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莞爾
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かんじ
ふりがな文庫
“
莞爾
(
かんじ
)” の例文
と、辞気甚だ謙で、贈るところは頗る大きく、かつ、子息鍋丸にまで、柴田伝来の“
莞爾
(
かんじ
)
”の銘のある名刀を与えたりなどしている。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
名人が
莞爾
(
かんじ
)
と大きく笑いながら、手を振るようにして雇い人たちを追いやって、まず秘密の壁をつくっておくと、静かにあびせました。
右門捕物帖:37 血の降るへや
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
このとき紅子は、いつの間にやら、右手にしっかりとピストルを握りしめていたが、夫大尉のこの声をきくと、
莞爾
(
かんじ
)
とほほえんだ。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
男は
其処
(
そこ
)
へ来る
毎
(
ごと
)
に直立して、硝子扉
越
(
ごし
)
の私達を見上げ
莞爾
(
かんじ
)
としては
挙手
(
きょしゅ
)
の礼をしました。私達もだまって素直に礼を返してやりました。
病房にたわむ花
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
でっぷりと肥えし小主計は
一隅
(
いちぐう
)
より
莞爾
(
かんじ
)
と笑いぬ。「どうせ幕が明くとすぐ済んでしまう
演劇
(
しばい
)
じゃないか。
幕合
(
まくあい
)
の長いのもまた一興だよ」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
モスモロスの道化役者風にしたててバビロンの入口の廻転ドアの前に金モールのいかめしい英国人の門衛が
莞爾
(
かんじ
)
とした笑いをたたえている。
孟買挿話
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
といったのは兄にあたる武士で、
莞爾
(
かんじ
)
という言葉にうってつけの笑いを、その口
端
(
ばた
)
に漂わせたが、鈴江の話の後をつづけた。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
うまくランデブーすれば、
雄蝉
(
おすぜみ
)
は
莞爾
(
かんじ
)
として
死出
(
しで
)
の
旅路
(
たびじ
)
へと急ぎ、
憐
(
あわ
)
れにも木から落ちて
死骸
(
しがい
)
を地に
曝
(
さら
)
し、
蟻
(
あり
)
の
餌
(
え
)
となる。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
イエスは
莞爾
(
かんじ
)
として彼女の願いを容れ給い、女は家に帰ってみたところ娘はすでに
癒
(
いや
)
されていました(七の二八—三〇)。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
ト手をついて対したが、見上ぐる瞳に、
御頬
(
おんほお
)
のあたり、
幽
(
かすか
)
に、いまにも
莞爾
(
かんじ
)
と遊ばしそうで、まざまざとは拝めない。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ベルモントなきのちの闘牛を
如何
(
いかが
)
せんという
引止
(
ひきとめ
)
運動に過ぎないんだから、老闘牛士も内心
莞爾
(
かんじ
)
としたことだろう。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
イワンは
一寸
(
ちょっ
)
と顔を赤くした。そうして特に見知り越しの私たちの眼と眼とぶつかると、
莞爾
(
かんじ
)
として片手をあげた。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
おまけに、人をみる目も絶対なじまぬ野性。ついに折竹にも見当つかずと見えたところへ「あれかな」と、連れのケプナラを
莞爾
(
かんじ
)
となって、ふり向いた。
人外魔境:08 遊魂境
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
こう言って
莞爾
(
かんじ
)
として笑いました。兵馬にとってはこの一言が頼もしいような、
擽
(
くすぐ
)
ったいような感じがしました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
なぜなら、自然のみが、どこに行っても、
莞爾
(
かんじ
)
として、遊子を
懐
(
ふところ
)
にいれて
欺
(
あざむ
)
かないからだ。しかし、変らないというばかりでは、このことは説明されない。
彼等流浪す
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それだのに彼はなお
莞爾
(
かんじ
)
として、天の栄光をたたえているのだ、彼の上にはシメオンという教名が、イルミネーションの
如
(
ごと
)
く、空に
燦
(
さん
)
として私の眼を射る。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
吉田首相
莞爾
(
かんじ
)
と受けて「実際お逢いになってみると少しも怖くはないでしょう」とすこぶる上機嫌であった。
随筆銭形平次:18 平次読む人読まぬ人――三人の政治家――
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と泰軒、手を合わせて
件
(
くだん
)
の侍を拝むと、侍は頭巾の裏で
莞爾
(
かんじ
)
としているものとみえて、しきりにうなずきながら、早く乗り移れ! と手真似をする。そして!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
と家来がいえば、
莞爾
(
かんじ
)
とした瀬尾は今来た道を再び馬を飛ばした。息子のいるところに着くと、小太郎宗康は歩けぬ程足が腫れてしまったので道に伏していた。
現代語訳 平家物語:08 第八巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
思うにこの書成るの日、一本を父に送らば、おそらく
莞爾
(
かんじ
)
としてしばらくは手に巻を放たれざらん。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
まずこれでよし、と長兄は、思わず
莞爾
(
かんじ
)
と笑った。弟妹たちへの、よき戒しめにもなるであろう。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼
(
か
)
の
御広間
(
おひろま
)
の
敷居
(
しきい
)
の内外を争い、
御目付部屋
(
おめつけべや
)
の
御記録
(
ごきろく
)
に
思
(
おもい
)
を
焦
(
こが
)
し、
艴然
(
ふつぜん
)
として怒り
莞爾
(
かんじ
)
として笑いしその
有様
(
ありさま
)
を回想すれば、
正
(
まさ
)
にこれ
火打箱
(
ひうちばこ
)
の
隅
(
すみ
)
に
屈伸
(
くっしん
)
して一場の夢を見たるのみ。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
オーイッと
呼
(
よば
)
わって船頭さんは大きな口をあいた。晩成先生は
莞爾
(
かんじ
)
とした。今行くよーッと思わず返辞をしようとした。途端に隙間を
漏
(
も
)
って吹込んで来た冷たい風に
燈火
(
ともしび
)
はゆらめいた。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「あれもか、あれも……従容として……」直弼が相手の言葉を
遮
(
さえぎ
)
って、まるで憎悪に堪えぬもののように低く
呟
(
つぶや
)
いた、「
莞爾
(
かんじ
)
と笑い……辞世の詩を詠んでか、あの男もそんな……そのような」
城中の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
つねに
莞爾
(
かんじ
)
として左右に接せられた。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
と博士が
莞爾
(
かんじ
)
として説教壇に現れた。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
莞爾
(
かんじ
)
としてわたしは死ぬであろう
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
そして、
莞爾
(
かんじ
)
と
微笑
(
ほほえ
)
む。
楢の若葉
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
莞爾
(
かんじ
)
としていった。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
それを見届けると、大蘆原軍医は始めて
莞爾
(
かんじ
)
と笑って、
側
(
かたわ
)
らに
擦
(
す
)
りよってくる紅子の手をとって、入口の
扉
(
と
)
の方にむかって歩きだした。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
名人の眼光がらんらん
烱々
(
けいけい
)
として輝いたとみえましたが、あの秀麗きわまりない面に、
莞爾
(
かんじ
)
とした微笑がのると、ずばりいったもので——
右門捕物帖:13 足のある幽霊
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
麓の春の豪華を、
末濃
(
おそご
)
の裳にして福慈岳は厳かに、また
莞爾
(
かんじ
)
として
聳立
(
そびえた
)
っている。一たい伯母さんは幾つの性格を持っているのか知らん。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
すると、そこにまっ
赤
(
か
)
な顔をして、ゆうゆうと
酒
(
さけ
)
を飲んでいた
豪放
(
ごうほう
)
らしい
侍
(
さむらい
)
がある。一同をながめると、
莞爾
(
かんじ
)
として
迎
(
むか
)
えながら
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
作右衛門の話しを聞いてしまうとビショット氏は
莞爾
(
かんじ
)
と微笑したが、突然大きな手を出して紋太郎の手をグッと握った。それは暖い握手であった。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
酷
(
ひど
)
く研究をしております、」と哲学者は仰いで飲む。これが聞えたものらしい。若狭は読みながら
莞爾
(
かんじ
)
とした。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蠢々
(
しゅんしゅん
)
として、哀々として、
莞爾
(
かんじ
)
として、
突兀
(
とっこつ
)
として、二人三人五人の青年たちがむくりむくりと起き上って来た。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
兵馬がその巨船に向って、しきりに驚異の眼を
睜
(
みは
)
っているのを南条力は、
莞爾
(
かんじ
)
として傍から申しました
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
花房一郎は
莞爾
(
かんじ
)
として振り向きました。千種十次郎は、不用意にこの名探偵の友情を見せられたような気がして、不安のうちにも、何んとはなしに心強さを感じます。
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかし女史がその信頼するミス・タムスンの指、もしくは唇に軽く手を触れて
莞爾
(
かんじ
)
として立つのを見る時、彼女は「三重苦の聖女」ではなくて「三重喜の聖女」でありました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「なに、豚の煮込み?」老紳士は
莞爾
(
かんじ
)
と笑って、「待っていました。」と言う。けれども内心は閉口している。老紳士は歯をわるくしているので、豚の肉はてんで噛めないのである。
禁酒の心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
先年根本
莞爾
(
かんじ
)
君と私とがそれを採集して当時の東京帝室博物館天産部へその標本を採り入れた時は、今からズット約十年ほども前のことであったが、その時にはなお五十余の品種があった。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
双方死力を出して争った末、とうとう左馬允は氏郷を遣付けた。其時はじめて氏郷は
莞爾
(
かんじ
)
と笑って、好い奴だ、汝は此の
乃公
(
おれ
)
に
能
(
よ
)
う勝ったぞ、と褒美して、其の翌日知行米加増を出したという。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
との答えに、頼朝
莞爾
(
かんじ
)
として日記をひらいてみると
現代語訳 平家物語:09 第九巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
中将
莞爾
(
かんじ
)
として「ちっともとれない」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
兵馬は
莞爾
(
かんじ
)
として手を突いた。
柿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
仙次もさる者、それと見破ったもののごとく、がぜん敵意を示してきましたものでしたから、今ぞ
莞爾
(
かんじ
)
としてうち笑ったのは右門でした。
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
ふかく民心の中に根をもっている玄徳の信望に、曹操はふと
妬
(
ねた
)
みに似たものを覚えながら、面には
莞爾
(
かんじ
)
と笑みをたたえながら
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
訝
(
いぶか
)
しそうにわたくしの表情を、と見こう見していた母親は、やがて
莞爾
(
かんじ
)
と笑みかけたいのを、ぐいと唇の両角を引締め、それから言いました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
此処まで語るとその賊は
莞爾
(
かんじ
)
と微笑を浮かべたが「私は決して皇妃の名も貴夫人の名前も申しますまい。何故かと申せばその人達は、
此方
(
こっち
)
の云い値を ...
木乃伊の耳飾
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
頭取さんは甲板ゴルフが好きと見えて、午前も午後もぶっ通しの、相手を集めては
莞爾
(
かんじ
)
として杓子棒で玉を突いたり飛ばしたりしている。
下戸
(
げこ
)
でその方は話にならぬ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
“莞爾”の意味
《名詞》
莞爾(かんじ)
にっこりと笑う様子。
(出典:Wiktionary)
莞
漢検準1級
部首:⾋
10画
爾
漢検準1級
部首:⽘
14画
“莞爾”で始まる語句
莞爾々々
莞爾莞爾
莞爾〻〻