わか)” の例文
不規則な池を人工的にこしらえて、その周囲にわかい松だの躑躅つつじだのを普通の約束通り配置した景色は平凡というよりむしろ卑俗であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「わしやまた、坊んちに嫁はん世話するより、自分に坊んちみたいなわかい子の嫁はんになつてみたいな、一日でよいさかい。……」
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それより木がわかくっても出ず、それより古くなっても出なくなります。しめじは木の稚い処へ出ますけれども松茸はそういう処へ出ません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
左は楊とわか松と雑木の緑と鬱とした青とで野趣そのままであるが、遊園地側の白い道路は直立した細い赤松の竝木が続いて
日本ライン (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
現に今日も私よりわかい芸能人に芸道上の注意を与える場合、必ずやそれはこの序、破、急の欠陥以外にはないから妙である。
一旦ひとたび一四四樹神こだまなどいふおそろしきものむ所となりたりしを、わか女子をんなご一四五矢武やたけにおはするぞ、一四六老が物見たる中のあはれなりし。
例えばわかくして山にまぎれ入った姉弟が、そのころの紋様もんようあるの衣を着て、ふと親の家に還ってきたようなものである。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ソウだ、昨夜の露、アの無声の露が、地を潤ほして、軟かにしてくれたので、わかい芽は自らを延ばし得たのだ
土民生活 (新字旧仮名) / 石川三四郎(著)
第九 食物しよくもつ衣服いふくごと分限ぶんげんによるは勿論もちろんなれど、肉食にくしよくあざらけくあたらしきしな野菜やさいわかやわらかなるしなえらぶべし。よく烹熟にたきして、五穀ごこくまじくらふをよしとすること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
次に國わかく、かべるあぶらの如くして水母くらげなすただよへる時に、葦牙あしかびのごとあがる物に因りて成りませる神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遲うましあしかびひこぢの神。次にあめ常立とこたちの神
小春日和こはるびよりの午後の陽ざしは、トシオの広い賢げな額や、健康らしく肉付きの引しまった頬に吸い寄りました。そしてこのわか冥想家めいそうかの脊を、やわらかくで温めました。
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
わかければ道行みちゆらじまひはせむ黄泉したべ使つかひひてとほらせ 〔巻五・九〇五〕 山上憶良
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「若菜集」を讀む前にませてゆがんだ或種の思想をいだいてればこそ他に無垢なる光明世界のあるのを見ないのであらう。輝けるわかき世——それが「若菜集」の世界である、嬥歌かゞひにはである。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
⦅妾はわかかつたのです、キリスト様は妾の息吹をお汚しなすつた
が、それは伊丹幸いたこう政巳まさみと云って、お珊がわかい時から可愛がった妹分。その女は、と探ってみると、現に丸官に呼ばれて、浪屋の表座敷に居ると云うから、その身代りが交ったというのでもないのに。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
妖精ようせいというものは姿すがた可愛かわいらしく、こころわかく、すこしくこちらで敵意てきいでもしめすと、みなこわがって何所いずこともれず姿すがたしてしまう。人間界にんげんかい妖精ようせい姿すがたものが、たいてい無邪気むじゃき小児しょうにかぎるのもそのせいじゃ。
わかいゑんどうの澱粉や緑金が
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わか雌松めまつの林があり、こんもりとした孟宗藪もうそうやぶがある。藪の外にはほのぼのとした薄くれないの木の花も咲いている。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
唐黍や立穗たちほわかぶさに照りつくるしろき旱雲ひでりぐもなれ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
唐黍や立穂たちほわかぶさに照りつくるしろき旱雲ひでりぐもなれ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
りき、綿津見わたつみしほわか
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
りき、綿津見わたつみしほわか
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
くにありき、綿津見のしほわか
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くにありき、綿津見のしほわか
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
わかく、浮脂うきあぶらなす
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)