九七年豕一疋神の肉を食いたいと謀反むほんを起し、蛇に咬まれた後あだうちがてら蛇を食いおわるを、側に在合いあわせた黒人が制し得なんだ。
「そんな手間暇てまひまは無駄事ときまッてらあ、訴えの筋が通ったり、ちゃんと、おきてが立つようなお上なら、天下に謀反むほんのおきる道理はねえ!」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遂に私の容貌を、謀反むほん人面にまで出世させました。しかし親愛なる緒生氏よ、これは私の罪ではなくて、私の病気の罪なのです。
御存与太話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
政宗も田舎役者ではあるが相当なもので、その後も謀反むほんの嫌疑をかけられたとき、いつも秀吉との腹芸を、相当にやっている。
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「近頃何んかかううるさい泥棒が無かつたか、妙な人寄せは無かつたか、謀反むほんの匂ひでもなかつたか——そんな事を念入に調べて貰つたんだ」
然しこゝに注意しなければならぬのは、是はたゞ私闘であつて、謀反むほんをして国の治者たる大掾を殺したのではない事である。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
謀反むほんでもするように、降りかかって行くあの悲壮な光景が、まざまざと部屋へやの中にすくんでいる私の想像に浮かべられた。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それを、謀反むほん人扱いにして、それで、おのれら、功名顔をする気か——公儀に聞えて、当家の恥辱にならんと思うのか——たわけっ、思慮なし。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
今度の御謀反むほんの沙汰ゆめ/\なき事を、増田石田がさゝへに、かくならせ給ふ事のあはれさ、是非なくおぼして、かくなん
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「さあ、相談があるならなさいな」おみのは五つめの杯をすすりながら云った、「まさか謀反むほんの計略でもないでしょ、あたしは雪を見ていますから」
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たといかれらがなにごとかひそかにはかることがあろうとも、それはきみに対する謀反むほんではないさ、連盟員一同がきみを
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
諸国には当時の厳禁なる百姓一揆いっきも起こりつつあった。しかし半蔵は、村の長老たちが考えるようにそれを単なる農民の謀反むほんとは見なせなかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
アイルランドの動乱のとき、彼は謀反むほんのかどで裁判をうけ、有罪を宣告され、そして死刑に処せられた。彼の運命は深くひとびとの同情心を動かした。
傷心 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
学者の生活に気のつかなかった自分は、Hさんのこの言葉で、急に兄の日常をおもい起した。彼らの書斎に立籠たてこもるのは、必ずしも家庭や社会に対する謀反むほんとも限らなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
謀反むほんでも起すとなったら、江戸中の中間どもはひとり残らず顎十郎の味方につきかねない。
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
足がかさなるまでも一所に踏掛けて、人形の首を、藁苞わらづとにさして、打交ぶっちがえた形に、両方からのぞいて、咽喉のどめて、同時に踏はずして、ぶらんこに釣下ろうという謀反むほんでしてなあ。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
題詞には、大津皇子被死之時、磐余池ツツミナミダ御作歌一首とある。即ち、大津皇子の謀反むほんあらわれ、朱鳥あかみとり元年十月三日訳語田舎おさだのいえで死を賜わった。その時詠まれた御歌である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あなたは御存知あるまいが、あなたが姉さんの亡骸なきがらを写生し初めた昨年の十一月というのが安禄山が謀反むほんを起した月で、天宝の年号は去年限り、今は安禄山の世の至徳元年だ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
義雄は心で怒つた——從兄弟いとこの製造主任が謀反むほん心があつて、自分の不始末から起つた困難にも拘らず、その困難と負財増加とに堪へかね、それを免れる爲めに、早く義雄等の協同から
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
左大臣は然々の無礼な言があったから謀反むほんの異心があるかも知れぬ、と上申した。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
田村麻呂たむらまろはそののち鈴鹿山すずかやまおに退治たいじしたり、藤原仲成ふじわらのなかなりというものの謀反むほんたいらげたり、いろいろの手柄てがらてて、日本一にほんいち将軍しょうぐんとあがめられましたが、五十四のとし病気びょうきくなりました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とう律、みん律、しん律などを参酌して立案し、同年八、九月の頃に至ってその草案は出来上ったが、当時の参議副島種臣そえじまたねおみ氏はこれを閲読して、草案「賊盗律」中に謀反むほん、大逆のくだりあるを発見して
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
冬十月戊辰つちのえたつ己巳つちのとみ、皇子大津謀反むほん発覚あらはれぬ。皇子大津を逮捕とらふ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
羅馬に謀反むほんをせしといふ、ことに甘んじてゐたりけり。
毎日子守りばっかりじゃあ、謀反むほんもおこしたかろう……
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「御奉行所でもひどく心配なすって、万一謀反むほんの企てでもあっては一大事だから、中へ入ってさぐるようにという申付けだ」
この苦杯くはいを主人につきつけた荒木村重の謀反むほんにたいして、彼が心の底から憤怒ふんぬを抱いていることはいうまでもないが、それをすらおさえて、じっと
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの、謀反むほんなのでございます。そうして妾もその一味へ……それで妾はこの山から、一生出られないのでございます。……父はこのように申しました。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
火事は大分燃広がつた、私闘は余国までの騒ぎになつたが、しかもまだ私闘である、謀反むほんをしたのでは無かつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そして、過ぎ去った謀反むほんの企てを心のうちで後悔しはじめる。人間はいかなる場合でも、自分をうらまないで、他人を怨む。そして、陰謀の発頭人であった西光さいこうを怨む。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
その玄宗皇帝の御代みよも終りに近い、天宝十四年に、安禄山あんろくさんという奴が謀反むほんを起したんだが、その翌年の正月に安禄山は僭号せんごうをして、六月、賊、かんる、みかど出奔しゅっぽんして馬嵬ばかいこうず。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あるとき奥州おうしゅうあらえびすで高丸たかまるというものが謀反むほんこしました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
たとひ秀次公謀反むほん思召立おぼしめしたち給ふ事有共
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「おまえ達が敵ではない。おまえ達まで村重と共に謀反むほんしたわけではあるまい。働け、働け。平常どおり生業に就け」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはまた暴れ出さずには居られない訳だ。しかしまだ私闘である、私闘の心が刻毒になつて来たのみである、謀反むほんをしようとは思つて居ないのである。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
御存じのお方もありましょうが、太閤記の浄瑠璃じょうるりで、主君を攻め殺して天下を取ろうとする明智光秀が、謀反むほんに反対する母親や妻女を『女子供の知る事に非ず』と叱り付けております。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
江戸の人心を撹乱かくらんし、謀反むほんを企てて徳川幕府を倒そうとしたことなどがあり、毒薬に対する幕府の神経は、火器に対する場合に劣らず、想像以上に尖鋭になって居た時でもあったのです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
いまにまた謀反むほんいくさをおこすかもしれませんといってうったえました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「洞院左膳も謀反むほんしました」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
不平浪人の謀反むほんは、いつも西国地方を温床にして育ちたがる。西国の経済力と、雄藩の背景と、そして海路や島々の地の利を持っているからである。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「親分、こりゃどこかに鈴を集めて謀反むほんでも企む奴があるにちげえねえ——」
「足利殿こそは、王政にご不服で、ひそかに謀反むほんをたくむ者と、近ごろ取り沙汰なすやからが一、二ではありませぬ」
「又浪人共を狩り集めて、謀反むほんくはだてる者がないとも申されません——」
野望の謀反むほんや悪行のすえ亡んだ主家はぜひもないが、その下に使われていた被官ひかんや家来の小領地は、どしどし、元の所有者へ返してやれと、尊氏はいう。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがてこれから書く以仁王の謀反むほん、その以仁王と源三位頼政が敗れて、三井寺から宇治川へ落ちてゆく足跡を見ておくため、わざと三井寺から大まわりをして
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここ数日は絶えましたが、ご謀反むほんと知れ渡ると、頻々ひんぴん、おさとしの使者が来られたようでした。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
恐れもなく書いたやつは、これは謀反むほんの詩ではないか。しかも流罪人の筆だ! 奇っ怪しごく
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……北斗ほくとの星、の地を照らし、その色赤し、おそらく謀反むほんのおこるきざしならんかと
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
使者鏖殺おうさつの変が、鎌倉へ知れるまでには、なお数日のまがありましょう。よしまた、ご謀反むほんおおやけになったところで、ここには精鋭四千騎が、殿を上にいただいて、火の玉の意気を
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以上は、これからのことですが、この回は、ちょうど、それの口火を切った以仁王もちひとおう(後白河法皇の御一子)と、源三位頼政の謀反むほんが、いよいよその行動に出たところに始まります。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)