良心りょうしん)” の例文
「そんなに、おれいをいわれるとこまります。わたしは、良心りょうしんが、不正ふせいゆるさないために、たたかいましたばかりです。」と、若者わかものこたえました。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「じゃあ、おまえは良心りょうしんつみをしょわせたまま神様の前に出るつもりか」と先生がさけんだ。「あの男に懺悔ざんげさせろ」
そらおそろしくおもうのであったが、また剛情ごうじょう我慢がまんなるその良心りょうしんは、とはみずからはいまだかつて疼痛とうつうかんがえにだにもらぬのであった、しからば自分じぶんわるいのではいのであるとささやいて
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いろいろ療養りょうようをつくしたが、いかんともしようがなく、いささかの理由りゆうをもって親里おやざとへ帰した。元来がんらいは帰すべきでないものを帰したのであるから、もと悪人あくにんならぬ老人は長く良心りょうしん苦痛くつうにせめられた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こう、わたしは、おもったのです。そのときから、自分じぶんは、なにかわるいことをしているような、とりるたびに、良心りょうしんめるものがありました。
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それにかれは言われたことをわざとしない。かえってあべこべなことをしたがる。それはこの動物の性質せいしつだ。だからわたしはあれに対してはおこらない。さるは犬と同じ良心りょうしんを持たない。
獄舎ろうやつながれるなどうことは良心りょうしんにさえやましいところいならばすこしも恐怖おそるるにらぬこと、こんなことをおそれるのは精神病せいしんびょう相違そういなきこと、と、かれみずかおもうてここにいたらぬのでもいが
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれは、勇気ゆうき情熱じょうねつもなければ、なまなかの良心りょうしんは、ただみずからを不愉快ふゆかいにするばかりで、ようのないものだとさとりました。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
もしこんなことを女主人おんなあるじにでも嗅付かぎつけられたら、なに良心りょうしんとがめられることがあるとおもわれよう、そんなうたがいでもおこされたら大変たいへんと、かれはそうおもって無理むり毎晩まいばんふりをして、大鼾おおいびきをさえいている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そうおもうと、かれにとっては、まったくとつぜんのできごとだったけれど、そのままいきすぎてしまうことを、良心りょうしんゆるさなかったのでした。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
地主じぬしは、いきいきとして、あるきながら、自分じぶんのからだに、良心りょうしんがまだのこっていたのが、かぎりなくうれしかったのでした。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
だれしもそうとれば、良心りょうしんのあるかぎり、自分じぶん仕事しごとたいして、あわれみとずかしさをかんずるであろう。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとえそのひとがあなたでなくても、だれであっても、よわいものを、ああして乱暴者らんぼうものがいじめていましたら、わたしは、良心りょうしんから、いのちしてたたかったでしょう。
あほう鳥の鳴く日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、なかには、てもぬふりをしてゆく紳士しんしもありました。その紳士しんしは、良心りょうしんがあったから、こころのうちでは、こうした不幸ふこう人間にんげんをかわいそうだとおもわないではなかった。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
清吉せいきちは、おのれの欠点けってんと、良心りょうしんくるしめなければならぬ病所びょうしょづいたとき、これからすぐにもかなづちをたずさえて、さっきの場所ばしょへでかけていって、鉄棒てつぼうあたまちからいっぱい
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうして、少年しょうねんは、つねに、自分じぶん良心りょうしんをとがめながら、よわいので、ついみんなをわらわせたり、よろこばせたりしたいために、うそをつくくせあらためることができなかったのでした。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このとき、あにあにで、かわいそうなことをしたと後悔こうかいしたし、おとうとおとうとで、自分じぶんちからのたらぬばかりに、とりかえしのつかぬあやまちをおかしたと、良心りょうしんにせめられたのであります。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうして、あのおんながつぶれたのだろうな。こうしてうたっていたって、いくらにもなるまい。おれはあいにくうち財布さいふわすれてきた……。」と、そのおとこも、自分じぶん良心りょうしんをごまかしていってしまった。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)