まゐ)” の例文
「いや、確かに拝見しましたが、あれを叩くのは何だか気がとがめましてね、ちやうどお寺にでもまゐつたやうな変な音がするもんですから。」
元日ぐわんじつ神代かみよのことも思はるゝ」と守武もりたけ発句ほつくを見まして、演題えんだいを、七福神ふくじんまゐりとつけましたので御座ござります。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
寺院にまゐるのは一年に三度だけである。そのほかで庵室から出るのは、木をる時と水を汲む時とに限つてゐる。
「噂に聽いただけで、親分はまだ見たことは無いでせう、十手冥利みやうりに、たまにはおまゐりして置くものですよ」
私は全然まるで砂漠さばくの中にでも居る様な寂寞せきばくに堪へないでせう、さうすると又た良心は私のはなはだ薄弱であることを責めるでせう、墓所はかまゐりましても、教会へ参りましても
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ちくぜんの守を御覧ごらうじ候はば、何やうにも、御ちそう申し、ものまゐりをも致させ候やうにいたし候べく、たべ物などもきこし召し、身をがんじように、なされ給ふべく候
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あんなことつて、おまへさんまたおだましだよ。筑波つくばへおまゐりぢやありますまい。博奕ばくち元手もとでか、うでなければ、瓜井戸うりゐどだれさんか、意氣いき女郎衆ぢよらうしうかほにおいでなんだよ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鍛冶屋の亭主は巌乗がんじような五十男で、これまでつひぞ寺におまゐりしたことなどはない男であつたが、その坊主が来て門に立つて読経どきやうしてゐると、たちまち深い感動に心を動かされたらしく
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
地獄の釜の蓋のあく日がきて陰鬱な鐘の音が人を促すやうに鳴りはじめると伯母さんは気のすすまない私に花色の帷子かたびらをきせ、唐縮緬のしごきを胸高にしめさせておまゐりにつれてゆく。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
興義点頭うなづきていふ。誰にもあれ一人、二四だん家のたひらの助の殿のみたちまゐりてまうさんは、法師こそ不思議に生き侍れ。君今酒をあざらけ二五なますをつくらしめ給ふ。しばらくえんめて寺に詣でさせ給へ。
私はお前さんの親御の墓へまゐつて、のう、そもそもお前さんを引取つてから今日こんにちまでの来歴を在様陳ありようのべて、鴫沢はこれこれの事を為、かうかう思ひまする、けれども成行でかう云ふ始末になりましたのは
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
皆人みなひとまゐやしろかみはなし
自由の真髄 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大和西大さいだい寺の南に菅原神社といつて、天穂日命あめのほひのみこと野見宿禰のみのすくねと菅原道真とを一緒にまつつたやしろがある。そこにまゐつた事のある人は、社の直ぐ前に
せめて一の子分の八五郎さんに瀬踏せぶみをして貰ひ度いといふ話で、瀧野川の御稻荷樣から辨天樣におまゐりする積りで、ちよいと寄道をして、覗いて來ましたがね
於是これにおいてあをくなりておほいおそれ、ひとしくにえそなへて、びやうまゐつて、つみしやし、あいふ。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴嬢をお連れなすつての宮寺みやでらまゐり——貴嬢をおれ遊ばして奥様の御遊山ごゆさんは、私初めてお見受け申すので御座いますよ、是れはお嬢様、上野浅草はかこつけで、大洞様の御別荘が目的めあてに相違御座いません
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その多喜子の墓におまゐりに行くのなどはめづらしいと思つた。
草みち (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
りて、二度、香椎かしひまゐる。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
茶話記者がある時大和の久米寺くめでらまゐつたことがあつた。本堂の蔀格子しとみがうしにつかまつて内陣なかを覗き込むでゐると、後ろから
小娘のゆかりは、おまゐりでもするやうに、平次の前に可愛らしいを合せるのです。
あれから柴又しばまたへおまゐりしたが、河甚かはじんうなぎ……などと、ぜいはない。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ある時、この男が紀州の道成寺にまゐつた事があつた。その折拍子を踏み/\石段を数へてゐたが、ふと立停たちどまつて、不思議さうな顔をして道伴みちづれに言つた。
「子供が五人揃つて消えた?——そいつはまゐりだらう」
ある男が由緒ゆいちよのある古いお寺にまゐつた事があつた。そこには壁一面におびたゞしい金ぴかの額が懸つて、額のなかには各自てんでにぐつと気取つた人達の顔がいてあつた。