ひた)” の例文
それすこぎて、ポカ/\するかぜが、髯面ひげつらころとなると、もうおもく、あたまがボーツとして、ひた気焔きえんあがらなくなつてしまふ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
こゝろつて、おもはず、ひたつたひざが、うつかり、そでおも掻巻かいまき友染いうぜんれると、白羽二重しろはぶたへ小浪さゞなみが、あをみづのやうにえりにかゝつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
といいながら、ついったから、何をるのかと思ったら、ツカツカと私の前へ来てひたと向合った。前髪があごに触れそうだ。ぷんにおいが鼻を衝く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あの水松いちゐしたで、長々なが/\よこになって、このほらめいたうへひたみゝけてゐい、あなるので、つちゆるんで、やはらいでゐるによって、めばすぐ足音あしあときこえう。
左右を見ずしてひたあゆみにしなれども、生憎あやにくの雨、あやにくの風、鼻緒をさへに踏切りて、せんなき門下もんした紙縷こよりる心地、き事さまざまにどうもへられぬ思ひの有しに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
男は肩をそばだててひたと彼に寄添へり。宮はなほ黙して歩めり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
何をかもつかむとすらむ、ただひたに天をぞせる。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひたみちにひすがりつゝ失聲ひごゑして
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
湯気ゆげなかに、ビール、正宗まさむねびんの、たなひたならんだのが、むら/\とえたり、えたりする。……横手よこて油障子あぶらしやうじに、御酒おんさけ蕎麦そば饂飩うどんまれた……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此處こゝ大黒屋だいこくやのとおもときより信如しんによものおそろしく、左右さゆうずしてひたあゆみにしなれども、生憎あやにくあめ、あやにくのかぜ鼻緒はなををさへに踏切ふみきりて、せんなき門下もんした紙縷こより心地こゝち
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
埓こえ、草をふみしだき、ひたに走りぬ。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さちは足りぬ、とひたむきに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
左右を見ずしてひたあゆみに爲しなれども、生憎あやにくの雨、あやにくの風、鼻緒をさへに踏切りて、詮なき門下に紙縷をる心地、憂き事さま/″\に何うも堪へられぬ思ひの有しに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)